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アイデアとおみそ汁と、つづく日常

数年ぶりに病棟勤務をしていた時のことだ。


7時からの早番は忙しい
洗面タオルを渡す
トイレ介助をする
食前の採血
血糖チェック
インスリン注射
食堂への誘導、お茶の準備、配薬
合間のコール対応


8時ちょっと前
配膳車が到着する


食堂を照らしていた
やわらかな日差しは
いつの間にか
まぶしい日差しとなり
今日も暑くなりそうな予感が漂う


季節は初夏


8時15分




おはよう世の中
夢を連れて繰り返した
湯気には生活のメロディ



大体NHKがついている食堂のテレビ
朝ドラの主題歌
星野源の「アイデア」が流れる


カチャカチャ
スプーンが器に当たる
紙パック牛乳を飲む音
おみそ汁のかおり


朝からスーパーカップバニラ味を食べるおじいちゃん
アイスはスーパーカップ、バニラ味と決まっている


ちょっと食べて
もう、たくさん、といった表情のおばあちゃん


隣の席のおじいちゃんに世話をやくおじさん


それぞれのひとときを見守りながら
わたしもしばし小休憩





つづく日々を
奏でる人へ
すべて越えて届け



今日も明日もあさっても
くりかえしつづく日々


それぞれの日常
それぞれが奏でる音は
メロディとなり
エールとなる
そんな予感がする
朝のひととき


ありふれた光景
そんな日々を愛おしく感じ
そんな日々を懐かしく思う今


だから
アイデアを聞くと
食堂の光景がよみがえり
おみそ汁のかおりがしてくるのだ。


そして
気付いた。


私はその時間が好きだった、ということを。


その時間が必要だった、ということを。




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