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ビカクシダの徒長を怖がる必要がない

料理のために、イタリアの野菜を使うのだけど
苗が日本で売ってなくて
トマト、唐辛子を種から育てるのをループしてる

徒長は怖い

トマトも唐辛子も嫌光性種子なので
アルミホイルで遮光して、床暖で加熱して発芽させるのだけど

根が出て、芽が出て
双葉が開くまでは、種の中の養分だけで伸びる

その後は逆に、光がなければ徒長を始めるので
アルミホイルをめくっては、チェックしないといけない


NHKに『趣味の園芸』という番組があって
プロの農家がレクチャーするのだけど

ガチすぎて、ぜんぜん趣味じゃない

例えば、種の撒き方を
1通りだけが正解かのように紹介して
1cmでも間違えたら、マルチをしなかったら
肥料の配合を1gでも間違えたら

正しい園芸ではないかのような説明になってて
「まぁ、多少は省略しても、ぜんぜん問題ないんですけどね」
みたいな、ただし書きを言えばイイのに……

料理番組と似た形式なわけだけど
料理番組はときどきプロでも失敗してて

失敗に対するリカバリーのテクが見どころだったりするけど
そういう遊びがない番組は疲れる


トマト、唐辛子が双葉の状態で徒長してしまった場合
リカバリー可か、不可か?

プロ水準では不可かもしれないけど
趣味ならぜんぜん可で

高さ10cmくらいの株になったとき
結局、世界線が合流して、徒長してたなんて誤差になる

収穫量も、味も変わらない

トマトは肥料の有無で、収穫のおかわりターンの有無が分岐するから
肥料で世界線が分岐するけど

唐辛子は、肥料なしでも大量にできるし
肥料で量産すると、食べ過ぎというネガティブ方向に分岐するだろう


野菜の芽の徒長で
私が感じる唯一のリスクは

茎の直径が1mmくらいしかない時期に
霧吹きで優しく水やりしないと、茎が折れること

リスクが0ではないから
いちおう避けたいと思ってる程度の「怖い」にすぎない


料理、園芸の番組、記事は
ガハハハ!って笑って、自己流を貫く両津勘吉とは逆の

主体性が薄く、マニュアルから1つはみ出すだけで
不安になって質問するような、経験の少ない人たちがターゲットに思えるし

最初の成功体験をしてもらうために
ひたすら失敗を避ける、理想的な1通りを紹介する方針なのだろうけど

料理や植物って
かなり誤差が許される、遊びが広いジャンルなので

厳密に操作できない人は参加できないかのような印象を与える
それらの番組、記事の方向性が、私はキライだ

むしろ、ここまでテキトーでも大丈夫!
という失敗を見せまくったほうが、人口が増えるのではと思う

失敗しない技術よりも
失敗を取り戻す技術のほうが、つぶしが効くし
いちいち緊張しなくなるので楽しい


アガベの場合
徒長させないどころか、自然界よりも短い葉にして球状に育てる
テクがあるようで

パッキパキに仕上げるほど良い
というベクトルが、定義済みのジャンルになってる

私は自然派でないし
最大トーナメントのジャック・ハンマーみたいな方向性の植物も
ぜんぜんアリだと思うし

シンプルに形の格好良さで判断すると
パッキパキに仕上がったアガベは、たしかにカッコイイ

競走馬の後ろ脚の浮き出た血管のような、フェティシズムを感じる


ビカクシダはどうだろう?

「こうであるほど良い」
って定義すると、「こうでないほど悪い」が発生してしまう

すべての植物は人間のために、人間より後に神が作ったものだ
という、キリスト教の天動説みたいな世界観がキライで

そういう自己中な価値観は
インドに行ってダルシムに負けてこいと思ってるし

シダ植物は、ヒトより4億年も先輩だし

ここは日本だから
「人間が生き物の形を自由にしようなんて、おこがましいとは思わんかね」
みたいに、手塚神のベクトルに従いたい


ただ、ビカクシダの何が魅力か、本能で判断するなら
やっぱ葉だと思う

葉以外に見るものがないので
「葉が魅力的なほど良い」くらいは、定義しないとやってられない

胞子葉が少ないよりは、多いほうが良いだろうし
巣葉が小さいよりは、大きいほうが良いだろう

でも、あえて
胞子葉がちぎれて非対称になってるのが欠損萌えだとか

巣葉が小さい? だがそれがいい
みたいに、ボリューム不足の負けヒロインに味方するような多様性があれば

さらなる深みに行けると思ってる


ビカクシダが徒長して、なにが悪いのか?

