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おこづかいの基準はありますか?

 金融広報中央委員会が行った「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回  2015年度調査)によると、小学生の7割強、中学生の8割強がおこづかいをもらっています。その額は、「月に1回」もらう場合で、小学生は500円、中学生は1000円が最も多い回答となっています。「こづかい帳」をつけているのは、小学生、中学生ともに約2割程度です。
 おこづかいをもらうにあたり、中学生の1割強は「家の仕事をすることが条件」と答えていますが、ほとんど(7~8割)は「何の前提条件もない」との回答。この調査からは、おこづかいを通した金銭教育が十分に行われていないように見えます。
 経済学者の武長脩行のぶゆき氏は、アメリカでベストセラーとなった『お金は木にならない』(ニ―ル・S・ゴドフリー著)を翻訳。あとがきに、家庭でお金の使い方を教えずに、「突然、中学生ごろから、自由にお金を使わせてしまう」、学校教育の現場にも「体系的な金銭教育」がない、と書いています。子ども時代に、毎日の生活に欠かせない「お金を管理する能力」を学べないと、「お金オンチ」になってしまうかもしれません。武長氏は、「ある程度まとまった額を任せる、毎月決まった額でやりくりする力をつける、毎月、目的をもって貯金をすることの3つが大切」と言っています。

Aさんの場合:年齢×300円~400円とまとまった金額を任せました


 小学生の場合、学年×100円をおこづかいとして、子どもに渡していたAさん。小学校5年生になった子どもが、月刊マンガを買うようになり、友だちとの付き合いにもお金がかかり、気がついたら、お年玉も全部使ってしまっていたことを知りました。毎月の不足分をお年玉で埋め合わせる生活は、子どものためによくないと考え、「おこづかい改革」をすることにしました。おこづかいは、お金を使う練習とするためには、ある程度まとまった額を与えたほうがいいと言う武長脩行のぶゆき氏の話しを聞いて、おこづかいの基準は年齢×400円に。
 それまでの小学5年生なら、月500円から月4000円に、これまでの金額の8倍となる計算です。Aさんは子どもたちと一緒に、小遣いで買いたいもの、何のために貯金をしたいかなど、考えました。4つの約束を決めて、低学年は年齢×300円、高学年は400円で、おこづかいをスタートしました。

4つの約束
●こづかい帳をつける
●おこづかいをもらったらすぐ、1割以上貯金する
●おこづかいをもらったらすぐ、人のためのお金を別にする(献金)
●前月のこづかい帳の計算があっていたら、今月のこづかいをもらう

子どもたちも楽しそうにお金を管理

 子どもたちは、部活のため土日ごとに、スポーツドリンク代やバス代がほしいと言っていましたが、自分でおこづかいでやりくりするようになると、粉末のドリンクの素を買ってきたり、こまめに歩くようになりました。靴を新調したいと言っていた一人は、気に入ったものは4900円と手持ちのお金の倍でした。店のワゴンには安売りの靴もありましたが、履き心地が悪いと買うのを断念(兄からのお下がりをもらうことに)。後日、メーカー品のセールで、予算内で靴を新調することができました。

Aさんきょうだいが、おこづかいでまかされているもの
中学生:文房具、外靴、内靴、靴下、遠足のおやつ、部活の費用、ヘアカット代、献金。
小学生:文房具、外靴、内靴、靴下、遠足のおやつ、習い事のバス代、献金。

 Aさんは「お金を任せるようになってから、子どもたちはとても楽しそうに思えます。自分の靴や靴下のために、今月はいくら残したらどのくらいのものが買えるか、きょうだいで情報交換しあったりする姿を見ながら、与えられた額の中で楽しく工夫して暮らす知恵を身につけてほしいと思います」と語ります。(『婦人之友』2004年12号より)

Bさんの場合:子どもたちの性格に合わせて

 5人の子どものいるBさん、おこづかいの渡し方も子どもごとに違います。
長女には小学3年生からおこづかいを渡しました。中学3年生になる時に、自分にかかわるお金がどのくらいになるかを実感してほしいと、おこづかいのほかに、教育費5000円を渡すようになりました。月末には子どもから支出合計などを確認して、Bさんの家計簿に転記するという面倒はありましたが、長女は、お金を任せられた責任を感じて高校3年までこづかい帳をつけ続けました。短大生になってからは、学費と通学定期代のほかは、衣服費や雑費も含めて全部を任せてみました。長女なりに工夫してやりくりをしていたようです。
 高校3年生になった長男は、「自分の学校にいくらかかるのか、すぐにでてこんのはだめだなあ」と言いながら、おこづかいの予算を立てました。中学3年間は、教育費をまかせていましたが、管理が難しそうなので、高校に入ってからは、おこづかいだけに。受験生の長男は、ついつい買ってしまうマンガや小説も、勉強を妨げないように、計画的に購入したいと予算を立て、「経済を考えることは、時間を上手に使うことに役立つ」と言っています。そこで、おこづかいを2500円に、学校行事(交通費を含む)部活や問題集などの費用も含めて7400円を任せることにしました。
 中学2年の二男にはおこづかいの1200円だけを任せています。子どもが3人目になって、本人がその気になっていないのに、親が押し付けるようにやらせるのでは意味がないことに気がつきました。
 小学6年生の二女は、600円。「お金は使わないことがいいこと」と思っているので、必要なものには楽しみながら使うことを伝えたいと思っています。3歳の三女にはおこづかいはありません。(『婦人之友』2004年6月号)

まとめ:お金とこづかい帳は切り離せない

 最初におこづかいを渡すときのポイントは、お金だけポンと渡さないで、こづかい帳も一緒に渡しましょう。婦人之友社の「こづかい帳」には、毎月のお金の出し入れを記すほかに、1カ月のまとめの欄があります。使ったものの金額をメモするだけならどんなノートでもいいのですが、月末にまとめをすることで、子どもも多くの発見をするので、大切です。
 お金は、いつもほしいだけ与えられれば苦労はありません。限りある金額から何にいくら使うか配分しなくてはならない、という認識があればこそ、子どもはお金の管理を体験し、工夫していけるでしょう。


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