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思い出したのは何故か、◯◯の夜空



"音楽の街"と聞いていた国は、思った程中世の面影は少なく、思ったよりずっと、都会的でした。

去年の夏、会社に特に無理を言わずに取った10日間ほどの休み。

ベルギー在住、仲良しの韓国人の友達と、弾丸でポーランド、チェコ、オーストリア、ハンガリーを周りました。

ポーランド、チェコと1泊ずつした後、ウィーンに着いた夜。タクシーで駅からホテルへ向かう途中、窓から街の景色を眺めながら、前の2ヶ国とは違うアーバンさ、経済が発展した国が持つ洗練された雰囲気を感じました。

「ここだったら、住んでもいいかも」と感じた、唯一の国であるかもしれません。

私にとって、旅と言えばヨーロッパ。

ワインが美味しいフランスと、ビールが美味しいベルギー。ガレットが美味しいフランスと、ムール貝が美味しいベルギー。

素晴らしい食とお酒、そしてそれを取り囲む美しくて繊細な街並みや音楽があれば、何も言う事は無い筈。

でもそんなベルギーもフランスも、定住する事を考えると、「どこか今一歩」の様な気がしてしまいます。

東ヨーロッパの後にパリに立ち寄り、フランス人の友人に連れられて、観光客は容易には行かないような橋から夜のエッフェル塔を眺めた時。フランス人の友人が「私は偶にエッフェル塔を見に来るのが好き。頑張ろうと思える。」と言っているのを聞いて、何となく、
「あぁ私はフランス人じゃなくて、フランスに来た観光客なんだ。」と感じてなりませんでした。

世界のどこの産地よりフランス産のワインを愛したとしても、私がエッフェル塔に感じるのはパリへの憧ればっかりで、「頑張ろう。」というような、仲間に対して抱く様な思いは、絶対に生まれてこないのです。

あの茶色い建物にいくら親近感を感じたくても、私が見慣れているのは、経済成長のシンボルと言わんばかりの赤と白のタワーで、もっと言えば、私の人生と共にあったのは、海の方に聳え立つ、たかだか234mの幾分シュッとしたタワーなのです。

「凄く素敵な場所だけれど、でもきっとここには住めない。」

旅とは、憧れだけでは乗り越えられない壁もある事を、身体で実感する作業でもあります。

通じない言語、完食できない程多い肉料理、歩く人々の早さ、ケバケバしい紫色のリップ、美しいけれど年季の入った家々。

滞在中、パリの人々の生活が垣間見える度に、そこで自分が暮らしてみた時の「リアルな生活」が思い起こされて、パリに住むのは憧れのままにしておこうという思いが、パリを好きな気持ちと同時進行で、絶対に交わる事の無い平行線を描きます。

ワインが好きでもパリ市民では無いし、明太子が好きでなくても福岡市民。

どこかに「定住する」という事は、単純な好き嫌いという枠組みを超えて、その国での日々の生活がスッと心に入ってくるような感覚がないと、ダメな気がします。

ウィーンの夜景は、私に少し安心感をもたらしました。 
ザ・観光地な場所から離れると目につくのは、ヨーロッパらしい歴史的な建造物より、モダンな建物の数々。

高さもそんなに高くないシンプルな外装の建物は、福岡市民の私からすると、パリや東京ほど肩肘貼っていなくて、でも居心地が良くて満たされるような、そんな感覚を与えてくれます。


エッフェル塔とドナウタワー。
東京タワーと福岡タワー。

昨夜、慌ただしい世界情勢の中でカナダ留学を決めた仲間の激励会をしながら、思い出したのは何故か、タクシーからボーッと眺めたウィーンの夜空でした。

オーストリアは、私が学んでいる「オーガニック」の分野も進んでいて、実は自然派ワインも絶品です。
先月はご縁あって、福岡でクラシックコンサートにも行きました。

そう言えば、昨年ヨーロッパから帰った時、しきりに「ウィーンにもう一回行きたい」と言っていたのを思い出しました。

確か四角大輔さんが、コロナが落ち着いた頃にどこに行きたいのか、考えてみると面白いというような事を言っていた気がします。

私の「次に旅するリスト」のNo.2は、ウィーンになりました。

No.1は、私の旅の原点である、アジアのあの国。
その国への思いが纏まったら、またnoteに旅の記事を書きに来ようと思います。

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