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ビカクシダの上下を気にする必要は、ある

ビカクシダの株は
パッと見、上下左右の区別がないようで
麻雀の一索と似てる

けど、一索に上下があるように
ビカクシダにも上下がある

判別方法は複数ある


1つ目は
成長点と、1つ古い葉が出てきた部分(旧成長点)の
位置関係を見る方法

その2点を直線で結んで
新しい成長点の方向が真上

この方法は、成長点が1つしかない時期
つまり、1つ目の葉が生えてきた時期には使えない

でも、その時期って
5mmくらいのサイズしかなく
水平に育てるので、上下が分からないままで問題ない


2つ目は、巣葉を見る方法

巣葉は上下方向でなく、左右方向に生える

360°の円グラフの
左半分の200°を使う巣葉が生えたら
次は、右半分の200°を使う巣葉が生える
のループ

大株になるまで胞子葉が1つも出ないような品種
つまり、スパーバムみたいな外見のオーストラリア-ジャワ系は
この方法が使いやすい

胞子葉に比べて、巣葉は成長点の移動が分かりにくいので
どっちが上かは、巣葉のギザギザで見る


逆に
判別方法にならない手がかりもあって……

胞子葉のオモテウラは、上下の判別に使えない

胞子葉は柔軟なもので
株として上下反転されてても、胞子葉の葉柄部分をひねって
天側に向こうとする性質がある

胞子葉のオモテ側は、必ず天に向いてしまうので
株としての上下には無関係

この写真は、新しい葉が
古い葉を回り込んで、天側を向こうとしてる例


なぜ胞子葉は、天の方向を知れるのだろう……?

たいていの飾り方では、上から照らすから
光量の多いほうを向いてるだけ……?

けど、上からでなく正面から照らしてるケースも多い

もっと極端に
下側から照らして放置しても、胞子葉は天側を向いた

たぶん、光でなく重力を認識してる


ヒトの発明では、重力の方向を調べるのは
加速度センサーの役割

大型でも小型(MEMS)でも、バネ構造が使われる

ビカクシダの場合は、風での揺れ方や
葉を伸ばすときの抵抗感を、バネの代わりにしてるのでなく

アミロプラストという粒、オーキシンというホルモンで
重力の方向を知り

重力に逆らって、胞子葉を天方向に伸ばす
「負の重力屈性」を実現してると考えられる


そこまではイイとして
不思議なのは……

自然界で木の表面に落ちた胞子が発芽して
胞子葉が生える時

胞子葉より先に、まず根が生えるわけだけど
それは「正の重力屈性」で、地面方向に伸ばすのだろう

その後、「負の重力屈性」で胞子葉を天方向に伸ばす

でも、自然界には強い風や
株の落下、地面の傾き変動などで

途中で、直上を意味する向きが変わっちゃうケースが
たくさんあっただろう


なら、ロケットに付いてるジャイロのように

天方向の変化に
何回でも追従できるような進化をしてるはず

植物は、常に重力の向きが分かってるのだし
上下確定のチャンスは、最初の根が生えるタイミングの
1回だけじゃないはず


なのに
「あえて上下逆に板付けした株が、成長点を天方向に作り始める」
というケースを、1例も観察できなかった

実験期間がまだ1年なので
その程度では変化せず、2年目からそうなるのかもしれないけど

ビカクシダの上下は、それほど柔軟でなく
子株の頃に確定するのかもしれない


胞子葉が常に天側を向く
という進化が、光合成に有利すぎて

株としては上下反転したままでも問題にならず
それを修正するほどの進化は、必要ないまま現代になったのかも?

でも、それだと
巣葉を王冠のように展開して、腐葉土を集めるタイプのビカクシダで
大株になった後で、木が傾いて真横になっちゃった場合

巣葉の向きを天に追従できないなら
もう腐葉土を集められず
そのうち枯れるかもしれないけど

胞子で次世代に繋げば
その株としては潮時で、困らないのかもしれない


そういうトラブルにすら、短期間で対応できちゃうと
親が淘汰されず、子やほかの植物の居場所がなくなって
バランスが崩れるのだろう

そういえば
子株を分離する人間のいない、自生のビカクシダでは

子株が成長する間
親の成長が止まる(緩慢になる)様子を観察できる

子株は親を取り囲むように、複数できるので
周りから集中攻撃されるスパロボの形になって
親株は退場する

自らの子株に飲み込まれて
枯れて、子株が根を広げる、茶色い土壌として貢献する

親が子のエサになる虫のような進化を
ビカクシダもしてるのだとしたら、なかなか深いし

ビカクシダの進化を尊重するなら
高価な品種だろうと、子株を放置するべきなのだろう


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