見出し画像

【演劇】日本文学盛衰史(鑑賞)

2023年1月16日(月)、吉祥寺シアターで、演劇『日本文学盛衰史』を鑑賞しました。原作は高橋源一郎さん、作・演出は平田オリザさんです。
同舞台は、東京・吉祥寺シアターでは1月30日(月)までやっています。

■平田オリザさんと青年団について

 平田オリザさんは、劇作家、演出家です。今から20年以上前、私は大学生だった時から、平田さんの名前はアゴラ劇場で知っていました。しかし、学生時代はお金がなかったのと、娯楽を控えていたのとで、平田さんの舞台を観ることはありませんでした。
 昨年の12月、インターネットニュースで、明治の文豪たちが登場する『日本文学盛衰史』という舞台があることを知り、文学に目を向けていた私は、舞台にも目が行きました。平田さんに目が向いたというより、作品の題名やストーリーに目が向き、それが平田さんに繋がったという次第です。
 平田さんが演出される舞台を観るのは、今回が初めてです。また、平田さんが劇団「青年団」を主宰していることも初めて知りました。見る機会を得たことに感謝したいと思います。

■簡単なあらすじ

 日本近代文学の黎明期を、小説家(文豪)たちの会話で辿ります。場面は、以下のとおりです。
・一場 北村透谷葬儀 1894年(明治27年)5月
・二場 正岡子規葬儀 1902年(明治35年)9月
・三場 二葉亭四迷葬儀 1909年(明治42年)6月
・四場 夏目漱石葬儀 1916年(大正5年)12月
故人となった文豪もすごいですが、葬儀で会話する文豪たちもすごいです。森鴎外、島崎藤村、田山花袋、樋口一葉、与謝野晶子、幸徳秋水などなど。
また、現代の時事ネタも所々織り交ぜられており、コメディっぽいところもありました。

■心に残った部分・台詞

「私たちは、もうすでに翻訳という形で正解を知ってしまっている。それは、文学だけではない、日本社会のすべてが抱える苦しみです。私たちは答えを知っている。しかし、そこにどうたどり着いていいか分からない。」

二場より

「私たちは、悲しいと書かなくても、寂しいと書かなくても、風景を描写するだけで、その描写する主体の内面を伝えることができるようになりました。」

三場より

「私たちは国民国家を作るために、新しい日本語を育てた。しかし、これからは、言葉は、思想は日本国にあだなすものとなるでしょう。国家もまた、言葉を敵とするでしょう。」

三場より

※他にも、いくつかあるのですが、後で、ゆっくりと戯曲・台本を読んでみようと思います。

■ポストパフォーマンストーク

 私が鑑賞した日は、舞台後、演出の平田オリザさんが登壇し、トーク・質疑応答がありました。
 今回のように原作がある作品では、自分でテーマを決めてやるのと違って自由になれる面がある、といったようなことを仰っていました。原作に縛られるのではなく、自分で自分の決めたことではないが故に自由になれる、といった一種ポジティブな見方であるなぁ、と感じました。

■文学と思想

 中江兆民の『三酔人問答』、陸羯南、幸徳秋水、平塚らいてうなど、思想家・言論人も多く登場していました。私は、文学をウキウキと読むことが多く、思想の面を忘れがちです。文学がその時代時代の思想からどのような影響を受けたのか、そして思想や言論活動に文学はどのように使われたのか、といった「文学」と「思想」の関係については、もう少し勉強してみたいです。より形而上学的に、文学と思想の関係を論じられたら、と思ったりします。今回、平田オリザさん著の『名著入門 日本近代文学50選』という本があるので、台本と並行して読んでみたいと思います。

 最後に、藤村操が二場に出ていたのに驚きました。1903年5月22日に日光の華厳の滝で投身自殺した学生です。日本政治思想史の講義で名前を聞いたことがあります。自殺の理由が、国家のためであったのか、失恋のためであったのか、議論が分かれるところのようです。やはり、文学と思想の関係は深いなと思いました。

以上です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?