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07_How to Build-up?(春休み2週目・TRのまとめ)
こんにちは!シアター生の加國です。
いつも記事をご覧いただきありがとうございます!本日は、広島大学体育会サッカー部B(以後、広大Bと表記)の春休み第2週目に行ったTRについて解説していきます。
第2週目では、このチームを立ち上げて最初に取り組んできたビルドアップをもう一度整備するという意図のもと、TRを計画しました。
チームとしてどうやって前進するのか?そのためにどのようなポジションを取り、どういうプレーを選択するのか?そういった細かい部分まで詰めていきました。
是非、最後までご覧ください!
※過去2回の記事はこちらから↓
05_ゲームモデル作成のプロセス~組織的守備編~
チームとしての中間目的地
まずは今週のTRの初めのミーティングで、選手たちに戦術ボードを用いて簡単な意思疎通のための話をしました。
ボールを前進させていく中で、チームとしてどこを目指すのか?その目的地を統一するためです。そして私が明確に示したのは、「DF-MFライン間のスペース」です。
ここのスペースで前を向ければ、一気にゴールへと迎える可能性が高まる。あるいは、そこのスペースを気にして相手のDFラインの選手が食いついてくれば、今度はその背後が空き、スルーパスのチャンスが生まれる。こういった側面から、チームとして「DF-MFライン間のスペース」を取ろうと、そういった話をしました。
そのミーティングの中でもう1つ話したのは、具体的にどうやってそこを取るのか?いわゆる目的と手段の話で行くと、先ほどの目的を達成するための手段を伝えました。
重要になってくるのは、ボランチの選手の立ち位置です。いかにボランチの選手が意図をもってポジションを取れるか。あるいは、スペースを見逃さずにボールを要求できるか。ここが最も重要です。
私はボランチの立ち位置を大きく3つに分類できると考えています。「4人の間」、「2人の間」、「お腹側」です。優先順位の通りに、順番にご紹介していきます。
第1優先はライン間のスペース。私は「4人の間」と表現していますが、ここがとれそうならとる、という狙いは常に持っておく必要があります。
次に、相手選手2人のライン上。ここは、「2人の間」となります。深さの話で行くと、先ほどの「4人の間」から1段階、深さを落としたポジションです。相手の門の奥側ではもらえない、でも、門の間でならもらえそう、という場面は試合中にも結構あります。そういう時は怖がらず2人の間に立ってパスを要求し、ボールホルダーも単純なパス交換でもいいからそこを使う。ここの意識も重要です。
「2人の間」でもパスがもらえないなら、今度はそこからさらに深さをもう一段階落とした相手選手の「お腹側」でパスをもらうことを考えます。
そしてこの時に重要なのは、門の間から真っすぐ降りてくること。すなわち、門を形成する相手選手2人のうち、どちらが寄せるのか迷うようなポジションを保ちながら高さを落とすことです。こうすることで、相手が迷ったその一瞬の時間で前を向くことができます。
私の中でこの「お腹側」でボールをもらう選手は、パスの「受け手」というよりは、本当にとりたい次のスペースへのパスの「出し手」になるというイメージです。
つまり、先ほどのような微妙なポジションを保ちながら落ちていくことで前を向ける、その次に今度はその選手がもといたスペースへ違う選手が入ってくる、そこに対して縦パスを入れる。ここまでの一連の流れをセットでイメージしてほしいということです。
以上ここまで、チームとしての前進の目的地と、そのために必要なボランチの立ち位置について解説してきました。ここからは、先のボランチの立ち位置を集団戦術と結び付けて、より詳しい内容に入っていきます。
ビルドアップに必要な集団戦術(Tercer Hombre・Pase de cara・ライン間プレー)
①3人目の動き(Tercer Hombre)
次にお話しするのは、ビルドアップに必要な集団戦術についてです。
なおこの内容については、以前の記事でもご紹介している内容と被る部分があります。そちらもご参照ください。
(記事はこちら:https://note.com/kaku2_ryuga/n/nc86bf7da5df5)
