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いちごハウス。(超短編小説#15)

ハウス一面にいちごが広がっている。
朝早く家を出ていちご狩りに来た。


腰をかがめたり、しゃがんだりしていちごを採る。


いちご狩りはどことなく恋愛に似ている。


狩り(英語でいうところのhunt)という
響き的にはちょっと乱暴に聞こえるけど
得る(gain)と考えれば
感覚的には変わらない。


見た目で美味しそうに見えても
実際はまだ酸っぱかったり甘すぎたりする。


最初はとってもとっても楽しい。
ある程度食べ進めると飽きがきてお腹いっぱいになる。


飽きを解消しようとして
練乳を付けて食べたり
持ち帰ってジャムにしようとする。

時間制限があったりして
どこか無意識に気にしてしまう
年齢と重なったりする。


季節によって旬があって
その季節がくるとどこか
昔の恋人を思い出してしまうようで
懐かしい気持ちにもなったりする。



ふとあたりを見回すと
子どもからお年寄りまで
みんながいちご夢中になっていた。

恋愛も子どもからお年寄りまでが
夢中になれるもので
誰にも邪魔されない自由なものだと思う。


まだちょっと青いいちごをもいでしまうように
傷つけてしまうこともあれば
傷ついてしまうこともある。

根本がまだ硬くてうまく食べれないように
納得できないときもある。

『ねえ、練乳のおかわりってできたっけ?』
『いやー、確かできなかったはず。
ってかもうないの?笑』


でも目の前のいちごを優しくもぎ取るように
目の前の恋愛を大切にすることが
きっと1番なんだろう。


『すいませーん、練乳のおかわりってできますか?』

赤くなった指先を眺めていると
優しい声が聞こえてきた。


今日も嬉しい気持ちが
胸のあたりに広がっていた。



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