かまぼこアートセンター

「かまぼこアートセンター」は、《かまぼこ型倉庫プロジェクト》の制作者である現代美術作家…

かまぼこアートセンター

「かまぼこアートセンター」は、《かまぼこ型倉庫プロジェクト》の制作者である現代美術作家・小沢剛と、公募で選出さ れた4組5名のアーティストが松代エリアを中心に滞在・活動しながら、地域に根ざした作品の制作と発表を目指します。

最近の記事

かまぼこ型倉庫のルーツをたどる

ほくほく線編 陽一が最近、夏の家族旅行計画をする密かなる目的は、かつて自分が工事に関わったトンネル付近を車で旅行をすることだ。仕事柄転勤も多くいままで住んだことがある場所に行って、「ここに飯場があった」だの「ここの酒屋でツケで買ったな」などと記憶をたぐるのが面白いのだが、女房や子どもにすこぶる評判が悪い。それもそのはず、多くのトンネル付近は、どこも山の中で、いわゆるレジャーとしての楽しみは薄いからだ。そして今年、車が向かった先は、ほくほく線工事のため二年間を過ごした、鍋立山ト

    • かまぼこ型倉庫のルーツをたどる

      七日まつり編洋子は大人になる前に、こんな町出ていってやると、思っていた。それは、自分だけではなく、中学の同級生の多くもそう考えていると思っていた。全面中止となっている北越北線の工事再開のメドがたっていないということも、そんなムードを作っていた要因だったかもしれない。  中学校に入って初めての夏休みは、父ちゃんの姿をあまり目にしなかった。それというのも、夏休みの終わり頃にある七日(しちんち)まつりのために、山車の機関車作りに没頭していたからだ。自分の仕事もそっちのけで、夜も遅

      • かまぼこ型倉庫のルーツをたどる

        雪中燧道編 三郎は、四本目のマッチで、ようやく提灯のロウソクに火をつけることができた。湿気と手のかじかみでなかなかうまくつけることができなかったのだ。  ここは犬伏と田沢を結ぶ雪中燧道の入り口だ。このころ、暗いトンネル内には、明かりの電灯がまだ入っていない。代わりに、両方の入り口に提灯とマッチが置いてある。  三郎は伊沢小学校に通う六年生。今日は、親の言いつけで、となり集落までお使いをしてきたところだ。  トンネルができるまで、多くの人が川沿いの道を歩き雪崩に遭い、川に

        • かまぼこ型倉庫のルーツをたどる

          最初の一歩 朝日の旗がはためく黒塗りの公用車が松代に止まったのは、満州事変があった昭和六年のことであった。  食堂ののれんをくぐったお腹をすかせた新聞記者は、浦川原へ取材の途中であった。彼こそ、熊沢という松代のトンネルと鉄道の長い歴史を始まらせるカギを運んできた男である。名物の蕎麦に舌鼓をうつ熊沢の隣にたまたまいたのは、松代で自動車を使った運送業を営んでいた柳常次と、市川庄一郎であった。 「十日町方面から車で来たんですがね、いや、道が悪いの悪くないのって…浦川原はまだかか

        かまぼこ型倉庫のルーツをたどる

          かまぼこ型倉庫再発見

          かまぼこ型倉庫は、完璧な形だ。 いっさいの無駄がなく、誰にも媚びてはいない。 だから美しい。 松代町を訪れたのは、雪が積もり始めた昨年の十二月頃だ。温泉に向かうタクシーの窓から見える木々や住宅や田や山々は、雪衣によって、すべての形は優しく緩やかで清々しかった。やがて見慣れぬ形のものが至る所に見えることに気がつき、気になってきた。いや、かなり気になった。うまくは言えないのだが、未知のモノを見たときに感じる違和感と、新鮮な好奇心が同時に沸いたのだ。それが、かまぼこ型倉庫と初めて

          かまぼこ型倉庫再発見