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「カワイイ」の起源についての考察

今の若い人は「カワイイ」という感覚が、昔からあったと思うかもしれないが、そうではありません。

いや、「カワイイ」という言葉も、感情も、昔からあったのですが、今の「カワイイ」の起源は、比較的最近、1980年代です。

今の「カワイイ」と、昔からある「カワイイ」の違いを説明するのは、案外むずかしいですね。

「可愛い」はもともとは、小さくて愛しいもの、子供に対する感情だったでしょう。

「カワイイ」という感情が人間に必要であったのは、やはり育児が長期にわたるからでしょう。

育児に手間がかかるために、「カワイイ」という、幼児に対する肯定的感情が必要だった。

つまり、人間の子供に対する「カワイイ」が原点で、そこから、「子供のように愛しいもの」として、子供が好むものや、恋人や動物などへと敷衍されたのでしょう。

その「カワイイ」が、そうした「原点」から乖離していったのが、1980年代でした。

「カワイイ」が、子供の文化というより大人の文化に属する、二次元の人工物や、ファッションや、また犬猫に使われる方が一般的になっていく。

wikiによれば、1990年代になると、「キモカワイイ」「エロカワイイ」など、本来の「カワイイ」とかけ離れたものにも適用され、より複雑な形容が生まれる。

2001年のバラエティ番組「はねるのトびら」で、女子高生たちが「何がカワイイか」をめぐって混乱していく、というコントがあった(ロバート秋山と北陽虻川が演じた)。そのころにはカワイイの「原点」がほとんど忘れられていたことがわかります。


もともとは子供に対する感情であったカワイイが、20年弱のあいだに、今の「カワイイ」の意味に変化し、世界の言葉「Kawaii」になるにつれて、子供の数が減っていく。これは偶然ではないと思うんですね。(その頃から、犬猫のかわいがり方も、私に言わせれば、ちょっとキモくなっていく)

性欲が、本来の「生殖」から遊離していったのと同じように、カワイイが「育児」から遊離していったのではないか、と。

性欲を、生殖以外の機会に消費すれば、生殖の機会が減る。同じように、カワイイという感情が、育児以外の機会に消費されれば、育児の機会が減る。

今の「カワイイ」は、「おたく」という言葉と、ほぼ同時に発生しました。

また、その頃は、男女雇用機会均等法が施行された時期でもあります。

その頃から、非婚化、少子化が進む。

何がどう関係したのか、よく分かりませんが、この頃に何かが大きく変化した。

そのようにして、SNSでも、我々は「カワイイ子供」より、「カワイイ犬猫」や「カワイイMANGA」をたくさん見るようになった。これは当たり前のことではない気がするんですね。



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