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06_PRESIÓN ALTA・実践編

こんにちは!シアター生の加國です。

いつも記事をご覧いただきありがとうございます。私の通う大学は春休みに突入し、普段よりもサッカーに集中できる時間が増えました。私の中でもこの春休みは、今シーズンを占う非常に大切な2か月であると考えております。

そこで、今シーズンの春休みのTR計画として、1週間を1クールとし、1クールごとにテーマを掲げて徹底的に戦術的な部分を落とし込んでいこうと考えました。

今回は、私の担当する広島大学体育会サッカー部Bチーム(以下、広大Bと表記します)が春休みの1週目(第1クール)に行ったTRを徹底解説して参ります。

結論としては、第1クールのTRは非常に強度・集中度の高い非常に充実したものとなりました。TR内容や現場での様子を少しでも詳しく、皆様にご紹介していきますので、ぜひ、最後までご覧ください!

TRを行う際の基本スタンス

まず初めに、私がTRを行う際の基本的なスタンスを紹介したいと思います。

私が広大Bの担当に着任して以来、こだわっているのは、1週間の中で必ず、TRの流れを「全体像を意識させるもの」から「より細部にフォーカスするもの」にすることです。

例えば、単純なパス&コントロールのTRにしても、この技術が一体試合中のどこで必要なのかを想像できるのとできないのでは、TRに対する集中度が変わってきます。

第1クールにおいては、1日目・2日目に複数ラインでの守備の関係性を確認し、どこで、どうやってボールを奪うのかのイメージを何となく選手たちに植え付けました。

その上で、3日目に一度、人数を減らした小規模のTRを行い、守備におけるテクニックアクションにフォーカスしました。選手全員が意識できていたかどうかは分かりませんが、私自身が期待したのは、守備において「誘導する」局面から「ボールを奪う」局面に切り替わった際に必要な技術をTRしている、と選手に明確に認識してもらうことです。この3日目のTRは、単純な内容ながらも集中度の高い、良いTRだったと個人的には感じています。

このように、「全体→細部」の流れで行う一週間のTR計画に改めて自身が持てたという意味でも、充実した1週間だったと思います。

第1クールの一貫したテーマ

第1クールのテーマは組織的守備・PRESIÓN ALTAでした。その中でも私がこだわったのが、自チームのDFライン+GKを除く6人に対して、自分たちの前と後ろ(相手DFラインと中盤)でそれぞれ1枚ずつ数的優位を作られたとしても、タイミングを合わせてボールを奪いに行く、ということです。

PRESIÓN ALTAを行う場面のほとんどが、守備チームにとって数的不利な場面です。ファーストプレスの役割を担う6人が「奪いどころ」と「奪い時」を共有しなければ、いとも簡単に数的優位を利用されて、プレスを回避されてしまいます。

また、いくら守備の練習だからと言って、守備側が簡単にボールを奪え過ぎてしまうと、選手たちが自らの力を過信してしまいます。それを避けるために、「頑張ったら奪えそうだけど、なかなか奪えない」くらいの難易度であることを意識しました。

難易度の調節に関しては、私自身、手応えを感じる部分ではありました。基本的にどのTRでも最初は攻撃側に簡単に突破されてしまうのですが、その中で自分たちで最適解を見つけ出そうとする姿勢が多々見られました。加えて、難しい状況であるからこそ、ボールが奪えた時の盛り上がりがひときわ大きく感じられました。4日間通して、良い雰囲気の中TRに取り組めていたと思っています。

06_TR風景①

話しが少し逸れてしまいましたが、以上のような点を考慮し、あえて少し厳しめのシチュエーションをトレーニングで再現しようと考え、基本的にどのTRにおいても、1stラインと2ndラインがそれぞれ1枚の数的不利を負うような設定にしました。


第1クール・TR紹介

①3on2+1on2

それでは、実際に行ったTRを紹介していきます。

まずは、先にも述べた通り、第1クールでは、自チームのDFライン+GKを除く6人に対して、自分たちの前と後ろ(相手DFラインと中盤)でそれぞれ1枚ずつ数的優位を作られた状況でも、タイミングを合わせてボールを奪いに行くことをテーマに取り組みました。
その状況をシンプルに再現したのが、このTRです。

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攻撃チームは3on2でポゼッションしながら前方にある2つのゴールへシュートを目指します。中央のセパレートラインを超える手段はパスのみです。また、フロントコートに侵入した際は、攻守ともに1枚はフロントコートに侵入可能とします。

このTRの一番難しいところは、スタートの時点でボールホルダーにプレッシャーがかかっていないことです。そこに対応するまでは、守備が簡単に背後の数的優位を使われ、ゴールされるシーンが何度も見られました。

