行動経済学の逆襲 要約⑧

 今回は、お金のラベル「予算」に関するお話です。
 第9章「お金にラベルはつけられない?」の要約になります。

【全体の要約】
経済学には、「お金は代替可能である」という大原則がある。
しかし、私たちは、「予算」を決めることでお金の使い道を決めてしまうことが多い。それは決して間違いではないが、時に「予算」に縛られておかしな判断をしているケースも見受けられる。

1.予算という考え方

 私たちは、よく予算を設定します。家計では、「食費用のお金」・「家賃用のお金」・「娯楽用のお金」のように、それぞれその範囲内で支出するように計算することはよくあることです。
 しかし、これは「お金は代替可能である」という経済学の大原則に反しています。経済学では、お金はどんなものにでも自由に使えるものなのです。

2.「心の予算」に関する実験

 次のような実験があります。 

2つのグループに、週末にある舞台のチケットを買う気持ちがあるか聞きました。
 A:その週にバスケ観戦に50ドル使っているという設定
 B:その週に駐車違反の罰金で50ドル使っているという設定

 結果は、Aグループに所属した人は「チケットを買う」と答えた人数が少なかったそうです。どちらも同じ50ドルを払ったという事実にもかかわらず、その使い道によって結果に違いがみられました。
 この結果から言えることは、私たちは心の中で予算を設定していて、予算内でやりくりしようとしているということです。

 この例だと、Aグループでは「娯楽費」から50ドル使っていると考えてしまうため、もう払えないと判断した人が多かった、ということです。
 一方、Bグループでは「娯楽費」に手を付けていないため、チケットを買う人が多かったことになります。

3. 予算を立てるのは悪いこと?

 これまでの議論から、予算にしばられるのは賢くないことなのか、ということになってしまいそうですが、そうではありません。家計にしろ企業にしろ、予算を設定することで、やりくりがうまくいくことの方が多いといえます。
 しかし、予算に縛られすぎることでおかしな意思決定がみられる、ということがこの章で言っていることとなります。

以上が第9章の要約になります。

次回予告
次回は、第2部メンタルアカウンティングの最後の章、第10章「勝っているときの心理、負けているときの心理」です。


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