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「福祉」と「かっこいい」の交差点
今年の10月に結婚式を挙げる。
ドレスもタキシードもまだ決まってないけど、新郎の蝶ネクタイだけは決めてある。
岩手県の企業「ヘラルボニー」の蝶ネクタイだ。
ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、福祉を傘に様々なモノ・コト・バショを企画する企業だ。知的障害のあるお兄さんを持つ双子の松田崇弥さん・文登さんが経営している。
知的障害のある方の描くアート作品のライセンスビジネスが中心で、
ハンカチやネクタイ等を提供するアパレルブランド「HERALBONY」、
再開発中の渋谷や丸の内に立ち並ぶ建設現場の「仮囲い」を、期間限定の「ミュージアム」と捉え直す「全日本仮囲いアートミュージアム」
等の事業を展開している。
◇◇◇
はじめて存在を知ったのは、あかしゆかさんの書いた記事だった。
作者が障害のある人たちであることを押し出さずに勝負していること、意思を持って非営利団体ではなく株式会社という形態を取っていること、そして何よりプロダクトのデザインそのものが、抜群にかっこよくて、一瞬でファンになった。
その後、彼らの設立1周年記念パーティーに参加した。
渋谷のTRUNK HOTELで開催されたパーティーには、インターネットで見たことある有名人や、女優の東ちづるさんも来ていて、参加者も空間もとにかくおしゃれだった。
販売していたネクタイやハンカチについて、スタッフの方が、
「これ全部、プリントじゃなくて織りなんです!」
「写真で見るより生のほうが色が綺麗じゃないですか?」
「一見派手なんですけど、意外と合わせやすいんですよ」
と、生き生きと説明してくれたのも印象的だった。
◇◇◇
ヘラルボニーを経営する松田兄弟と同じく、私も知的障害のある姉を持つきょうだいであり、ずっと福祉の世界には関心があった。
それでも、いままで福祉とは全く関係ない仕事をしてきた。
子供のころは、「養護学校の先生になりたい」「福祉施設で働きたい」と言っていた時期もあったが、母親は「障害のある姉の存在が、妹の将来の選択肢を固定してしまうのでは」と恐れ、あまり喜ばず、「お姉ちゃんのことに捉われないで決めてね」と念押しされた。
高校の現代社会の授業で、身近な人にライフインタビューをするというレポート課題があり、姉の子育てについて母に聞くことにした。返却されたレポートには、教員からこんなコメントが入っていた。
お姉さんの生きやすい社会になるように、あなたができることをこれから考えていってください
「何で私が考えないといけないんだ」と思った。第三者から役割を押し付けられるのが嫌だった。
福祉業界の厳しさも理由の一つだ。介護福祉士やソーシャルワーカーの平均給与は、日本全体の平均を大きく下回る。厳しい環境の中でも、自己犠牲の精神を持ち、やりがいを重視できる、覚悟のある人だけが関われる世界のように見えた。障害者に向けられる差別に、正面から向き合うのも怖かった。
◇◇◇
ヘラルボニーが福祉の世界でやってのけている仕事は、そんな葛藤を全部超越して、心の底から「おもしろそう」で「かっこいい」と思った。
彼らとの出会いをきっかけに、久遠チョコレートやアトリエインカーブなど、福祉の世界で素敵な仕事をしている人たちを大勢知って、紆余曲折あって、福祉業界に転職することにした。
この会社と出会って、誰かの目を気にして誰かにずっと言い訳をしていた自分をやめることができた。
「福祉」と「かっこいい」を繋いでくれたヘラルボニーを応援しています。
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