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人それぞれだからこそ

「人それぞれだよなー」と、その人は言った。

そう。結局のところ、人それぞれなのである。世の中には万能薬に思えるようなハウツーや、誰にでも共通する公式のようなものが語られはするが、だいたいその人たちなりの形に工夫しなくては、だんだんズレが生まれてくる。

それは個人のことだけでなく、カップルや組織の形にも言えることだろう。

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結婚の話だった。

僕は2月に入籍したのだが、そんな話をすると決まってこんな質問が飛んでくる。

「結婚してみて、今どうですか?」

なんとざっくりとした質問であろうか。「やっぱり1人がいいよー」という自虐的なコメントが欲しいのか、はたまた「愛してる人と一緒にいられて最高です」というような幸せオーラを引き出したいのか。そんな質問者の意図を解そうともせずに、僕は素直にこう答える。

「家事が分担できて、楽ですよ。」

まあ結婚に限らず同棲についても同じことが言えよう。我が家では、家事を分担する。忙しい朝は、妻が朝ごはんを作る間に、僕は洗濯を乾かし、できるときは掃除や片付けをする。朝の30分に家事が三つもできてしまうのは、共同生活がなす技である。

このような話を僕は当たり前のようにするが、どうやら他はそうではないらしい。人によっては、そもそも朝の時間が合わないし、相手の出張も多いし自分も忙しいしで、同棲をしていてもあまり時間を共有しないことが多いとか。それはそれで大変だな〜ということを考えていたら、例の言葉をその人はつぶやいた。

「人それぞれだよなー」

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答えがないから、人は悩むのだと思う。結局最後は自分で考えないと道筋が見えてこないから、それが悩ましい。そんでもって、完璧な答えなどないということが判明したりすると、余計にモヤモヤが増えていくものだ。

こういうとき、一人で悩んでしまうのが一番よくない。

一人で考えて答えを出してうまくいくことなど、人生においてそんなにない。アイディアに自信があるならいいかもしれないが、世界は広いのだから、人に話をしたらもっと広がるかもしれない。そうすると、「人それぞれ」かもしれないけど、何かしら答えが見えてくるはずである。

人それぞれだからこそ、いろいろと話を聞いてみたらおもしろいのではないだろうか。

そんなことを考えながら、僕の中にもしらないうちに一人で考え込んでいるようなことがないか、思いを巡らせるのであった。そういうのって、知らないうちに僕らの頭の中に紛れ込んでいるものである。

2024.06.28
書きかけの手帖

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