見出し画像

「さて、どう生きようか?」会社5期目の生存戦略を考えてみた

気づいたら自我が小さくなっていた

画像5

育ってきた環境と自らが選んできた道筋は、決して平坦なものではないし、ぐねぐねと蛇行するような生き方だったなと振り返る。

一般的な良い大学を出て、大企業に就職するような道のりを高速道路とするならば、自分が通ってきた道のりは舗装されていないガタガタの一般道だ。石は転がっているし、理不尽な事故も多い。わけのわからない人が飛び出てくることも珍しくない中で、ただ起きた事象を受け止めて面白がる。じゃないと笑い話にならないから。

笑って堪えて、悲しみに打ちしだかれることがあれば立ち止まる。心を閉ざし、布団の上に転がって活力を放棄する。喜怒哀楽が人間のエネルギーだとしたら、何もしないことは次に進むための放電だ。

喜怒哀楽の感情の数値は、人間に向き合えば向き合うほど激しく上下に揺れる。だったら何もしない。ポジティブもネガティブもきしめんみたいに平たくして、そっと床に放置するのが好きなのかもしれない。

生きることがうまくなったのだろうか?

コンプレックスの地縛霊と20年近く付き合ってきた自負があり、それが強い衝動を生んでいたのだが、最近めっきり顔を出さなくなった。このご時世のなかで人と話すことよりも、自然と触れ合う機会と時間が圧倒的に増えたせいかもしれない。ふと自我が小さくなったことにも気づいた。

常に他者観察を繰り返し、ガタガタの一般道を駆け抜けるためのヒントを探していたけれど、気づいたらそれなりのそれなりな場所までやってきたのかもしれない。自我が小さくなって、他者への関心が以前よりも驚くほど減ったように思う。おれはおれ。おまえはおまえ。ただ年を重ねただけではない、自己の変化を促し、むしろ元々の自分に戻りつつあるような柔らかい感覚に包まれている。

9月で38歳になる。宇多田ヒカルと同い年。めっちゃTravelingしてる。


個人は38期目、法人は5期目へ

画像1

8月から株式会社Huuuuは5期目へ突入した。

気づいたら時間だけが経っていて、その実感値は毎度のことながら低い。自分は本当に会社を経営しているのか? 法人の代表なのか? 組織としての体をゆるやかに維持しているものの、相変わらず自社オフィスは存在しない。昨年二拠点生活を辞めて、長野の生活にシフトしてからは東京のメンバーに実務を任せることが多いのが正直なところだ。

「2020年は不景気になって広告費用が削減されるらしい」

こんな噂話を2018年あたりから耳にするようになった。実際は不景気の波に加えて、コロナ禍における世界的大不況が笑えないレベルで日々ニュースとなって押し寄せている。想像を超えるような事態に陥っていて、3月〜5月あたりは情報収集に明け暮れるだけで時間が過ぎるような狼狽っぷりだった。

もちろん影響は少なからずあったものの、Huuuuは毎月のメディア運営が中心。胆力のあるクライアントのおかげで法人向けの給付金に頼ることなく、いまのところ黒字決算の予定となっている。奇跡としか言いようがない。妖精が要所で肝になるような仕事を持ってきてくれるんだよな…。

会社立ち上げ直後からギルド組織で切り盛りしてきたけれど、昨年9月に思い切って正社員雇用ダブルの手札を切ったのがよかった。

画像2

長野の助成金目当てで「よし、とりあえず若手を一人雇用しちゃお!」と息巻いてみたら、「あれ、助成金は思ってたのと違うし、日向くんを雇用したら先輩のだんごさんも雇用しないと筋通らなくねぇ?」のなし崩しパターンで正社員雇用ダブルしてみたけれど、これが完全に功を奏した。

完全勝利!

”素直で真面目な人間は、正社員になると勝手に頑張ってくれる”という日本伝統のメソッドが炸裂。外注費コストをグッとおさえこんで、社内人件費でフルカバーした副次的なメリットも大きい。

画像3

とはいえ下半期がどうなのかはまったくわからないし、むしろ売上大幅に減るんだろうな…という悲観的視点で予測している。

宿泊業や飲食店の苦境は友人知人のSNS投稿に加えて、新聞やニュースもしっかり追っていて。情報を扱う自分たちに時間差で襲ってきてもおかしくない。いや、確実に不景気の霧が立ち込めてくると思っている。気候変動の災害、資本主義の限界、そして疫病の恐怖。残念ながら数百年に一度レベルのやっべぇ時代に直面しているんだなこれが……。

だからしばらく横たわって、土をいじって、釣りをしたら驚くほど心身が軽くなった。みんな軸足は「自然」だよ。不確かで答えがなく、常におもしろい存在は「自然」にしかない。人間のおこがましさを自覚しよう。


安全圏を見据えた攻守備えた打ち手

画像6

さて、今後どう生きようか?