ですが始まってすぐに、選手たちが改善を試みていました。後ろで待ち構える選手が前の選手に指示を飛ばし、ボールホルダーにプレシャーがかかっていないときはまず縦パスのコースを切るように工夫し始めたのです。これがいわゆる、1stDFが攻撃チームの「前進を防ぐ」ための立ち位置をとる、ということです。

この現象が出始めると、今度は攻撃が上手くいかなくなり少し停滞感があったので、一度フリーズをかけて攻撃側に介入しました。「攻撃側は相手の背中に隠れないように。内を閉めてきたら外に1歩ズレる、外目に立ってきたら今度は内に一歩ズレる。それを繰り返して、顔を出し続けよう。」と伝えました。

06_「背中で消す・消されない」

このフリーズ以降は、フロントコートの攻撃選手2枚が常にポジションを変えながらパスを引き出そうとするようになり、守備側が少し戸惑う様子が見られました。

そこで今度は守備側に介入し、「1stDFがアプローチするタイミングを見つけよう。基本的には、中央の選手からサイドに出た瞬間を狙う。また、1stDFが寄せ切れた時には、カバーの選手が一歩前にポジションを移して、バックパスに対してアプローチできるように準備しよう」と伝えました。

上で述べたのは、守備のプロセスで言うと「前進を防ぐ」プロセスから、自分たちの意図した方向・場所へ「誘導する」プロセスへの移り変わりの部分です。

要は、守備側にとって数的不利の状況であれば、ボールホルダーにプレッシャーがかからなければ「前進を防ぐ」ことしか出来ないから、積極的にボールホルダーに対してプレッシャーをかけることを考えましょう、ということを伝えました。

そして、そのためのタイミングで重要なのは、「1stDFが寄せ切れているかどうか」の判断です。以下の図を見てください。

06_「1stDFは寄せ切れている?」

1stDFが「寄せ切れている」状況とは簡単に言うと、自分が切っているコース+斜めのコースの2つが切れている状況であると定義しています。この状況になった場合は、カバーのDFがギャップをケアする必要がないので、積極的にポジションを前に移し、次のパスの出所に対してアプローチする準備をしましょう、と選手には伝えました。

ただし、試合中には必ずしも、この状況でなくてもカバーのDFがポジションを前に移せるタイミングがあります。

例えば、ボールホルダーが前へのパスの選択肢を持っていないとき。言い換えると、ボールをもらう前に前を見ていないときです。他にも、ボールをもらった時点で体勢が悪く、後ろ向きにプレーせざるを得ないときもそうです。

守備時に大事なのは、攻撃側がどのようなプレーをしてきそうなのか、または、どのようなプレーが可能なのかをきちんと判断した上でポジションを取ることです。

そしてその選択肢がある程度限定できているのであれば、次のパスの出所を予測することができます。ここの予測をするためにも、守備側には常に相手選手を観察することと、隙あらば奪いに行くという準備が求められます。

ここまでの過程で、守備側としてはかなり良くなりました。具体的には、自分たちがどこで奪いたいのか?そのためにいつ、どういうアプローチをするのか?という部分がすごく伝わってくるようになりました。

ですが一方で、せっかく奪いたいところにボールが入ってきているのに、奪いきれないというシーンも多かったです。第1クールでは、この「奪いえそうだけど、奪えない」というもどかしさを大切にし、4日間を通して少しずつ改善していきました。詳しくはまた後程お話しします。

②4on4on4+1F+2GK

次に紹介するのは、GKを含めた、3チーム+フリーマンの方向性ありポゼッションです。

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攻撃チームは、GKとフリーマンを自由に使いながら、中央のセパレートラインをドリブルで突破することを目指します。ラインをドリブルで突破すれば、逆コートの待機チームへのパスが可能となります。つまり、攻撃チームが自陣からパスで逆コートへつなぐことはできない、ということです。

守備チームは4人でボールを奪いに行き、奪ったら逆の待機チームはパスするか、もしくはそのまま攻撃方向にあるゴールへシュートを決めれば攻守交替です。今回は、ボールを奪った後に選手にプレーの判断をしてもらう要素も含めるため、シュートを決めた場合、次に守備となるチームはタメ1からスタート、というルールを付け加えました。

要は守備チームは奪った後に、確実にノーリスクで逆へのパスを選択するか、より価値はあるが、外すとまた守備スタートとなるシュートを選択するのかを判断することになります。奪った時の周囲の状況や、自分の体勢から、正確に判断することを選手には求めました。

