見出し画像

ミクロとマクロの社会課題と希望に触れ続けると世界は拓ける【ジモコロ7周年】

2022年5月11日で編集長を務めるジモコロが7周年を迎えた。


7年前 一発目の記事


まさか7年も続くだなんて思っていなかったし、8年目を目指すころには40歳になっているとは1ミリも想像できていなかった。

時は残酷ではなく、十分な時間軸のなかで、じっくりと生きることに向き合うための思想を蓄えられた7年だった。これまで何度も書いているが、ジモコロ以前/以降では自分自身のアイデンティティが大きく変わっている。別人といってもいいくらいだ。

漠然とした「地方創生」の旗印が何を残したのか。無残にも消えていった地方自治体予算の行方は、土着的な生き方を選んできたプレイヤーたちにとって霧よりも濃い感情を抱かせている気がしてならない。

一方で社会変化とともに手触り感のあるローカルにおける役割は、20〜30代の生き甲斐を与えてきたのではないだろうか。ポジティブに考えてみよう。瞬間的に見れば人間関係のむずかしさに辟易したことも多いだろうが、たった10年の時間軸でメタ視点的に捉えれば未来を耕すための種蒔きは進んだように思える。7年間観測してきた現場の肌感覚でしかないが、世代交代のうねりは確実に起きている。

例えば、地元で生き残りを賭けた体力のある中小企業が、代替わりで40歳前後の後継者にバトンタッチ。未来を見据えた巨額の投資を惜しまない姿勢、SNSを駆使した企業広報の在り方を問い直す変化など、同世代ということもあって「ようやくこの流れが訪れたか…」と拳を握り直すぐらいに希望を感じているのは私だけではないだろう。

どう考えても、潮目が変わってきている。

悲観的な事実ばかりに思考を奪われないで、着実な実践が求められる。

既得権益にぶらさがって、自己保身のみっともない言葉を社会に撒き散らす精神的老害の割合がグッと減っていく社会構造になっていくはずだ。

全国で合意形成と調和の防護スーツを着込んで、夜な夜な牙を研いてきた30代が虎視眈々とこのタイミングを待っていたことを私は知っている。むしろ、その実感を得るために全国47都道府県を行脚してきたのかもしれない。

現場宝石タラバガニは伊達じゃなく、あらゆる町で起きている優しい革命の萌芽を指先で口元に運んでいたのだった。

野付半島に出没した現場宝石タラバガニ


ミクロとマクロの反復横跳び

これまで東京を離れて、地方ばかりに時間を割いてきた。移住してもうすぐ5年。身を置く環境で入ってくる情報は激変し、日々考えることや行動基準など、自分自身がどんどんローカライズされていく実感があった。同時に「東京の流行りがわからなくなって編集者として大丈夫なのだろうか?」と躊躇うことも…。

いまとなれば杞憂そのものだったといえる。

なぜなら、我々が請け負うメディアは常に社会を写す鏡となっていたからだ。企業が抱える課題やアプローチは、社会の空気に晒されている。その空気に敏感なのは編集者に必要な素養そのものだろう。幸いにもメディアそのものを立ち上げる機会に恵まれていたため、コンセプト、タグライン、メディア名、編集部の構成まで、時代の空気を感じ取ったディレクションに注力することができた。

正直、7年前に立ち上げた当初のジモコロは「経費で全国に旅行してみたい」という純粋すぎる動機から今日この日まで続いているが、これも東京で働き続けることの難しさや前述の地方創生の空気を感じ取っての判断だったのかもしれない。

ローカル取材を通して”社会課題のミクロ視点”に触れてきたと思っていたが、この7年を振り返るとあらゆる事柄がドミノ倒しのように次々と繋がっていく感覚がある。最終的にはマクロ視点で世の中を捉えられるようになった。物知り感が出る。野菜の取材ひとつでも味や個性、在来種、土中環境、農家の歴史文化、流通、戦争、気候変動、フードロス問題まで広がる(ミクロ→マクロ)。昨晩、布団の中で急に思いついた話だが、実際マジでそうなのだ。びっくりした。

地域課題は社会の縮図であり、処方箋的に対処した成功事例は短期的なおもしろさに長けている。同時に、取材の流れで歴史や知恵を掘り起こせば、長期的なメタ認知を得ることができる。世の中の見方そのものが変わる。ミクロとマクロの反復横跳びで日本中の人と対話をすれば、多様的な視点とともに世界の解像度がグングンと上がっていく。

喫緊の課題に触れながらも、同時に希望のバトンを渡してもらっているような感覚。ハードすぎる全国行脚で挫けそうになる瞬間も正直多々あるが、「取材の行為そのものが贅沢でとてつもなくおもしろい!」と思っていられるのも、ロールプレイングゲームのようにレベルアップの鐘が頭の中で鳴り続けているからなのだろう。最高だよ、最高。全国の高校生全員がジモコロ取材をやったら世界が絶対によくなる自信がある。

  • ジモコロ=全国47都道府県のオールジャンルで掘り下げる

  • BAMP=社会課題を土台にしたクラファン発の小さな声を届ける

  • Gyoppy!=海・漁業をテーマに一次産業や気候変動の課題を可視化

  • SuuHaa=長野県に特化した移住促進につながる暮らしをアーカイブ

  • Yahoo Japan SDG`s=地球上の課題(17ジャンル)に対してアプローチ

  • DEATH.=概念の死をあらゆる角度で考える。メメント・モリ

これまで立ち上げたウェブメディアの役割を並べるだけで、社会の空気を察知しながらミクロとマクロの反復横跳びをしていることが伝わるだろう。フィールドが地球にまで及んだ反動で、観念的な「死と生」にまで手を広げている。しかし、小さい会社でよくこんなメディアを立ち上げて記事を作ってきたな、と自分でも驚く。

ようやく会社としての土台ができたような感覚だけど、これらは全部つながっているし、きっかけはすべてジモコロの取材にある。オールジャンルで好奇心をフル卍解しながら走ってきたルートは、振り返ると社会そのものだったと言える。

流行り廃りに身を預けなくとも、人が生きていくために必要な知恵に耳を傾けるだけでいい。他者と比較せず、自分が自分であるために生きる。映画や漫画など、いまあらゆる物語に含まれるメッセージは、これまでのローカル取材で見聞きしてきた体験にぜんぶ詰まっていたんだと思う。

これまで取材させてもらった人たちに感謝〜!


ジモコロ7年目はどうなるんだろうなぁ。

そろそろ編集長のバトンを渡したいので、「我こそは!」という人がいたらいい感じのルートで会って話していきたいな。若者がすべて。背中を押して、次に進んでもらおう。めんどくさいことはええ感じに処理しとくから、気にせず飛び越えていってほしい。やるしかねぇんだから。


やりすぎるとすっげぇ老ける


All phots by はらちゃん




1982年生まれ。全国47都道府県のローカル領域を編集している株式会社Huuuuの代表取締役。「ジモコロ」編集長、「Gyoppy!」監修、「Dooo」司会とかやってます。わからないことに編集で立ち向かうぞ!