ビルドアップ局面において考えなくてはならないのは、相手のプレッシングをどうやって回避するか、ということです。こちらの意図が前進することであれば、守備チームである相手の意図はそれを防ぐこと、そして、ボールを奪うことです。そのために行われる相手のプレッシングをどうやって回避していくのか。
ここで有効なのが、3人目の動き(Tercer Hombre)と呼ばれる集団戦術です。定義としては、
「ボールホルダーから直接アクセスできない味方選手に対して、他の選手を経由してアクセスするアクション」
となっています。要は、パスコースを切られた時に、1つ違う選手を経由してもともと通したかった選手のもとへパスを届けるアクション、ということです。
例えば、以下のような例を見てみましょう。
攻撃チームがビルドアップしているシーン。GKからCBにパスが出たところで、守備側のFWがアプローチに行きます。CBの選手は前へのパスコースがないので、バックパスを選択しますが、これを予測していたFWの選手が継続的にプレッシングをかけ、CBへのリターンパスのコースを切りながらGKへ二度追いしました。
このような場面で有効なのが、3人目の動きです。たとえばこの場面で、ボランチの選手がスッとボールホルダーに寄って行き、パスコースを作ってあげます。FWの選手はCBへのパスコース(横パス)を切っているわけですから、ボランチの選手へのコースは空いています。GKからボランチの選手を経由し、CBへのパスを通すことができます。
ビルドアップに対する守備チームはほとんどの場合、数的不利から始まりますので、上で紹介したような継続的なプレッシング(二度追い)は非常によく用いられる手法です。その打開策として1つ、3人目の動きは有効です。
②遊びのパス(Pase de cara)
次にご紹介するのは、私のチームでは遊びのパスと表現しているPase de caraと呼ばれる集団戦術です。
私がこれまで勉強してきたMLT FOOTBALL THEATERの動画内では、このPase de caraは先ほどの3人目の動きの中の1種類として紹介されていましたが、私は先ほどの、ボランチの立ち位置と結び付けるという意図のもと、あえて違う戦術として定義します。
この戦術が有効なのは、相手が前からガンガン来るというよりかは、少し構えた感じの守備チームに対してです。例えば、以下のようにブロックを敷いてくるチームの、「2人の間」にボランチの選手が立っている状況を見てみましょう。
この状況では、私たちが本当にとりたい「DF-MFライン間のスペース」は圧縮され、閉じられています。このような時には、自分たちで意図してライン間のスペースを空けさせなければなりません。
この時に有効なのがPase de caraです。先ほどの3種類のボランチの立ち位置で言うと、ライン間では受けられそうになくても、2人の間に立ってそこでボールを呼び込みます。
そしてそこに対してリターンありきでもいいから、とにかくパスをつけること。それによって、門を形成する相手の2人は前を向かれることを恐れて閉めてくることが予想されます。このアクションにより、新たなパスコースが生まれるのです。
そして、ここで重要なのが、パスコースができた瞬間にここに入ってくる選手のタイミングです。
遊びのパスを受けるのは、ボールホルダーから数えて1列前の選手です。それに釣られてパスコースが空き、次のパスを受けるのは、ボールホルダーから2列前の選手であることが多いです。この選手が、どのタイミングでパスコースに入ってくるのかで次の展開が変わってきます。
結論としては、遊びのパスがボールホルダーの足元に到達し、コントロールした瞬間にスッと寄ってくることが望ましいです。このタイミングはボールホルダーの目線で言うと、いつでもパスが出せると準備が整ったタイミングとも見ることができます。
細かいことを言うと、この一連の流れを成功させるためには、ボールホルダーの1列前の選手と2列前の選手との関係性も非常に大事になってきます。
例えば以下のような関係性でPase de caraを行っても次のパスコースは生まれません。2列前の選手とパスコースが被っているからです。これを少し角度をつけて行うことで、次のパスコースが空きます。
以上ここまで、ビルドアップに有効な集団戦術をご紹介してきました。
最後に私が実際に行ったTRをご紹介していきますが、集団戦術のTRをする際に重要なのは、集団戦術のTRであるからといって全体像ばかり見ていても上手くいかないし、求めている現象も起きないということです。
集団として機能するには、選手個人単位できちんとしたキーファクターを設けて、それを達成できているかという視点が必要になってきます。
