見出し画像

読書録#1「アカデミアを離れてみたらー博士、道なき道をゆくー」岩波書店編集部

「アカデミアを離れてみたらー博士、道なき道をゆくー」は自分より10歳ほど先輩の21人の主に理系博士取得者がアカデミアの「外」で奮闘する姿を自身で綴った編書である。

長い学生生活が終わり社会へと一歩を踏み出した自分にとって博士取得後の進路は身近で重要な問題だ。記事を執筆した21人の進路は、翻訳家・政治家・弁理士等自分の予想以上に多岐に渡るもので刺激的だった。テニュア(任期なしポジション)から民間に転身する体験談はこれまであまり聞いたことがなかったので新鮮だった。

恥ずかしながら、研究者から政治家に転身した嘉田由紀子さんを存じ上げながった。今の大学周りの仕組みを本気で変えるには政治家になって、人生を賭してやる気でやらないと変わらないという暫定的な結論に自分は至っているのだが、それを嘉田さんは15年前に実践されていた。

この10年でアカデミアの「内」と「外」の捉え方は随分変わった印象がある。いくつかの体験談を読んで、2010年くらいまではアカデミアの「外」に出ることは敗退の色がまだ濃かったように推察される。現在は分野にもよるが、情報系を筆頭に「内」と「外」の境界があいまいになっているように感じる。

執筆に選出されたことも影響していると思うが、結構な人が人生で博打を打っている。中にはリスクマネジメントを度外視したような、経験談もある。自分は結構守りに入っていたのではないかとハッとさせられた。時にはリスク度外視の博打をやる可能性も視野に入れた行動を取る選択肢を考えてみたい。

一番心をえぐられたのはあとがきだった。1991年「大学院生倍増計画」から1996年「ポストドクター等一万人計画」そしてアカデミアポストの枯渇。大学院生の大学離れを抑える索が提案されてる今、改めて歴史を振り返る必要がある。

このような大きな流れに揉まれながら、21人の先人はそれぞれの道を開拓してきた。近年の「内」と「外」の境界が10年前に比べるとあいまいになりつつあるのは、アカデミアの「外」という未踏の地へと果敢に飛び込み、今もなお歩み続けてる先人達のおかげなのかも知れない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?