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読書録#3「脳はこうして学ぶ」スタニスラス・ドゥアンヌ

著者のスタニスラス・ドゥアンヌはフランスのコーレジュ・ド・フランスの認知神経科学の研究者である。彼のバックグランドは面白くて、学部で数学を学び、心理学で博士号を取っている。バックグランドからも想起されるが、数学を扱う脳の機能”数覚”や言語を代表とする記号操作に関心を持ち、脳画像を用いた研究を数多く行っている。

蛇足であるが、「偶然と必然」を執筆したノーベル賞受賞者のジャック・モノーの孫弟子に当たることを最近知って驚いた。

今回紹介する「脳はこうして学ぶ:学習の神経科学と教育の未来」だけでなく、「数覚とは何か?ー心が数を創り、操る仕組み」、「意識と脳ー思考はいかにコード化されるか」など複数の著作が翻訳されている。「数覚とは何か?ー心が数を創り、操る仕組み」に関しては数列の概念が元からどうして頭の中にあるのかを考えた修士時代にお世話になった。

今回読んだ本に戻ると、サブタイトルの「Why Brains Learn Better Than Any Machine... for Now」、日本語に訳すと「なぜ人間の子供は、”今の”AIより学ぶのがはるかに上手いのか?」という問いに本書の議論は集約されている。

本書の第一章は学習とは何かであり、機械のほうから定義される。ここで言う機械とは昨今伸展が凄まじい機械学習のことである。機械学習ではいくつかの学習の定量的な定義がなされている。第二章では子供の学習プロセスを脳画像研究の多くの知見が紹介される。これほどまで、体系的に脳画像を使った研究が子供の学習過程に踏み込んでるいることが分かった。第三章では、第二章のたくさんの実験的知見から抽出した子供の学習の4つの本質的な要素を紹介し、今の機械学習と比較する。多くの論文が紹介されており随所に知らない知見があって勉強があった。最終章の結論では現状の研究室テムに対して、蓄積され実用に耐えるようになってきた神経科学の知見の応用を紹介し締めくくっている。

最近、大学院生の研究を進める上での大学院教育に関わるようになったのだが、子供の教育に通ずるように感じた。

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