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カスタマーサクセス主導のアウトカムの創り方

こんにちは!カスタマーサクセスはライフワーク、かじ(@kajicrypto)です。

LayerXではプロダクトマネージャーを務める今も、カスタマーサクセスという概念ないしビジネスアプローチについてはライフワークとしてその研究と啓蒙を推進しています。

2024/8/21 CSカレッジ勉強会

今回は2024/8/21にCSカレッジによって主催された勉強会「カスタマーサクセス主導のアウトカムの創り方」で機会をいただき話したことを文字起こしし公開いたします。


内容について

ここ2年ほど日本のCS界隈で頻出する"アウトカム"というよくわからない概念について、その解像度を上げるためのひとつの視点と、そこに対してCSがどう力を発揮できるのかをお話しました。

なお、勉強会では私の前に現役CSのみなさんが4人同じテーマで話すということだったので私はややCS本流から逸らしてプロダクトマネージャーとしての立場を織り交ぜて話しています。

CSとしてアウトカムをどう提供するか深く考えている方に対しては抽象的で物足りない話だと思いますが、アウトカムはCSに限らずビジネス全体で設計して提供すべきだということが伝われば幸いです。

ひとこと結論とありがたいお言葉は山田ひさのりさんが書いてくださっていました。ありがとうございます。

ここから先は文字起こしです。動画をtl;dvでテキストに起こしてChatGPTに校正してもらいました。

結論

CS主導でアウトカムをどう出していくかという話かと思うんですけれども、先に2つ、今日お話ししようと思っていた結論をお伝えさせていただきます。

1つ目が、アウトカムという言葉がこの2年ぐらいCSの中で「しっかり出していこう」ということで使われていると思うんですが、この「アウトカム」という言葉、よく分からないですよね。英語だし、日本語にしたらただの成果かもしれないし、よく分からない。

なので、この言葉の解像度を上げようという話なんですけれども、アウトカムには「どれぐらい経営指標に資する成果か」という観点でレベルがあると思っています。

そして、このレベルは、私達が出そう、提供しようと思っているアウトカムのレベルと、お客様が期待しているアウトカムのレベルが合っているということが非常に大事だと思っています。アウトカムの話をするときに、お客様がどのレベルのアウトカムを求めているのかというのを前提に理解しながら設計をしていこうというのが1つ目の話です。

それから2つ目の話ですね。お客様が求めているアウトカムと自社が提供するアウトカムのレベルを同じだけ提供できるようになってきたら、今度はより長い期間お客様に使っていただいてLTV(ライフタイムバリュー)を伸ばしたり、エクスパンションさせていくために、より高いレベルのアウトカムを提供していくという方向に活動が向かっていくはずだと思います。

このとき、今回のテーマは「CS主導でどうやってアウトカムを提供するのか」という話なんですけれども、私はより高いレベルのアウトカムをすべてのお客様に均質的に提供しようと思うと、それはCSの活動では実現できなくて、プロダクトを通じて提供するものだと思っています。

ただ、このプロダクトを通じて高いレベルのアウトカムを提供しようと思ったときに、CSの皆さんが現場からお客様の課題や要望、新しいプロダクトの種を拾ってきてプロダクトに実装していく流れを作ることが非常に大事ですし、それはCSの皆さんが現場にいるからこそできることだと思っています。

より高いレベルのアウトカムは、プロダクトを通じて提供していくんですけれども、それをCSが主導することで実現していこう。CSがプロダクトフィードバックループをとにかく回していくことが、プロダクトの成長にとってとても良かったという話をしようと思っています。

結論2つお伝えできましたので、ちょっと疲れたなという方は、飲み物を飲んだり、ゆっくりしたりしながら聞いてください。

”アウトカム”の解像度を上げよう

1つ目の話ですね。アウトカムの言葉の解像度を上げようという話なんですが、アウトカムには種類があり、先ほどお話しした通り、それぞれの種類に対してレベルがあると思います。

例えば、うちのプロダクトが提供できるアウトカムにはどんなものがあるかをブレストしたり、お客様に聞いていくと、まず種類が出やすいと思います。エンプラのお客様だったらこうだよね、SMBのお客様だったらこうだよね、1個のプロダクトを使っているお客様はこうだよね、うちのフルラインナップを使っているお客様だったらこうだよね、みたいにお客様やセグメントによって求められるアウトカムの種類がいろいろ出てくると思います。

ただ、それぞれのアウトカムに対してお客様がどの程度まで求めているのか、期待しているのかという点でも解像度を上げることが非常に大事だな、と最近感じています。

例を挙げます。(LayerXが提供する法人支出管理SaaS)バクラクシリーズでは「バクラク請求書受取」というプロダクトが1つ目のプロダクトになりますが、内容としては取引先から経理の方に届いてきた請求書の月次処理を効率的に行えるというサービスになっています。

一番低い、アウトカムとは呼べないかもしれませんが、機能そのものが実現するという意味で一番低いレベルのものとしては「月次の経理業務がミスなく効率的に終わる」というものがあります。

これが1段階上がると「月次処理を5営業日以内に締められる」とか「3営業日以内に締められる」など、会社が目標としている月次締め処理のスピードを実現できる、ということがあります。

もう1段階高くなると「月次処理をスムーズに期限内に終えられる、しかも短い時間で終わることによって残業代が減った」とか「事業は拡大しているけれども、人を増やさずに済んだ」といった現実的なコスト削減効果が出てくるという段階があります。これは結構アウトカムっぽいですよね。

さらにもう1段階上がると、財務関連のデータが3営業日、5営業日で早く確定するようになったことで、経営者の経営判断を早めることができた、というのが4段階目だったりします。

