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05_ゲームモデル作成のプロセス ~組織的守備編~

こんにちは。シアター生の加國です。

いつも記事をご覧いただきありがとうございます。前回、ゲームモデル作成のプロセスとして、組織的攻撃・ビルドアップの局面を取り上げましたが、多くの反響を頂きましたので、今回は組織的守備(ハイプレス)についてお話していこうと思います。


私が担当する広島大学体育会サッカー部Bチーム(以下、広大Bと省略します)が、どのような配置と狙いで組織的守備を行っているのか?について、できるだけ詳しくお話していければと思います。

今回もぜひ、最後までご覧ください!!

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初期配置と主な狙い(PRESIÓN ALTA)


まずは、私が担当する広島大学体育会サッカー部Bチーム(以下、広大Bと省略します)の守備時の初期配置と、主な狙いについてお話します。

初期配置は以下の通り、基本的にどの試合も1-4-3-3から1-4-4-2への可変で守備を行います。

05_ゲームモデル②_初期配置

そして、ハイプレス(PRESIÓN ALTA)の局面では、ハイラインを保ちつつ、相手のボールホルダーに対して2トップとサイドハーフの選手でガンガンプレッシャーをかけに行くことを目指しています。相手ボールホルダーの体勢が悪い時、あるいはバックパスに対しては、GKに対してもプレッシングを継続し、後ろで待ち構えるセカンドディフェンダーの選手の予測を容易にさせることを目指します。

このような守備時の配置および狙いをもつようになった理由は2つ。

1つ目は、バックグラウンドとして、相手のボールホルダーに対して迫力をもってアプローチに行ける選手や、パスの出所を予測し、ポジションを移すことに長けた選手が揃っていることです。

PRESIÓN ALTAを行うにあたって最も重要なのは、プレスのスタートを担うトップラインの選手の機能性です。いかに相手の前進するためのパスコースを塞ぎながら、自分たちの意図した方向へ、相手の攻撃を誘導することができるか。広大Bには、そのタスクをこなせるだけの選手が揃っていると判断し、積極的に自分たちから奪いに行くという狙いを持った守備を行うことにしました。


2つ目は、私の意図として、チームとして積極的にボールを奪いに行くことで、各ポジションで相手のボールを奪いきる能力・技術が身につくことを期待してのことです。

基本的に広大Bは、トップチームとの紅白戦の際にもハイラインを保ち、相手のボールを奪いに行きます。それは見方を変えれば、一気にプレスをはがされて失点してしまうリスクと隣り合わせの戦術です。

ですが、私は基本的にどんな相手に対しても、自陣、あるいはミドルゾーンで待ち構えるPRESIÓN BAJAは採用せず、PRESIÓN ALTAでボールを奪いに行きます。その際に注目しているのは、まず、チームとして意図した方向・場所へきちんとボールを追い込むために、各選手がきちんとタスクをこなせているか。そして、追い込めた場所に実際にボールが入ってきたときに、各選手がどのくらい、ボールを奪うためのテクニックアクションを発揮できているのか。この2つです。

特に私が期待しているのは2つ目の、ボールを奪うためのテクニックアクションの部分を、選手自身でトライ&エラーしてもらうことです。

この部分に関しては、選手によって身体能力にも差がありますし、選手自身に身に付けてもらうのが一番成長につながると、私自身考えています。ある意味、感覚的なものに近いかもしれません。

ボールを相手から奪える選手というのは本当に貴重だと思うので、自分の中でどうやったらボールを奪えるのか?という所を身に付けて、成長につなげてほしいと思っています。


これまでの成長と成果


広大Bの守備時の狙いと、そのバックグラウンドに関してはこれまでお話してきた通りです。次は、これまでの取り組みを通じてのチームとしての成長や、成果についてお話していきます。

結論から言うと、自分たちの意図した方向へ相手の攻撃を誘い込む、チームとして、奪いに行くプレッシングのスイッチを入れるタイミングを共有する部分に関しては、かなり成長していると思っています。当初は、前線の選手と中盤・DFラインの選手の意図が合わない場面も散見されましたが、今ではずいぶん改善されました。

特に変わったのは、中盤の選手がマークの種類をゾーンからマンツーマンに切り替える瞬間を、判断できるようになったことです。例えば、以下のようなシーンが分かりやすいと思います。

05_ゲームモデル②_数的不利

1-4-3-3でビルドアップするチームに対して、1-4-4-2で守備をすると初期配置上、中盤で2on3の数的不利となります。これまでの試合で何度も、こういった状況が生まれました。

このような状況で私が提示しているのは、中盤の選手にマークの種類を判断させるということです。

すなわち、まだプレッシングのスイッチが入っておらず、チームとして「前進を防ぐ」意図で守備をしている時は、2Topに相手のボランチへのパスコースを切らせる。

どこかのタイミングで2Topがプレッシングのスイッチを入れ、チームとして「誘導する」あるいは「ボールを奪う」という意図の守備に切り替わった際には、2Topには相手DFラインにプレッシャーに行かせ、中盤の選手は相手3枚のボランチのうち、ボールサイドの2枚を捕まえる。