これまで紹介してきたように、例えば遊びのパス(Pase de cara)からの縦パスを成功させるためには、⑴ボランチの選手がボールホルダーに対して斜め角度で、かつ2人の間にポジションを取ること、⑵パスコースができた瞬間に、タイミングを見計らって2列目の選手がサポートに入ること、といった個人単位でのキーファクターが存在していました。
このような「ミクロ」と「マクロ」の視点を行き来することが、集団戦術のTRにおけるもっとも重要な点であると言えます。
TR紹介(7on7+1S+GK)
さて、最後に、実際に私が行ったTRメニューを解説していきます。
今回紹介するのは7on7+1S+GKというメニューです。
(以下、TR動画のリンク先も掲示しておきます。)
まずはオーガナイズから。私は基本的な考え方として、攻撃の練習をするときは、攻撃側が少し難しくなるような設計を意識しています。
このTRでいうと、コートの後ろ側の端のスペースを三角形で切り取り、スペースを縮小しています。この意図としては、守備側のチームがサイドバックでプレスをハメに行きやすくすることです。
すなわち攻撃側からすると、サイドバックの選手が余裕をもってボールを受けられなくなるということ。ノージャッジでサイドバックにつけるパスばかり選択していると、たちまち守備側のプレスを食らってしまうような状況を作り出したかったです。
また、DFラインの2列目の背後には、サーバーを一人置きました。これには守備側のチームがプレスに行く際に、「前!前!」となりすぎるとあまりリアリティがないなと感じたので、前に行きたいと構えつつ、自分たちの背後の怖さも持ちながら守備をする、その状況を再現したいとの意図があります。
さて次に、具体的にどのようなことを意識してコーチングしたのかという点についてですが、まずは全体、それも守備側チームの全体像からじっくり観察していきました。
このTRでは攻撃選手に対して「門」の存在を分かりやすくするために、あえてファーストラインを3枚にしています。守備が3枚でどのようにDFラインにプレッシングに行こうとしているのか?そこの部分の、チームとしての意図を読み取ることからまずは始めました。
そこまで見えたら、次にようやく、攻撃チームの観察に入ります。
例えば、守備チームのファーストライン3枚のうち外側の選手が、CB→GKの横パスに対して外切りでプレスのスイッチを入れているなら、外切りでかけてきた瞬間にボランチの選手が縦パスのコースに入ってあげるアクションがとれているか。
あるいは守備チームが中を閉めてすこし構えるような姿勢を取っているなら、3枚の間にそれぞれ選手を配置して、パスの出し入れを行っているか。
このように、守備の狙いに応じた効果的なビルドアップができているかどうかを中心に観察していきました。
このTRを終えての感想としては、率直にめちゃくちゃいい雰囲気で選手たちが取り組んでくれたなと感じています。
最初は特に攻撃側が、スペースを切り取られたことによりボールロストをしてしまう場面も散見されましたが、セット間できちんとチーム内で話し合い、改善していくプロセスが見えました。
また守備側についても、最初はファーストライン3枚を正三角形のような形(1トップ気味)にして、頂点にいる選手が方向づけした上で、サイドバックにボールが出た瞬間にGO!といったイメージでプレスをかけようとしていましたが、攻撃側にパスの出し入れを繰り返されなかなか限定できないと見るや、今度は3枚を逆三角形にして2トップ気味にし、センターバックに対してもっと圧力をかけよう、といったイメージで守備をする形にシフトしていく様子が見えました。
強調しておきたいのは、このTRにおいて私は守備の初期配置は提示したものの、守備のプレスのかけ方については一切口出ししていません。選手が自ら、状況を認知・分析し、改善していっていました。そこが一番の収穫かなと思います。
まとめ
今回の記事はここまでです。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました!
次回は、春休み3週目、ゴール前の崩しのTRのまとめを書いていこうと思います。今シーズン、力を入れたいと考えているゴール前の局面について、どのように取り組んでいるのか?気になる方はぜひ、次回もご覧ください!
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