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星の流れない空。(超短編小説#10)

ふと空を見上げたときに流れ星を観て
それ以来なんとなく夜は空を見上げて帰るのが習慣になった。
けれど、あれからまだ1度も流れ星を観れていない。


あのときはなに流星群だったっけ。


思わぬところで手に入れたものは
意外と尊いもののようだ。



高校生のころ、中学の同級生から女の子を紹介された。
紹介された女の子とは別の高校に通っていたけれど、毎日メールをしていた。
もう顔も名前もはっきり覚えてないけれど
嘘のように毎日メールをしていた。


自分の通っていた高校は海の近くにあって
よく放課後歩いて海岸まで行った。

その日も友だちと
ローファーを引きづる音を立てながら
海岸に向かった。


海に向かって
みんなで定番的に好きだーー!と叫んだ。

当時を振り返ってみて
彼女のことを特段好きとは思っていなかった。



『今日さ海行って、好きだーーー!って叫んできたんだ。笑』

『なんで好きだ!だったの?』

『なんとなくみんなで定番的に。』

もしかしたら、
彼女は自分のことを好きだったのかもしれない。

もし自分も好きだったら、その後のあれからとこれまでが変わっていたのかな。



当時は全く思わなかったそんなことを、
大人になって思うなんて。


なんて人の感情は勝手で、
そしてなんてこんなにも過去を美化することが
得意なんだろうと思う。



もし星を流してくれないこの空がなくなったら今は知らないその尊さを知ることができるのだろうか。

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