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「ちょっといい毎日」をつくる誠実な人。/ nicca 西岡 政人さん【前編】

niccaという店名は「日課」から

 niccaニッカ西岡 政人ニシオカ マサトです。カクイチビルの2Fにある美容室をやってます。店名のniccaは「日課」から。毎日鏡の前で髪をスタイリングするというのも日課のひとつ。髪型がいい感じだとちょっと気分上がったりするじゃないですか。そういう気持ちも込めて。

―――今のお店を持つまでにはどんなお仕事を?

ずっと美容師ですね。それ以外の仕事はやったことない。東京の専門学校に行って卒業して、そのまま東京で就職して2つのお店で働きました。最初は南青山で6年ぐらい、2店目は下北沢で3年とか4年ぐらいだったかな。で、自分でお店を構えるのはここが初めて。

なんとなく美容師になったけど、思い返してみると実家の目の前が床屋さんだったんですよね。中学生ぐらいまでかな、そこで自分も髪を切ってもらってた。床屋のおじさんって、お菓子くれたり優しくしてくれたり面白い話をしてくれたりする身近な大人って感じで。そこになにかしらの憧れがあったのかなという気がしてます。

「1人でやろう」っていうのは決めてたんです

―――どうしてここにお店を構えることにしたんですか?

「宇都宮でやりたい!」という感じで決めたわけでもなくて、並行して東京でも物件探してた。けど、家賃とかいろんな条件を考えると東京のど真ん中でなんて到底できない。そうなると都心部から外れて駅からもちょっと離れた場所か、宇都宮のこのあたりの市街地でやるか、って天秤にかけて考えたとき宇都宮の方が条件に合ったというところでしたね。「どこで」は決めてなかったけど「1人でやろう」っていうのは決めてたんです。そうなると抱えられるお客さんの数にも限りがあるから、家賃の限界もだいたい決まってきちゃうんで、という事情もあって。もし東京で働いてた店で売上が突き抜けたりしてたら、後輩を引き連れて独立するとか一等地でお店を出すとかみたいな選択肢もあったと思うんですよね。でも、そうはなれなかったっていう意味では「挫折」みたいなのもちょっとあるかもしれない。

―――さっき「1人でやろうって決めてた」って言ってましたが?

良くも悪くも最初に勤めたお店にすごく影響を受けてるというか。美容業界内での技術の高さは間違いなかったし、そういう中に身を置いて先輩方に教えてもらえたというのは自分の美容師としての技術のベースになってるし、すごく良い経験をさせてもらったと思ってます。ただ僕が入った頃は、まぁ、そういう時代だったのかもしれないですけど、めちゃめちゃ厳しかった。朝早くて夜遅くて休みもあんまりなくてお給料も少なくて、やめちゃう人も多かった。「カリスマ美容師」とかってブームがあったような時代だったから上下関係とかも厳しくて、ある種の宗教チックな雰囲気があるのも正直ちょっと苦手だった。

niccaのお席は1つのみ
落ち着いたムードのプライベートサロン

あとね、僕は自分でやんなきゃ気が済まないんですよね、きっと。お客さんが指名してくれたんだから、シャンプーでもドライヤーでも自分で担当しなきゃって。大きいお店で働くと専属アシスタントがついてて、常にお客さんも2〜3人いて、シャンプーを任せたり、カラーをお願いしたりってくるくる動いてやってたんだけど、それが自分には合わなかったのかもしれない。すごく面倒くさくて頑固な奴なんだと思います、笑。
学生時代はずっとサッカー部だったしもともと大人数でわいわいやってるのが好きなタイプだったんですけど、1人の方がいいなって思うようになったのはたぶんそういう経験があったから。うまく言えないんだけど、その時期の経験があって確実にその後の自分が変わった感はある。

―――途中で辞めたくならなかったんですか?

お店は辞めたいってずっと思ってましたよ、笑。でも不思議なことに美容師を辞めようと思ったことはないんですよね。っていうよりそういう考えにならなかった、考えられなかっただけかもしれないですね。なんかもう、自分にはこれしかないって思っちゃってたっていうか。「やめる決断もできなかった」という方が正しいかもしれない。それで結果的に残っちゃってた。

ここでやってる感じがすぐイメージできたカクイチビル

―――この場所にはどうやって出会ったんですか?

東京から物件探しに来てて、いくつか見せてもらったんだけどどこもしっくりきてなくて。で、帰りに「ここのコーヒーおいしいんだよ」って入ったのが中戸祭のムーンドッグさんだった。そこで本当にたまたま「こんなビルがあるんだけど」って鈴木さんからタイミングよく聞けた、という偶然。「このままなら持ち主さんは取り壊そうと思ってるそうなんだけど、どうにか残したいすごくいいビルなんだ」って聞いて、それで見せてもらって。そのときはまだ「大村医院」という病院だった頃の姿で、当時のものが色々置いてありましたね。でもなんとなくすぐイメージできたんですよ、ここでやってる感じが。建物としてもなんだか面白くて雰囲気があっていいなと思った。最初に見れたんで「じゃあ、いちばん広そうだからここで」ってこの区画を選んだ。

うっかり通り過ぎそうな階段の踊り場
右手のドアを開けて
さらに続く階段をのぼると柔らかく日が射すniccaさんのお店

余談だけど、ここでやりたいですって表明したのは僕が最初だったみたい。僕がいなくても違う人が絶対手を挙げたでしょうけどね。明るくて静かでちょっと目立たない場所になってるのも結果的にちょうどいい。そんなにたくさんお客さん抱えられないから「うちを見つけてくれー!」っていう感じではないし、笑。だから店の雰囲気とか僕の技術とかサービスを気に入ってくれる人がちょっとずつ増えていけばいいなと。話を聞いた当時は他にお店が入るとかっていうのも決まってなかったのでこういう感じになるって想像してなかったんだけど、日々イベントなんかもあって楽しいです。

【後編】へ 続く。


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