語りたい言葉が風船のように逃げて行く
語りたいことが、君に伝えたいことが、伸ばした手をするりと交わして果てしない空の向こうへ逃げていく。
言葉の一端でも掴むことができたなら、きっと全ての輪郭を捉えて饒舌に語ることができるだろう。だけどその紐の一端がどうしても掴めない。どれだけ必死に走っても、どれだけ高くジャンプをしても、あと1mmのところで紐は嘲笑うように指先をかわして行く。
決して捉えることのできない、語りたい言葉をひたすら追っている。
ふとしたきっかけで風船の紐を掴んだと思ってたぐり寄せてみると、それはどこかで聞いた他人の言葉だったりしてまた途方にくれる。
自分が本当に言いたいこと、なんて実は存在しないかもしれない。私が毎日こんなにも必死になって追っているのは自分が作り上げた、ただの幻で、本当の思いは実は足元に落ちているのかもしれない。ぷかぷかと頭上に浮かぶ風船を仮に抱き寄せることができたとしても、風船は所詮空気の塊でしかない。無だ。でも、それこそが本当の私自身なんだろう。そこに真っ向に向き合う度胸もないけれど。
今夜も何も語り得ないまま、明け方にやっとの事で眠りに落ちる。夢の中で掴めるものは一瞬だけ立ち現れて、すぐに消える。
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