どう働くか、よりも、どう生きようか、の観点で考えたほうが信念に近い意思決定ができると思っている。

幸い二拠点生活を手放したことによって、毎月の生活/会社コストはかなり低い。自宅兼オフィスは月5万円。法人契約の車ローンが月5万円。長野の店舗『シンカイ』の家賃は3万円。東京メンバーのためにシェアオフィスとして下北沢『BONUS TRACK』を8月から借り始めたが、固定の賃貸物件と違い状況に応じて戦略的撤退が可能だ。いかんせん東京の賃貸は初期コストと退去コストが高すぎる。都心部のオフィススペースが空洞化していく世界のなかで、ここの価値観はまだまだ大きく変動していくだろう。



●HuuuuのZINEを2冊出版する

決定事項の打ち手としては、企業理念『人生のわからない、を増やす』を掲げた以上、世界観の提示が不可欠だと思っている。クライアントワークではブレーキをかけている言葉や価値観がたくさん眠っていて、一緒に働いている仲間たちの好奇心のアクセルをギュンギュンに踏み込んでほしい。そのためのZINEを2冊同時出版で進めている。

Huuuuらしい紙の印刷物を全国に流通させたい。自己判断で遠慮なく物事を進められる快感は、社内にしっかりと根付かせたほうがいいんだなと現時点で気持ちがアガっている。このZINEきっかけで、この世界観に賛同してくれる大口のスポンサーを見つけたい。いや、パトロンと言ったほうが正解かも。ナショジオみたいになりたい。

現時点の仮テーマは『生きる』!!!!

生きる〜〜〜〜〜〜〜〜!!

生きろ。

画像4

画像9

画像10


●コーヒースタンド『柿次郎珈琲』のOPEN

コロナきっかけで「人の賑わい」を作りづらくなった実店舗『シンカイ』の運営。Huuuuの長野活動における広告塔であり、県内外の人たちが気軽に交流できる場所として地味に大事な機能を果たしている。この場所がなければ幅広い世代の価値観に触れられてないと思うので、いまだ赤字の難しさは感じつつも、丸2年経って「あらためて、やってよかったな」と。クラウドファンディングで支援していただいた皆さんに超絶大感謝…!!

次の一手は、間口の広いコミュニケーションを生むための装置としてコーヒースタンドをやっちゃおうかな、と。一週間前にアイデアが浮かんで、すでに飲食店営業を取得するための設備購入、工事の見積もり、デザイン周りの発注に進んでいる。ものすごいスピード感で意思決定しているんですけど、これはもはや必要不可欠な打ち手だと思っている。

それこそ東京の仕事が一切なくなってしまったら? コツコツと利益を積み上げる事業がないと、地域で生きていくための歯車が失われてしまう。今まで通り店長のユウくんが珈琲を淹れて、店舗の機能拡張をするもよし。シンカイ二階の住人・スナフキン根岸さんが退去するので、新たな住人を募集しようかなとも考えて、その人の役割になるもよし。仕事を失った私が週5で立って月10万円を稼ぐ世界に踏み込んでもよし。

よくわからない交流の場所・わかりづらいお土産屋のシンカイが、わかりやすいコーヒースタンドに化ける。そのブランドがあれば来年は復活してくれるであろうフェスやマーケットのイベント出店時も機能するはず。その店名がシンカイでもHuuuuでもなく、個人の『柿次郎珈琲』にしたい気持ちについてはまた諸々が完成してきたらnoteにまとめたいと思う。


もちろん引き続き、お仕事は募集中!

画像7

Huuuuでは、社会貢献や文化育成、好奇心を刺激する面白い仕事を仕掛けたいクライアントを求めています。

メディア運営、紙媒体、冊子制作から、商品プロダクト、イベント企画、行政・まちづくり文脈の手助けまで、これまで培った全国47都道府県との関係性と知見、そして貯まりに貯まった「わからない」の種 を活用したい。

自分たちだけでは水をあげて芽吹かせません。また、この企業理念に共感してくれるライター、編集者を絶賛募集中です。お気軽にお問い合わせください。

最近、Huuuuとして仕事の領域開拓をしたのは「スペシャルサイトの制作」。企画からウェブ制作、取材、記事制作まで。これまで貯めてきた編集の知見と人間関係をフル活用したディレクションでやりきることができた。これも美大卒の日向くんの加入が大きなきっかけになっている。彼が前職で培った1年弱のWEBディレクター経験が生きているぞ〜〜〜。

少人数チームにも関わらず、事業領域が広がっていて、傍から見たら「どういう会社なの?なにが得意なの?」の説明コストも上がり続けているし、わたしが東京にいないことで営業コストも上がっている昨今…。こういう節目のエントリーをしっかり書くことでキワキワの会社経営をなんとか成り立たせている気がしてならない。

薄氷をいつ踏み抜いてもおかしくないような状況だけれども、会社をたたむことがあっても死なないような世界を小さく積み上げてきている自信はある。そのときはそのときの覚悟をコンパクトに折りたたんで、自分たちのやりたいことをしっかり形にしていきたい。苦境も人生のスパイス。

画像8

久しく会っていない人が増えてきたので、各自で生き延びてまたおいしいお酒を飲みたいな。仕事して、遊んで、乾杯。生きるってそういうことだ。

写真:北海道の左上の最高な友だち「はらちゃん(@idenxtity0911)」



1982年生まれ。全国47都道府県のローカル領域を編集している株式会社Huuuuの代表取締役。「ジモコロ」編集長、「Gyoppy!」監修、「Dooo」司会とかやってます。わからないことに編集で立ち向かうぞ!