ビカクシダの徒長を怖がってる記事は、あまり読んだことがない

で挙げた写真は、徒長してるはずだけど
私には区別がつかない……

野菜の徒長が嫌がられるのは
長い茎は水分を吸い上げにくくて、実の品質が下がるからで

長い茎も実もないビカクシダには関係ないし

葉が長いほど良いとされる
P. veitchiiがあるわけで、むしろ葉を長くするテクとして徒長を利用すべき
まで行くのでは……?


徒長のデメリットとして、思いつくのは2つ

1つは葉の薄さ

屋内での植物育成ライトの1m以内直撃が、だいたい屋外での放置と同じ
って体感があって

その根拠は
屋内で、その状態で生え始めた葉は
屋外に出しても、そのまま育つこと

そうでない薄すぎる葉は、屋外では生きられず

株自身も、あ、これダメな光属性……
って数分で判断してるのか、その葉を自主的に枯らして
屋外対応の葉を出そうとする


経験上、この現象は
ビカクシダのどの品種でも、共通で起こる

「外に慣らす」、「順応させる」という表現をよく見るけど
あれは

  • 屋内で生え終わった葉が、屋外でも生きられる厚さに、後付けで変わるまで待つ

  • 屋内で生え終わった葉が屋外で枯れるのは仕方ないので、屋外対応の葉が充分に生えるまで待つ

のどっちの意味で書かれてるのか分からない

私は、前者の現象を見たことがないので
後者だと考えてるけど……

「順応させる」なんてアバウトな表現をせずに
もっと具体的に書けや、IQサボテン以下か?って思う


徒長のデメリットのもう1つは
胞子葉がたくさん生えた状態を、作れないかもしれないこと

ビカクシダは前葉体から受精後
最初に胞子葉が生えて
あとは、成長点から1つずつ葉が生えてく

最初の頃は、葉1つ1つの寿命が短い

どんどん生えては
1つ前の葉が枯れる感じ


その頃の胞子葉の長さは、せいぜい1~2cm

葉の先が分岐する品種でも
この時期には分岐しないまま枯れていく

分岐がすごい選抜株は
この時期ですら分岐を始めた、やる気ある個体をチェックして
抽出してるのだと思う

最初の胞子葉と、長さ5cmくらいになった時期の胞子葉とで
葉の伸びる速度(m/s)は変化ないか?
というと、そんなはずはなく……

速度はどんどん上がる

2cmになる予定の葉が、2cmに達するまでの日数と
5cmになる予定の葉が、5cmに達するまでの日数は、大差ない

つまり、成長のペースは
最終的な葉のサイズに対する割合で決まってて

割合を距離に直すと、速度としては上がってる


ただ、この速度の上がり方が
キレイな線形になってるかは分からない

胞子葉は10cmの世界、20cmの世界、30cmの世界
って、どんどんレベルアップしてく

10cmの世界あたりから分岐が始まり
20cmの世界では、分岐点の根元側と先端側とが、同じ長さになったりする

30cmの世界では、分岐の分岐も現れる

複雑な形になるのに
根元からの長さだけで、成長速度が決まってるものだろうか?

一般化できるかは、極端な例が成立するかを考えればいい

胞子葉の長さが1mの世界なら
1日に10cm伸びるなんて、ありえるか……?

その品種としての限界サイズに近づくほど
成長スピードは、その品種としてのトップスピードに収束すると考えられる

グラフの右端らへんで緩めにカーブするはずなので、線形とは言えない


胞子葉の長さが長くなるほど
その葉の寿命も長くなっていく

いま成長中の葉から
1つ前、2つ前の葉が、枯れずに残った外観になってく

葉の寿命のグラフも、たぶん似た感じになってて
どんどん長くなるが、品種としての限界以上には長くならない

グラフの完成までに3年くらい掛かるので
小学生は長期の自由研究のテーマにしたら
新規性ありで、発表会とかに行けるかもしれない

胞子葉のフラクラルっぷりからして、ジョジョの黄金長方形のような
自然界のなにかの定数に従ってるんじゃあないか?
って予想してる


胞子葉が枯れるのはなぜ?

