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[ラッキン・コーヒー]粉飾決済の董事長ら旧経営陣が罷免と聞いて、改めて個人的に振り返ってみた

僕が最後に上海へ出張に行ったのが去年の10月ぐらいだっただろうか。当時は上海の中山公園駅にオフィスを構えており、駅直結の地下街には飲食店が並ぶ。その中の1つにもラッキン・コーヒーがあった。

注文にはアプリが必須で、メニューを見るのも、注文も、支払いもアプリで行う。アプリを持っていない僕は、同僚に代わりに注文してもらった。無料でもらった半額クーポンがたくさんあるらしい。アプリの画面はこんな感じです。

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僕と同僚しかお店にはいないのに、店員さんは忙しそうだ。外卖(ワイマイ)といういわゆるデリバリー用で購入された人達のドリンクが大量に作られて並んでいく。それを配達員が忙しげに入れ替わり取りに来ては運んでいた。

当時中国では、あらゆるところでこの店舗を見かけたので、肌感覚的にもスタバよりも勢いがあると感じていた。ただ半額券の無料プレゼントなどを定期的にやっているようで、どうやって儲けているのかは不思議に感じたのを覚えている。

その後に、このラッキンコーヒーの粉飾決算を聞き、さらには最近会長・取締役の解任のニュースを知った。知的欲求に身を任せて改めてこれを機にラッキンコーヒーのことを調べてみたので、参考になる方もいるかなと思い、ニュース部分も交えながら記載してみたいと思います。

ラッキンコーヒーの爆速上場と爆速上場廃止

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ラッキンコーヒーは約3年前の2017年11月に会社が創立された。2018年1月北京から最初の店舗の営業を開始した。

そして会社設立から約1年半後の2019年5月にナスダック上場を果たし、約600億円の資金を調達。

さらに粉飾決算を理由に、上場から約1年後の2020年6月末に株式売買が停止され、まもなく上場廃止の手続きがナスダック側によって進められることになります。

たった3年で、会社設立から、株式上場、そして上場廃止という偉業?を成し遂げたラッキンコーヒー。どんな会社で、どんな店舗だったのだろうか。

【中国流爆速展開?】1日あたり平均12店舗の新規開店

ラッキンコーヒーの凄かったところは、コーヒーの味とかサービス内容よりも、まずはこの店舗の展開スピードに尽きます。

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2018年1月に1店舗目がオープンしてから、2019年12月末には4507店舗展開。毎日12店舗以上を新規オープンしているペースです。

どれくらいの多さかわかりずらいかと思いますが、日本に今あるコーヒーチェーン店1位〜5位までの合計店舗数が約4500店舗ありますが、それをたった2年で全て開店した感じです。(1位スタバ約1530店、2位ドトール約1100店、3位コメダ珈琲約858店、4位タリーズ約730店、5位プロント約300店)

ちなみに現在世界のコーヒーチェーン王者のスターバックスは現在3万2000店あります。そのスタバが2018年〜2019年の2年間が世界に新たにオープンした店舗数が3217店舗で、ラッキンコーヒーはそれを約1300店舗上回っています。

さらにラッキンは2020年5月時点で約7000店舗まで進んでおり、2021年末までには1万店舗を目指していました。この勢いで中国から世界展開をしていれば、スターバックスを簡単に追い抜くのでは?と思った方も多いかと思います。

実際に僕の周りでもラッキンコーヒーを知ってますかとアイスブレイク的によく話題が出ていて感覚的にもすごい会社がまた現れたなと感じていました

他にもある、爆速展開する中国企業

中国のこの爆速展開は、ラッキンコーヒーに限らず他の業態でも見られます。MINISO(名創)という、”UNIQLO”と”ダイソー”と”無印良品”を足して割ったような中国の雑貨店舗があるのですが、ここは2013年9月に創業し、それから約7年で3600店舗以上展開しています。徹底的に日本ブランドイメージを出した中国企業です。

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世界での店舗数が、UNIQLOは約2200店、無印良品は約1000店で、既に本家2社の合計を超えています。なお、ダイソーが約5500店です。

このMINISOもかなりアグレッシブで、2022年に「100カ国に出店、1000億元の売上高、1万店舗」を掲げています。ラッキンは中国国内で爆速展開してましたが、MINISOは海外にも積極的に展開している点が異なります。(ちなみに日本では東京に3店舗だけ出店)

個人的にMINISOのイヤフォンが大好きで、中国出張がある度にいつも買ってます。1,000円ぐらいでかなりお得にも関わらずクオリティが高いです。台湾にもMINISOはあるのですが、3,000円ぐらいと高いです。僕がYouTubeで撮影してる時にいつもつけているイヤフォンで、首にかけていても違和感がなく、仕事時もそのまま首にかけてます。

アジアでは、MINISOのさらにパクリ店舗が出てくるぐらいの影響力です。日本もアメリカを真似てきた事を考えると僕は勝てば官軍が資本主義だと思っています。もちろん行き過ぎたものは違うのですが...

