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ベジ議連設立総会リポートその4

ベジ議連設立総会リポートその1

ベジ議連設立総会リポートその2

ベジ議連設立総会リポートその3

行政側出席者によるコメント

 これまでの各団体からの話を受けて、行政側出席者からそれぞれコメントが出されました。この時点でかなり時間が押しており、皆さん要点のみのコメントだったため、資料が配布されたものについては資料で内容を補っています。各省庁の現時点での取り組みを知ることができた他、ベジ・ヴィーガン対応にあたっては、消費者庁や農林水産省、観光庁、観光省といった省庁が関係するということがわかり、勉強になりました。

【消費者庁】

 五十嵐麻衣子・食品表示規格課課長

・消費者庁が所管する食品表示法では食品を摂取する際の安全性の確保を行うため、アレルギー表示などを基本としつつ、たとえば原産地表示のような、多くの消費者が知りたいと思う、国民的合意がとれた情報について、消費者の方が適切に食品を選択できるような表示を義務付けており、違反した場合は罰則を伴います。
・ 今お話を聞いていると ベジタリアン・ヴィーガンにはいろいろな考え方があって国際的基準も統一されたものがないという認識でおります。そのような中で表示を義務付けというのは現時点では慎重にしたいと考えています。
・ 罰則を伴うので、たとえば加工食品成分の検証などで確認がしっかりできないと罰則ということはなかなか難しい。勉強させていただきながら慎重に考えていきたいと思います。

農林水産省 

新藤光明・食料産業局食文化市場開拓課外食産業室室長

「ベジタリアン・ヴィーガンに対する対応について」という資料の他、「飲食事業者のためのインバウンド対応ガイドブック」(2016・2017・2018年)が配布されました。ウェブでも公開されている「ガイドブック」にはデータや事例集、指差し会話例(多言語対応)などがコンパクトにまとめられており、実際に現場で対応にあたる飲食店などに非常に役立つ資料ではないでしょうか(最新の2018年版は農水省のサイトからダウンロードできます)。また、農水省では全国でセミナーを開催し、飲食事業者等にインバウンド対応に関する情報提供を行っています。

・ 正直に申し上げるとベジタリアン、ヴィーガンに特化した取り組みというのは今の所やっておらず、飲食業のインバウンド対応のひとつのトピックスとして取り上げている状況です。
・市場の規模感としては、訪日外国人の規模は直近では3109万人となっており、その消費額は4兆5千億円を超えています。買い物代の内の約2割が食品関係で約3千億円と推測され、外食に約1兆円が消費されているのと合計すると、食関係のインバウンド消費額は約1.3兆円ということになります。日本国内の外食産業の市場規模は約25兆円台で推移しており、外食産業の4%弱がインバウンド需要ということになっています。
・農水省では3年間期間限定のプロジェクトとして、中小企業の飲食業担当者が簡単に読めるようなインバウンド対応の冊子を作成し、各年それぞれで約2万部発行しています。この冊子の中でもベジタリアンについて触れていますが(2016年版 8Pに「外国人の多様性を知る」という項目を設け、9Pの「食文化・食習慣について」で様々な宗教上の食のルールやアレルギーと共にベジタリアンや五葷について説明)、それ以上の深掘りはしていません。

観光庁

片山敏宏・外客受入担当参事官

「ムスリムに係る観光庁の取組について」「ムスリムおもてなしガイドブック」「平成30年度 インドからの訪日誘客・受入環境整備のための検討調査結果(抜粋)」の資料が配布されました。先行しているムスリム対応は、今後ベジ・ヴィーガン対応をするときの参考になりそうです。コメントで言及されているJNTOホームページはこちらです。