ここの判断ができるようになったということです。

05_ゲームモデル②_前進を防ぐ立ち位置

05_ゲームモデル②_ボールを奪う立ち位置

マークの種類には、大きくゾーンマークとマンツーマンマークがありますが、ボールを奪いに行く場面でのマンツーマンマークへの切り替えの判断が良くなったと思います。

私はゾーンマークのことを「ぼかす」、マンツーマンマークのことを「捕まえる」と表現していますが、要は中盤の選手がいつ、捕まえに行くのかを自分から発信できるようになってきた、ということです。

他にも、DFラインによる縦のコンパクトネスの維持の部分はかなり高い意識でできるようになってきています。この縦のコンパクトネスは、PRESIÓN ALTAにおける生命線と言っても過言ではありません。

相手が使えるスペースをできるだけ圧縮し、相手から時間を奪うためには、常にDFラインがセンターライン付近まで押しあがっている必要があります。その必要性を、チーム全体として理解でき始めていると思っています。


課題について


これまでの取り組みで、確かに成長がみられてきてはいますが、一方で課題が明確になっているのも事実です。

まずは、チームとしての「奪いどころ」にボールを誘い込んだ時に、奪いきれないことがまだまだ多いこと。これは先ほどもお話しした通り、伸びしろとして長いスパンで取り組んでいる課題ではありますが、やはりまだまだ成功よりも失敗の回数が多いのが現状です。

ここに関してはチームとして、というよりも個人のテクニックアクションの部分、あるいはコーディネーションの部分になってくるので、そこにアプローチしたトレーニングも必要かもしれません。単純なアプローチのスピードや迫力だけではなく、相手の状態、ボールのスピード、コースと自分の身体能力を総合的に判断する能力が必要になってきます。

他にも、精度の高いワンタッチプレーで相手にプレッシングを空転させられることがあることも、課題の1つとして挙げられます。今は、チームとしての共通認識のもと、前から奪いに行くということにチャレンジしていますが、公式戦が始まるとそれだけでは勝てないので、相手のプレス回避によりこちらのプレッシングが空転させられるようであれば、すぐさまプレスラインを下げ、構える守備(PRESIÓN BAJA)に切り替える判断も重要だと思っています。


広大B流・PRESIÓN ALTA(映像)


ここまで、広大BのPRESIÓN ALTAについて文章や図で説明してきましたが、実際の試合の映像を紹介したいと思います。

(動画はこちらから) https://youtu.be/OAi2KNQhei0

映像で取り上げているのは全てチーム内の紅白戦の映像ではありますが、現象がよく分かるシーンだと思いますので、ぜひ参考にしていただければと思います。(広大Bは、青ビブスのチームです。)

映像に入っているのは2つのシーン。別々に解説していきます。

まず1つ目。相手ボールのスローインからの流れで、バックパスに対してそのままFWの選手がプレッシングをかけ、ボランチの選手が人を「捕まえた」シーンです。相手の後ろ向きのプレーに対しては継続してプレッシングをかけようというチームのコンセプトを、見事に体現してくれたシーンでした。

05_ゲームモデル②_映像解説①

05_ゲームモデル②_映像解説②


2つ目は、自陣でのビルドアップから前進し、最後のスルーパスがミスになった直後の「攻撃→守備」の切り替えのシーン。

今回取り上げた組織的守備の場面と言うよりも、トランジションのシーンではありますが、チームのコンセプトがよく現れたシーンなのでご紹介します。

まずは、ビルドアップのシーンから。私は選手たちに対して、着任してからしきりに「攻撃と守備は表裏一体。ボールの失い方が良ければ、そのままいい守備に入れる。」という話をしてきました。

このシーンでは、ビルドアップの場面から中盤の選手を経由し、丁寧に前進できた結果、最後惜しくもスルーパスが合わなかったものの、そのままスムーズに守備に入ることができました。

05_ゲームモデル②_映像解説③

そして、スルーパスを受けようとした選手にも注目していただきたいです。パスが合わなかった場面ですが、その後足を止めることなく、トップスピードでGKに対してプレッシングに行っていることが分かると思います。

05_ゲームモデル②_映像解説④

このシーンも先ほど同様、スルーパスに対して対応したDFが後ろ向きであり、バックパスを選択することが確実なので、そのまま全体として、ボールを奪いに行くことを選択しました。素晴らしい判断だったと思います。


まとめ


今回は、広大Bの守備について、お話しさせていただきました。

次回は、この守備を実践するためにどのようなトレーニングを行ったのか?ということを、実際のトレーニングメニューを踏まえてお伝えしていこうと思います。

次回もぜひ、ご覧ください!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




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