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『人間失格』の読書感想

1948年に発表された太宰治の代表作のひとつ、『人間失格』の感想です。
有名作で青空文庫にもなっていることから、ネタバレを含んで述べています。
※個人の感想です、ってやつです。


以下、ネタバレ注意


三枚の写真と、それらに添えられた葉蔵による手記。
自身が記したというノートの断片から、男の生涯を垣間見る。

葉蔵は幼少の頃から、人間の生活というものに関心を持てずにいた。
➡️世話を焼かれると、「生きる」ことを押し付けられているように感じ、息   苦しさに悩む。家族からの視線(機嫌を損ねないこと)が重圧となり、自虐的な性格に拍車を掛けたのか。

怒られでもしようものなら、自分が人間の「真理」から外れているのだと恐怖に震える。
➡️周囲は正しい営みを送っている(と彼らは思い込んでいる)ので、間違えてしまわないよう必死に兼ね合いをとる。自分がひどい思い違いをしているのではないかと考え込む。

道化を演じて、人間との関わりを保とうとする。
➡️人を騙している、欺いていると自覚しながら世間に馴染もうと努力する葉蔵。しかし、警戒していないときに受けた指摘によって、激しい後悔と恥に襲われる。


酒を覚えると、次第に溺れるようになり、将来や人間関係から目を背けて逃げ出す。
女遊びをしていたころに身に付いた、女性が寄り添いたくなる雰囲気。
もともとの美貌と合わさって、より女性を惹き付けるようになる。

取り入るのが上手いのか、逞しい女性が好きになりやすいタイプなのか…。

私はどちらかと言えば葉蔵側の人間かな。
しかし、こんな感じではないとも言いたくなる、強烈なひねくれ具合。
考え方に共感できる箇所はあるけど、外側から見るとエグいもんですね。
外れるのって怖いよ…。

葉蔵は「人間らしさ」を気にしすぎていたんだろうか。
生活するために割り切ってしまえる器用さ、もしくは不器用さ、が受け付けなかった。

これは、私の人生にとってのテーマでもある。
美貌も要領のよさも持ち合わせていない分、私の方が難題な気がしてきた。

いやあ、2022年の幕開けにピッタリな小説を読めました。

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