そして5段階目は、経営者が経営判断を早くできるような環境が整ったことで「売上が上がった」「費用が下がった」「利益が増えた」「従業員満足度が上がった」といった、重要な経営指標に成果が出た、という5段階目くらいがあると思っています。

で、フラットに自分たちがどこまで提供できるかを考えると、多分3段階目くらいだと思うんです。つまり、コストがしっかり減った、ROIが合ったというところだと思います。

ただ、お客様がどのレベルまでを導入する時に求めているか、また2年目、3年目と経営を進めていく中で、より高いアウトカムを求めるようになってきているのかは、状況次第だと思います。特に導入したてのお客様、初年度のお客様については、まずは機能を使って低レベルのアウトカムが出れば十分かもしれません。

しかし、私達がそう思っていたとしても、お客様側はマーケティングのメッセージングや、ISの電話での応対内容、FSでの説明などを通して、このプロダクトに何を求めるか、「これだけの金額を支払うなら、こういう経営成果が出たらいいよね」という目線をそれぞれ期待値として持っていると思います。

そのため、私達が「ここまででいいよね」「ここまではCSで今できるよね」と思っている基準と、お客様が求めている基準が違う可能性があります。そして、お客様が「アウトカムが出ている」と感じるかどうかは、お客様の基準と私達が提供できる基準が合っている、もしくはそれを超えている時に感じてもらえるものだと思います。

この差分を測ることなく「自分たちのプロダクトやCS体制で今はここまでできるよね」「ここまでいったら許してもらえるんじゃない?」と思ってしまうと、一部のお客様にとってはそれが不足していたり、あるいはマーケティングが発信しているメッセージングやタグラインとCSが提供しようと思っているものに差が出たりしてしまうかもしれません。

なので、アウトカムを定義するというのは、CSの中でどれくらいのアウトカムをどうやって出していくかという話がメインになるとは思いますが、それが組織全体のお客様に対するメッセージングや、プロダクトが提供したいビジョンと合っているのかどうかもしっかり確認していかないといけないなと最近感じています。特に売りの活動が強くなるほど、この視点がずれやすいものだと思います。

より高次なアウトカムを提供するために

2つ目の話です。その辺をしっかりお客様の認知を取りつつ調整して、お客様が求めるアウトカムと自社が提供するアウトカムを合わせることができたら、今度はより長く使っていただいたりエクスパンションさせていくために、CSの皆さんはNRRを上げにいく、つまりそのためにより高いレベルのアウトカムを提供する方向で活動が進んでいくと思います。

その時に、私はプロダクトマネージャーなのであえてこのポジションで話しますが、アウトカムを提供するのはCSではなくプロダクトだと思っています。

なぜなら、SaaSの人員構造や費用構造、昨今の資本効率性が求められるという流れの中で、お客様に対してより高いレベルのアウトカムを提供するためのハイタッチや1:1でコンテンツを届けるような活動をやり切るための人員を揃えることが難しくなっていると思います。

これは、人件費や資本効率の観点でどうしても難しい構造になっているため、CSだけでより高いレベルのアウトカムを出していこうとすると、一部のプロフェッショナルサービスを契約したお客様にしか届けられない、または一部の特定のスキルを持つCSMが担当するお客様にしか届かないといった制約が絶対に生まれます。

これは構造的な問題なので、すべてのお客様により高いレベルのアウトカムをプロダクトを通じて標準的に届けることができるように、プロダクトを進化させるということが正しいアプローチではないかと考えています。今日はCS主導でどうやってアウトカムを創出するかという話ですが、私はCSではなく、プロダクトからアウトカムを提供するべきだと思っています。

ただ、だからといってCSが何もできないわけではなく、非常に重要な役割を担っていると思っています。プロダクトでより高いレベルのアウトカムを出せる機能を作る、もしくはその前後の業務プロセスをカバーする新しいプロダクトを提供する、あるいはBPaaSやBPO事業の立ち上げなどを通じて、より高いレベルのアウトカムを提供するためには、どんなものを作ったらよいのか、どんなサービスを提供したらお客様にそのアウトカムを提供できるのか、それを特定するためにCSの皆さんが現場で拾ってくる情報が非常に重要です。

CSがプロダクトフィードバックループを回すというのは、マーケットインでプロダクトを作るプロセスにおいては、非常に効果的な方法です。プロダクトアウトでアイデアを基にプロダクトを作る会社であれば関係ないかもしれませんが、お客様に寄り添って、マーケットインのアプローチで本当にお客様の課題を解決するプロダクトを作ろうとする場合、現場で動き、1対1でお客様と話し、コンタクトを取っているCSMの皆さんが、現場の声を拾ってくることが極めて重要です。

例えば、今のプロダクトではまだ満たせていない前後の業務プロセスについて細かくヒアリングすることで、手作業が残っている部分や、他のプロダクトと当社のプロダクトの間で発生している業務プロセス上のギャップを把握することができます。

これらの情報をもとにプロダクトフィードバックループを回していくのは、CSの皆さんにしかできない役割だと思います。CSはプロダクトマネージャーがマクロの情報とミクロの情報を基にロードマップを作る際に、重要なミクロの情報を集めてくる、プロダクトマネージャーの半分を担う存在だと思っています。

ですので、最終的にアウトカムをより高いレベルでより標準的にお客様に提供しようと思うと、プロダクトを通じて返すことになると思いますが、どうやってそのプロダクトを通じて返していくのか、どんな機能をつけるのか、どんなお客様の課題が現場にあるのかを、CSがプロダクトフィードバックループを回しまくることが、アウトカムをCS主導で創出する上で、一番効果的な施策だと考えています。

具体的にそれをどうやっているのかについては、時間が足りないので、また皆さんとお会いする機会があればぜひお話させてください。またX(旧Twitter)のDMを常に開放していますので、ご連絡いただければ幸いです。

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