バーンスタインの歌曲ベスト10
レナード・バーンスタインの歌曲だけを歌うリサイタルとか、アルバムとかが、いつ一般的になるだろうと待っているのですが、なかなかならないですね。2018年のバーンスタイン生誕100年の時にいくつかあったようですが、その後はコロナのせいもあり、続きません。
バーンスタインほどメロディを愛した現代作曲家はいないし、いわゆるヒット曲も多く、英語という親しみやすい言語なのに、なぜなんでしょうね。シューベルトと同じくらいには歌われていいと思うんですよ。たとえバーンスタイン自身は「自分はモーツアルトやベートヴェンになれなかった」という挫折感とともに後半生を生きていたとしても。
やはり、バーンスタインはまだ指揮者というイメージが強いこと。それ以上に、彼の仕事が、ミュージカル(ウエスト・サイド・ストーリー)、オペレッタ(キャンディード)、オペラ(クワイエット・プレイス)、シリアスな歌曲集(ソングフェスト)、ミサ曲などにとっちらかっていて、全貌がわかりにくいからではないでしょうか。まあ著作権料とかの問題もあるかもしれないけれど。
今度「ウエストサイド」のリメイク版が公開されることを記念して、バーンスタインの曲がもっと歌われることを促す目的で、ベスト10を作りました。これはあくまで暫定です。新しい、いい歌唱が生まれたり、いいアレンジが生まれたら、曲の評価も変わるものですからね。
10位 WHAT LIPS MY LIPS HAVE KISSED(私が接吻したのは)<ソングフェストより>
「ソングフェスト」の中からはこの曲を選びたい。遠い恋の記憶にうなされる女詩人ーーエドナ・ミレイの繊細かつ戦慄的な詩を巧みに音化している。作曲者もお気に入りだったのがうなずける曲です。
9位 NEW YORK, NEW YORK <オン・ザ・タウンより>
映画「踊る大紐育」の冒頭、ジーン・ケリーの軽快なステップが目に浮かぶ曲です。その派手で効果的な音楽はバーンスタインの特長を表しています。on the townという英語に「街に繰り出して浮かれる」という意味があること、New York, New Yorkとは「ニューヨーク州ニューヨーク市」のことだとはかなり後に知りました。
8位 COOL <ウエスト・サイド・ストーリーより>
「ウエスト・サイド・ストーリー」はやはり名曲が多いのですが、この曲は象徴的な意味でも、音楽的充実でも、欠かせないと思います。いろいろなアレンジで聞いてみたい曲。
7位 OHIO <ワンダフル・タウンより>
ひたすら楽しい「ワンダフル・タウン」からはこの曲を選びたい。田舎から都会に出てきた姉妹の苦労を冗談めかして歌う曲ですが、私のような地方出身者には泣けてしまうところがあります。
6位 AMERICA <ウエスト・サイド・ストーリーより>
一度聞いたら忘れられない、派手な効果という点では、バーンスタインの中でも1、2位を争う曲でしょう。やや軽薄な感じはありますが、やはり落とせない曲であります。ただ、一人で歌うのは難しいかも。
5位 I AM EASILY ASSIMILATED <キャンディードより>
「キャンディード」から何を入れるか、迷うところですが、この曲は外せない。今年93歳で亡くなったクリスタ・ルートヴィヒの名(迷?)唱が忘れられない。私はすぐ順応するーー「赤狩り」を皮肉った曲として知られていますが、政治的風刺劇である「キャンディード」の中で、その意図が最も生きている曲でしょう。
4位 GLITTER AND BE GAY <キャンディードより>
この有名曲もやはり落とせない。効果が派手なだけに、比較的録音に恵まれている曲だと思いますが、まだまだいろいろな歌手で聞きたい楽しい曲です。
3位 WHAT A MOVIE <トラブル・イン・タヒチ、クワイエット・プレイスより>
脚本もバーンスタインが書いた「タヒチ島の騒動」は、なかなか評価の定まらない作品だと思いますが、この曲のインパクトは永遠です。退屈な生活に疲れた主婦の妄想が暴走する。ミュージカルとオペラを融合しようとした努力から生まれ、バーンスタインの才気が爆発したような曲です。ただ、YouTubeでいくつか見ましたが、実演が難しい曲ではありますね。苦労するわりに取れ高が少ないと歌手に思われて仕方ないかもしれない。バーンスタインの機知とアイデアを聴衆に伝える難しさを示す曲でもある。この曲を受ける曲にする天才歌手の出現を待ちたい。
2位 SOME OTHER TIME <オン・ザ・タウンより>
バーンスタインの代表曲、スタンダートとして、もっともっと歌われて欲しい曲。バーンスタイン自身とアイリーン・ファレルの演奏が残っていて、「人類の至宝」として遺産登録してほしいほどです。晩年の二人が「楽しい時間はなぜ早く過ぎるの」と歌うのを聞くと涙が出る。この曲を含めてバーンスタインはジャズのイディオムを取り入れたが、それは20世紀の作曲家が皆そうした範囲での理論的な導入であり、バーンスタイン自身がジャズをうまく演奏できたわけではない。しかし、この曲にはビル・エヴァンスの演奏が残されていて、本物のジャズのテイストを味わえる。
1位 TONIGHT <ウエスト・サイド・ストーリーより>
1位はこの曲です。年をとると「恋の瞬間」が懐かしくなる。そういう意味でも、「やっぱりいい曲だな」と年々思いが募る曲であります。
1位
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