・ムスリムの方への対応については、ムスリム旅行者に配慮したレストラン、ホテル、礼拝場所などを盛り込んだJNTO(日本政府観光局)ホームページを公開している他、「ムスリムおもてなしガイドブック」を作成・発行しています。また、多様な宗教・生活習慣への対応力を強化するため、宗教や文化により食事等の生活習慣に配慮が必要となる訪日外国人等の旅行者が、安心して快適に滞在できるよう、受入に必要な基礎的な知識や実践的なノウハウの習得を促す地域の取組みに要する経費の一部について支援しています。セミナーも各地域でやっているので、ぜひ活用してほしいと思います。
・今後インドは非常に大きな市場になると考えており、実際、訪日インド人は年々増加しています(年平均成長率はプラス10.4%)。ベジタリアンが多い国なので、調査をしました。各国でもインド人旅行者向けのホームページを設置し、インド人向けのレストランのリストを提供しています。まだ数は少ないですが、日本も同様にJNTOのホームページで飲食店の情報提供をしています。また、2017年にインド・ニュー・デリーに政府観光局事務所を設置し、インド人向けの訪日プロモーションを進めているところです。 

環境省 

吉川圭子・地球環境局総務課脱炭素化イノベーション研究調査室室長

「食事」と「気候変動対策」についてという資料が配布されました。コメントの中にある「MY行動宣言」については、こちら

・食事と気候変動対策は密接に関連しています。8月にまとめられたIPCC土地関係特別報告書でも、グローバルフードシステム(食料の生産、加工、流通、消費などを含む食料生産・製造の前後に行われる活動)からの排出量は、人為起源の正味GHG排出量の21〜37%と報告されています。また、食生活の変化による総緩和ポテンシャルは2050年までに7〜70億tCO2eq/年と推定されています。アメリカの研究者らによる「Drawdownプロジェクト」では、気候変動アクションの削減量のトップ10のうち3つは「食糧廃棄量の削減(3位)」「植物性中心の食生活(4位)」「林間牧草(9位)」と「食」に関連するものです。植物性中心で、地域産・旬の素材を活用した食事は温室効果ガスの削減に寄与すると思われます。
・食料の生産・輸入段階のCO2排出では、生産段階のCO2排出は食材によって異なり、素材が旬のものでない場合は追加的なエネルギーが必要な上、遠隔地から素材を輸送する場合には追加的なエネルギーが必要になります。よって、旬のもの・地産地消が重要ということになります。また、バーチャルウォーター(食料を輸入している国において、その輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したもの)の問題もあり、我が国は食料という形で、大量の水を輸入しています。
・環境省でも、生物多様性との関わりを日常の暮らしの中でとらえ、実感し、身近なところから行動することを促すべく、普及啓発として「MY行動宣言」の取組を実施し、その中で食の地産地消を推進してきました。

東京都庁 

 2020年オリンピック・パラリンピックを控え、東京都では急ピッチで対策が進められているようです。

松本明子・産業労働局観光部部長

・ 食は旅先での大きな楽しみのひとつでございますので様々な国や地域から訪れる旅行者の方々に安心して東京の食を楽しんでいただけるよう環境整備を進めております。具体的には都内の事業者の訪日観光客受け入れ環境の向上を促すため、今日ここにいらしている方々にもご協力いただきながらセミナーを開催したり、具体的なご相談に応じる専門家の派遣、飲食店と食材を扱う流通業者とのマッチングを進めるといった取り組みをしています。
本年度はヴィーガン・ベジタリアン向けの飲食店の紹介パンフレットも新たに作成する予定です。今後も皆様のご協力をいただきながら取り組みを進めて参ります。

 龍野功・農林水産部担当部長

・ 私どもの部では畜産振興もやっておりますので、ヴィーガン料理に特化した対策は取りにくいのですが、昨年度は都が主催する食のイベントでヴィーガン料理を紹介しました。多様な食文化のひとつということで、今後もこうしたことでヴィーガンの後押しをしていけたらと考えています。

 リポートは出席議員のコメントを紹介するその5で最後になります。


読んでいただいて、ありがとうございます!