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エッセイ

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2021年11月の記事一覧

ハイウェイ・ゴリラ

ハイウェイ・ゴリラ

高速道路。風を切って走る。
びゅん。
すると、左手に黒い塊が見える。
それは、巨大なゴリラだった。
英字の看板をかっしりと掴み、こちらを只眺めるゴリラ。幼い僕の心を、たった一瞬だけ、その黒の印象で一杯にしたゴリラ。僕がそのゴリラを指差して笑うと、母が、何か適当なことを言って、一緒に笑ってくれた様な憶えがある。

晴れた日の高速道路は特に気持ちが良かった。
視界の澄む心地、煩わしくない湿気の程度、陽

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進学の楽園

進学の楽園

進学校に通っている。
これは自慢でも何でもなく、寧ろ「嘆き」に近い。昨年、僕の通うその高等学校から複数人、日本の最高学府とされる「東京大学」の合格者が出た、と言う、どう見たってめでたい報せが舞い込んで来た。その瞬間に、彼等の功績と、自らの体たらくとを比較してしまったのがいけなかった。
あ、同じ人間で、同じ地域で、同じ学校に在籍していて、こんなに差ってつくんだ。僕の生き様って何かしらが足りてないんだ

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睡蓮と網膜

睡蓮と網膜

特段、芸術に造詣が深いと言う訳でもないが、あるとき美術館で目撃した、クロード・モネの絵画「睡蓮」のその一つには衝撃を受けた。
モネは所謂「印象派」の代表選手で、「睡蓮」は彼の代表作の一つである。即ち、そこで僕が見たものと言うのは、「ちょっと有名な絵」だったわけだ。「印象派」と言うものは、「目に映ったモノの印象を描く」と言うやつで、要するに「リアルじゃないけどなんか雰囲気でわかる」絵画のことを言う、

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