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その6 幼児が文字を書くための3つの準備

今回は、幼児が文字を書くために必要な準備について書こうと思います。

5歳ごろになると文字への興味が現れ、文字には人に思いなどを伝える役割があることに気づき、お友だちに「あそぼうね」とお手紙を書くなど、文字を使用することでお友だちとのつながりを感じはじめます。
ここに至るまで、幼児たちは、いろんな体験をしていると思います。
体験は、幼児が文字を書くための準備のひとつです。
では、どういった準備があるのでしょうか。

以下の3つの準備があると考えられます。
1、 心理的準備
2、 身体的準備
3、 生理的準備

では、ひとつずつ見ていきましょう。
「心理的準備」は、文字習得への刺激となる環境をつくることです。
つまり、日常生活の中で、文字に接しながらその役割に気づき親しむ体験を通じて文字習得の意欲が育くまれる環境をつくるということです。

絵本の読み聞かせや、かるた遊び、園内の教室の入り口のマークと文字、自分の持ち物に書かれたお名前、お友だちの持ち物に書かれたお友だちのお名前など、文字と接する場面はたくさんあると思います。

絵本の読み聞かせや、かるた遊び、絵のみのお手紙から発展させて文字も一言入れてみるなどは、親や保育者のサポートが可能です。これらは、語彙力や情緒も育てることができるのでおすすめです。

私の知人のお子さんは、大好きなポケモンのお名前を覚えたいという思いからカタカナを覚えたそうです。好きなキャラクターのお名前も文字習得の刺激となるのです。

二つめの「身体的準備」は、手首を滑らかに動かすことができるか、鉛筆をしっかり持てるかということです。

しっかりと手が発達していないと鉛筆を正しく持つことはできません。
鉛筆の持ち方1でお話ししましたが、正しく鉛筆を持つことは文字を書くためには重要です。

しっかりと発達させるためには、お砂遊び、鉄棒、うんてい、積み木、お絵描き、折り紙、あやとりなどが有効です。これらの遊びを通して、手や腕などの使い方を習得していきます。

筆圧が低く濃い鉛筆を使っても薄い文字しか書けない子どもを多く見かけます。これらの遊びを通して手や腕の発達を促すことができます。どんどん遊ばせてあげましょう。

かきかた科学part6

三つめの「生理的準備」は、幼児の視線が明確に文字の輪郭をたどることができるかということです。

幼児の図形への視線は年齢を追って以下のように変化するようです。
〇視線は中央部をすべり、目の運動はさほどなく、輪郭をたどる動きはな  い。
               ↓
〇文字の中央部、図形の最も特徴のある部分を見る。
               ↓
〇輪郭を追う視線運動が現れる。しかし、この運動はその図形の最も 特   徴的な部分をとらえるだけで、残りの部分は依然と追跡されない。
               ↓
〇輪郭に沿ってたどるようになり、また、図形を見る運動量が増加し、それとともに凝視時間が短くなる。

つまり、個人差はありますが、6歳ごろには文字の形を認識できるようになるようです。

こうしてみてみると、鏡文字などを幼児が書くのは、このような発達段階によるものだとわかります。

今回は、幼児が文字を書くために必要な準備についてみてきました。

早い時期から鉛筆を持たせてひらがなを書けるようにさせたいと、思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、お子さんが文字への興味があまりない「心理的準備」ができていない状態、
手や手首、腕を上手に使えない「身体的準備」ができていない状態、
まだ、図形を見る発達段階で「生理的準備」ができていない状態、
では、お子さんはひらがなを書くことは苦痛でしかありません。

生涯にわたって文字を書くことを楽しんでもらえるよう、幼児期ではこの3つの準備をしっかりしたいものです。

【3つの準備の取り組み例】
「心理的準備」
絵本の読み聞かせ
かるた遊び
お手紙
お名前をひらがなでひともじカードに書き、お名前になるように並べる
お出かけ先の看板などでお子さんのお名前のひらがな探し
しりとりをしながらおうちのかたがひらがなで紙に書いていく

「身体的準備」
砂遊び
鉄棒
うんてい
折り紙
積み木
レゴブロック
あやとり
お絵描き
めいろを線でたどる(このときは正しい鉛筆の持ち方で。間違った持ち方だと、文字を書くときに正しい持ち方に正すのが困難になります。)

「生理的準備」(物を観察する観点から)
パズル
図形遊び 折り紙で三角形を何枚か作り、それらを並べて絵を描く。
間違い探し

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