ラッキンの爆速展開を支えた経営手法

ラッキンは他店舗展開で使われるフランチャイズ形式ではなく、自分たちで土地を見つけ、店舗をつくり、人材を雇い運営する直営方式を採用。これはスターバックスと同じ。自分たちのペースで店舗展開ができるわけだ。ただし家賃代や人件費等の販管費は店舗数に応じて増えていくため、リスクの大きい手法でもある。

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さらに店舗の95%がピックアップもしくはデリバリーだけ。スタバのような座るスペースのあるリラックスタイプは5%満たない。そのため、小さいスペースからでも家賃や開店費用も抑えられ、気軽に店舗を始められる。

そしてお店のスタッフは3人で済む。アプリで注文、会計、決済ができるため、そこに人材をあてなくてよい。注文を確認する人、ドリンク作る人、作ったドリンクを仕分ける人。人件費を最小限に抑えている。

これらの手法は、手元に資金さえあれば、爆速で店舗展開するためにかなり理にかなっていると思う。そしてそれを実際に実行できる能力は、さすが中国企業だなと関心する。

ちなみにラッキンコーヒーがあったからこそ、スタバもデリバリーを始めたのだ。あくまでそういう話で公式で言ってるかは確認できてないけど。そういうラッキンの功績?もある

売上の半分以上を水増しする粉飾決算

ラッキンで公開されている財務諸表の情報は、創業から間もないこともあり非常に少ない。さらに2019年度の財務諸表も粉飾決算の影響で、まだ公開されていない。

どれくらいの粉飾決算だったかというと、362億円の売上水増しがあったとようです。2019年Q3時点での売上高は約464億円となっており、2019年通年の売上が仮に650億円だったと見積もると、実に売上の半分以上を水増ししたようです。『半額クーポンが多かったから、クーポン関係なくすれば、本来このぐらいだよね』っていうノリだったのでしょうか.....

この報道を受けて、ナスダックで上場していたラッキンの株価は約75%も下落。多くの投資家が損失を受けたことで、今後は損害賠償請求を受ける可能性があるようです。その後、臨時株主総会で会長と取締役3名が解任されたとうニュースに繋がったわけです。

今後は何故ここまでの粉飾決算をしたのか、その背景等が明るみになってくるかと思います。今後も注意深くウォッチしていきたいと思います。

上海にも住んで、現在CAPSULEの取締役もやっている自分だからこその“ただの見解”でしかない話も記載しておく。この爆速での店舗数拡大には、キャッシュが無ければ不可能なわけです。確かに中国には、お金が余ってるレベルの富裕層が多くいるわけですが、ここまでの拡大は本当に“普通”ではできない事だと感じています。上場ありきのストーリーなのはもちろんですし、会長や取締役の解任レベルで留まっているわけで、もはや粉飾までもストーリーに入っていたのではと個人的には疑いたくなります。中国の投資家達は、上場後に売り逃げてアメリカ人が株を持った可能性さえもあります。ファーウェイのような中国企業も民間企業ではありますが、言うまでもなく国の血が含まれています。もちろんこういう見方をする時に、中国という国なのか非常に力のある個人なのか断定できないですし、事実は不明ですが。

そんな事を察しながらまた今日も僕はコーヒーを飲んでおります。

CAPSULEサービス

最近はCAPSULEのHP以外にサービスサイトを制作しております。上記のこのサイト内ではPRチームや各部門のメンバーが記事を発信しているので、ぜひ読んでみてください。
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亀貝康明
台湾在住。
CAPSULE Inc.取締役。
主に中華圏やアジアを中心とした海外生活や海外ビジネスに関して発信中
プライベートでは【台湾が好きでもないのに移住。好きになれるか真剣に台湾と向き合ってみた】をコンセプトにYouTubeチャンネルも運営中

Twitter→https://twitter.com/kamegai_capsule



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