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【読書】『枕草子』(ストーリーで楽しむ日本の古典)

 2023年2月2日(木)、岩崎書店「ストーリーで楽しむ日本の古典」シリーズの『枕草子』を読み終わりました。
 以下、メモとコメントを記載します。

■はじめに

 本書は、令丈ヒロ子さんが『枕草子』をアレンジした作品です(以下、「本書」と呼び、『枕草子』原典と区別します。)
 『枕草子』の各段を忠実に現代語訳したものではありませんが、清少納言が宮中へ上がり、中宮の定子の身に起きたことが年代順に書かれており、『枕草子』が書かれた背景や状況を知ることが出来ました。
 また、清少納言の視点からストーリーで綴られていたため、感情移入しやすく、評論などを読むより、頭にスッと入って来る部分もあったように思います。
 少し遠回りになりましたが、これから『枕草子』を読んでいくうえで、土台が出来たというか、理解が深まったように思います。

■『枕草子』について

(1)概要

 『枕草子』は、平安時代中期に中宮定子に仕えた女房、清少納言により執筆された随筆です。枕草子の内容(各段)を、いくつかに分類する説もあるようですが、令丈さんの本では、定子周辺の宮廷生活を振り返って書いた作品と、視点を統一しています。

(2)中宮定子について

 藤原道長は有名ですが、その兄である藤原道隆の長女です。そして、一条天皇の皇后(中宮)となります。定子は一条天皇に大変愛されたようです。しかし、父の道隆死後、政権は道長に移り、詳細は記載しませんが、定子の運命は変わって行きます。

(3)『枕草子』の面白み

 定子が一条天皇に愛された絶頂期を描き、背景にあった道隆一家の凋落については書かれていないようです。清少納言が、定子を慕っていたのが、よく分かるような気がします。

■印象に残った部分

(1)「枕草子」という名前の由来

 色々な説があるようですが、中国・唐の詩人、白居易の詩文集『白氏文集』にある詩の中の一節「書を枕にして眠る」にかけて、心に浮かぶことを書き連ねた文集という説が、一つのようです。

(2)『枕草子』で印象に残った段

 一つだけあげてみます。第87段の「雪山の賭け」です。12月に大雪が降ったあとに作った雪山が、翌年の1月15日まで残るか否か、中宮定子と清少納言が賭けをします。この部分は、学生時代に読んだことがあったのか、記憶に少し残っていました。そしてこの部分は、道隆死後の話のようで、楽しい話ながら、令丈さんは切ないものがあると書かれていました。

(3)定子と彰子、そして一条天皇の関係

 一人の天皇の中宮として並ぶお二人ですが、性格も異なったようです。本書では、定子は、気さくで面白いことを自ら見つけ、思ったことをはっきり仰る性格とありました。他方で、彰子は、一条天皇より若く、奥ゆかしい感じの人物に見受けられます。定子亡き後、彰子は、定子の長男・敦康親王を引き取り、愛情を込めて育てたようで、彰子についてはまた別の本を読んでみたいと思いました。

■終わりに

 この「ストーリーで楽しむ日本の古典」シリーズでは、平安時代に触れた他作品もあります。
 『大鏡』では、道隆・道兼・道隆兄弟について書かれていました。また、道長と伊周(藤原道隆の嫡男であり、定子の兄)の競べ弓の話なども。
 『百人一首』では、清少納言と紫式部、藤原行成の話が出ていました。
 
 出典により、人物像が異なる部分もありますが、共通する部分もあります。歴史上の人物たちですが、いろんな角度から捉えられたらと思います。

以上です。


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