まず緑色が黄色、茶色に変わってく

これはクロロフィルが分解されて
カロテノイドが目立って黄色になるからで

ビカクシダが紅葉してるわけだから
ワビサビを愛でればイイと思う

根元から抜ける状態になるのは
葉の先より、根元の1点でアポトーシスが優先的に起こる
ように進化してるから、と考えられる

胞子を遠くに飛ばすための翼として
胞子葉を使うのか……?


……とも思ったけど
台湾で見たビカクシダは、幹の下から上方向にも増えていた

つまり、胞子は落葉後に飛ぶのでなく
落葉前に飛んでるはずで、翼以外のメリットがあるのだろう

たぶん、さっさと次の葉への養分供給に集中したいから
古い葉を早く落としたくて
根元で最短でパージする個体が生き残った結果だと思う

ヤシとかだと、古い葉が折れるだけで落ちず
幹を何mも覆うように進化してるものもあるけど
ビカクシダはそれを選ばなかったみたい

胞子葉は天に向かって増えるから、下に葉が残ってたとしても
光合成の邪魔にならないと思うけど

下にある株の邪魔にはなるわけで
個体でなく、群体としての最適化なのかもしれない


いまの葉を落としてから、次の葉が生えるのでなく
重複期間があった後、古い葉が枯れる

1世代前と入れ違いでないという部分は
孵化までに親が死んでる鮭や昆虫よりも、人間に近い

胞子葉が0枚の状態に、1度でもなったらゲームオーバー
ほど繊細でもない

植物も動物も
身体の細胞すべてがエネルギーの貯蔵庫みたいなもので

最後に1回くらいは、胞子葉が出てくるし
根が強かったり、休眠状態になってた場合は、何回も出せるかもしれない

私はこの状態からの復活に慣れてて
フリーザ編でベジータや悟空をコポコポ治療してた
カプセル並みの腕前だと思ってる


1枚あたりの寿命が伸びてくと
5世代ぶんくらいの葉が同居した状態になり

それくらい株が充実すると
新しい葉が生えても、古い世代の葉の成長が止まらない

親がまだまだ元気で、子供と一緒に
スポーツクラブに通って、トレッドミルで並んで走ってるような状態になる

よくあるビカクシダの写真は
そういう終着点の形

ただ、それを作れたという証拠が
植物育成ライトの環境下と、外での放置にしかなく

弱い光でも
自動的にそうなったという記録が見つからない


分かってることから、たぶんこうなるんじゃないかな?
という結果を、思考実験してみる

弱い光でも
葉の長さは、区別がつかない程度にしか変化しなかった

古い世代の葉が枯れるペースも、変化しなかった

成長スピードは、少しゆっくりに感じた

しかし、新しい葉が伸びてくる速度がゆっくりだからといって
古い葉が待ちきれずに枯れてはいない

たぶん、古い葉の枯れるペースも
同じくゆっくりになってるので、相殺されて釣り合ってるんだと思う

動画をスロー再生してるような育ち方


なので、このまま行けば
時間がかかるだけで、結局は
植物育成ライトを使った場合と、同じ世界線に合流するかもしれない

ただ、植物に季節の変化を認識させないテクが必要だろう

ビカクシダは
休眠期の有無が、品種によって違うけど

休眠期のない品種だって
冬になると、葉の伸びが止まる

春になって、その葉が再成長するかというと
経験上それはなくて、次の葉に世代交代する

これが起こると、典型的な写真のような形にならない

防ぐには、室温をキープして
季節を誤解させ続けること

そのためには暖房なわけで

植物育成ライトがいらない代わりに、暖房が必要

意味ないじゃん……!


……いや、意味はある

だって、植物育成ライトと違って
暖房は冬になれば、人間用に必要

どうせ使うことになる暖房で
ついでに冬もビカクシダを育てよーぜ!

夜間も暖房し続ける必要があるけど
床暖や暖炉があれば満たせる

ない地方は、ゲーミングの熱とか、ネコとか……

丸いプラケースに入れて、抱いて寝るとか……

それさえクリアできれば
虫、灼熱、強風などのトラブルがないぶん
屋外より難度は低いんじゃないかなー


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