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映画Stitching Palestineから伝わる刺繍のエネルギー

https://www.youtube.com/watch?v=OAcS7mGHXiw

5月半ばに映画Stitching Palestineの配信があり慌ててFacebookで視聴をお勧めした私。通算3回目の鑑賞になりました。今はこうしてパレスチナの活動をしているのですが大学時代にブルガリアに留学していた時期があって、そこのイスラム映画祭で初めてこの作品を鑑賞したんですよね。それが印象に残っていて、卒業論文を書く際の資料にとVimeoの有料版を購入して観ていたので3回目笑

公式のあらすじが素敵だったので織り交ぜながら紹介します。
パレスチナの12人の女性の人生の物語がこの映画を紡ぎあげていきます。自分たちの家族はどこからきて、戦争を逃れてどこへ逃げたのか。その後も転々と世界を放浪しながら、故郷への思いを抱き続けます。占領体制のもとパレスチナの出身地への帰郷が許されない女性、夫と離れ離れの女性、銃を手に解放運動に明け暮れた若き日々。それぞれの物語は一つの大きな織物を成しますが、パッチワークのように、独立した個人の語りでもあり続けます。パレスチナという故郷を取り戻すこと、自分たちの人生に降りかかっている不正義を是正すること、そんな思いを抱きながら、彼女たちは今日も生きていきます。


ご覧になる場合の注意:語りも交錯するわあまりにも何度も住む場所を移動するわで誰が誰だかややこしくなるのと、日本語字幕が無いのと、刺繍の扱いが劇中では刺繍としてだけではなく、女性の人生そのものを表していたりするのが、ちょっとわかりにくいポイントかなと思います。

それでは見た方の質問と感想です。4人でのシェアになりました。

Q.ディアスポラってなに?
ギリシャ語で「離散」。ユダヤ人が2000年以上昔に国を失って世界中に散らばったことを指しますが、パレスチナの人も自分たちを指して使うことがあります。研究者の間ではこの言葉を使うかどうかで判断が分かれます。いずれにせよ、強制的な力が働いて住んでいた場所を追われ、同郷の人たちもろともばらばらに散っていくイメージです。劇中で移動を繰り返している女性たちはまさにパレスチナのディアスポラの例ですし、本人たちがこの言葉を使っています。

Q.エルサレムに住むには特別なIDが必要ってどういうこと?
エルサレムはイスラエルの要に位置付けられていて、建前ではパレスチナ自治政府とイスラエルで半分に分けて統治しているのですが実際はイスラエルが幅を利かせ、その統治範囲は全域に及ぼうとしています。エルサレムのパレスチナ人人口を減らしたいイスラエル政府は、仕事や学業で長期に家を空けた場合、このエルサレムIDをパレスチナ人からはく奪しています。その基準はものすごく曖昧です。例えば、旦那さんは保持者だけれども奥さんは何度書類を出しても受理されないため、加入できる保険のランクが低いうえ毎月何かと膨大な書類作業が必要だというケースがあると参加者の方がシェアしてくださいました。IDの話はパレスチナの人といるとしょっちゅう耳にします。

Q.戦う女性のポスターと女性兵士のような人が出てきたが本人?
公式サイトによれば彼女はパレスチナの解放戦線に所属していたようです。劇中の女性のポスターや壁画は彼女本人を描いたものでした。(http://stitchingpalestine.com/women)

Q.登場するTwelve Windows of Palestineという作品はどうなったのか
2015年にテキサス州で展示されて以降のことは分かりませんでした。ちなみに12人女性のうち何人かはそのプロジェクトにも携わっていて、映画の構成要素として12の物語と強く結びつけられていますが、刺繍の作り手と劇中の語り手は別の女性たちです。

以下感想です。

Aさん
家を追い出される経験は日本にいるとなかなか想像が及ばないけれど、彼女らはそれからずっと住んでいた場所への愛着を持ち続けている。オレンジの逸話が印象的。自分のオレンジは仮住まいの土地ではなく、帰ることが出来ない元の家にあるのだと。既に家族がパレスチナを離れ、自身は別の国に生まれ育っても、やはり愛着を持ってパレスチナをまなざしている。その思いの強さに驚く。
ひとつひとつの逸話がとても心に残った。息子への思いを込めて母が作った、日の目を見なかった伝統衣装。それを贈られて、パレスチナに帰るまでは絶対に着ないと約束した女性。度重なる戦争でそのドレスも行方がわからなくなってしまった。
Aさん、Bさん共通
刺繍がどれほどすごい手仕事なのか、どれほどの手間をかけて作られているのかが伝わってきた。またその刺繍は精巧なだけではなく、縫っている間女性たちが抱えていた思いもそこに詰まっている。そういうことを考えると、本当に尊い仕事だし、最後に糸を抜いて完成させる場面は感動した。

最初にブルガリアで鑑賞したとき、私はパレスチナ刺繍の存在を知らなくて、だからこそすごくインパクトがあったのを覚えています。語りと音楽と刺繍の描写が相まって、その力強さに圧倒されました。悲しい逸話がたくさん出てきても決して後ろ向きではなくて、「私たちの声を聞け!」と言われているように感じたんです。刺繍文化への誇りも感じられました。

予備知識なしでもこれを読んでいただいたあとなら十分話が入って来るんじゃないかなと思いますし、突撃で見ても私の初回のように刺繍のインパクトに痺れること間違いなしです!映画祭で日本にも来るかもしれませんから、そのときには劇場でご覧になるのをおすすめします。

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架け箸はこれからも継続的にパレスチナを訪れ、日本に出回らない生の情報を発信したいと思っています。いただいたサポートは渡航費用や現地経費に当てさせていただきます。