このTRで印象的だったのは、守備チームがボールを奪うための陣形を自分たちで判断し、最適化していくプロセスが見えたことです。先のTR同様、何回かはフリーズして介入しましたが、その際に「こういう陣形で守備をしよう」ということは一切言っていません。にもかかわらず、選手が自分たちで判断して奪いに行くための方法を模索していたのがすごく印象的でした。

ちなみに、選手が判断して最終的に落ち着いたのは、下図に示すような3-1のような形です。戦略としては、まず1枚で相手のボール回しに対して方向づけして、その方向にパスが出た瞬間に3枚のうちボールサイドに最も近い選手がアプローチに行きます。そこで縦の選択肢が切れたなら、中央へ入ってくるパス、もしくは、後ろへ戻すパスを予測してさらに圧力を強める、というものが最も多かったです。

06_3-1の戦略

選手の中では、先のTRで話した「前進を防ぐ」ための立ち位置と、「誘導する」ためのボールホルダーへのプレッシャーを、最もバランスよく両立できる形が3-1で構える形だと判断したのだと思います。特に私の中では最適解のようなものは準備していませんでしたが、逆にこちらが勉強になる現象でした。

③2+1on1+2

続いて紹介するのは、第1クールの3日目に行ったドリル練習です。

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片方の2人組でパス交換し、真ん中で待つ攻撃選手は駆け引きしながらタイミングよくパスを引き出し、逆で待つ2人のうちどちらかにパスを出せれば勝ちです。

このTRで求めるのは、真ん中で待つ守備の選手が、縦パスに対していかに背後をとられないようにしながら、かつ足元に入るボールにアタックできるか、と言うところです。

当然ながら、このTRではボールホルダーが完全にフリーなので、インターセプトばかり狙って前重心になると簡単に背後を取られてしまいます。そうではなく、いかに背後のスペースを消しながら、足元に「入れさせて」、どれだけ距離を詰められるかという部分をチャレンジさせました。

慣れてくると、パスが出された瞬間はインターセプトを狙っていても、ボールスピードが速いと見るやすぐキャンセルして我慢して対応することに切り替えたりする選手が出てくるなど、良い判断が見れるようになってきました。

またこのTRを経て再度、先のような規模を大きくしたTRに移ると、よりインターセプトにチャレンジできる選手が増えた印象です。実際の試合中にはパスの出し手であるボールホルダーがプレッシャーを受けている場面も多く、そういうときはより、足元へのパスを予測しやすくなります。そういった部分に選手が気づいてくれたからこそ、よりボールを奪えるシーンが増えたのだと、私は考えています。

④2on1+2on2+GK

最後に紹介するのは、先ほど同様、3日目に行ったTRです。

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攻撃チームはグリッドの中で2on1をしながら、前方で待つ2人に縦パスを当ててグリッドを突破し、ゴールを目指します。グリッドを突破したら、グリッド内から攻守ともに1枚ボールに関わることができます。

このTRでフォーカスしたのは、1stDFがアプローチする際のコース取りです。1日目、2日目で、攻撃チームが中央からサイドにパスを出したタイミングでプレッシングのスイッチを入れるということは共有できていたので、このTRでも同様に、グリッド内の守備選手が横パスが出た瞬間に、再度、横パスをされないように内側を切ってアプローチする現象が見られました。

ただし、多かったのはそのコース取りが甘く、切り返されたり、あるいはチョンと浮かされたりして切りに行った方向への横パスを出されてしまう現象です。それを改善するために一度フリーズを行い、守備側に介入しました。

伝えたのは、「ボールに対して最短距離で真っすぐアプローチするのではなく、弧を描くように、まず最短距離でコースに向かうことを意識してみよう。」ということです。

ボールに対して真っすぐアプローチしてしまうと、横パスのコースが完全に切れません。少しでもボールを動かされたり、あるいは浮かされたりすると展開されてしまいます。

しかし、弧を描くようにアプローチすると、まず最短距離で横パスのコースに完全に体全体を入れることができます。そうすると横パスをするには頭を超える浮き球、もしくは股抜きくらいしか選択肢がなくなります。こうすることでより、ボールホルダーにプレッシャーを与えることができるのです。

06_弧を描くアプローチ

こういった細かいテクニックアクションにフォーカスすることで、4日目にもう一度規模を戻したときに、より守備に迫力が増した印象がありました。あとは一度、「どこで奪いたいか」という全体像を共有していることも影響してか、選手がより集中してTRに取り組んでくれました。一歩間違えると惰性になってしまいがちなドリル形式のTRも、工夫次第で有効なものになるのだと改めて実感しました。


まとめ


今回は、春休み第1クールに行ったTRを紹介してきました。

次回は、春休み第2クールの取り組みである、Build-upの改善を目指すTRについてご紹介していきます。

次回もぜひ、ご覧ください!

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