見出し画像

ベジ議連設立総会リポート その3

ベジ議連設立総会リポートその1

ベジ議連設立総会リポートその2

ベジ・ヴィーガン関連団体からの要望

 設立総会には10のベジ・ヴィーガン関連団体も出席し、それぞれ持ち時間2分で要望を述べました。実際には現在日本に10以上の関連団体がありますが、私がベジタリアン・ヴィーガンに関わり始めた20年前には日本ベジタリアン協会しか関連団体はなかった(グリーンピースを除く)ことを思うと、日本でもベジ・ヴィーガンの活動は着実に盛り上がっていることを実感します。

画像1

 1993年に歯学博士の垣本充会長他によって設立され、大阪に本部があるNPO法人日本ベジタリアン協会は、IVU(国際ベジタリアン連合)に加盟している日本で唯一の団体です。総会では、垣本会長が日本ベジタリアン学会の高井明徳会長と連名で要望を読み上げました。(詳細については、ベジ協のサイトに掲載されています。)英国やEUのガイドラインを挙げながら、「国際基準をベースにした、政府による早急なベジタリアン・ヴィーガン認証のガイドライン作り」を訴えました。

画像3

 NPO法人ベジプロダクトジャパンの川野陽子代表。ベジプロは2013年に川野代表が在籍していた京都大学の学生食堂にベジ・ヴィーガンメニューを導入する活動を始めたことをきっかけに、現在は東京に拠点を置いて、ベジ・ヴィーガン商品導入のコンサルティングやベジ・ヴィーガン認証ベジプロのサイトで公開されている文書もご参照ください)、東京や京都のベジマップ制作等を行っています。

 ベジタリアン・ヴィーガン需要が日本でも高まっていることを受け、1.国内の現状および課題、国際状況の把握、2.事業者の方へのベジタリアン・ヴィーガンに関する理解の促し、3.ベジタリアン・ヴィーガンの商品やメニューが増えるための支援 がベジ議連に対しての「期待・要望」として挙げられました。(ベジプロのサイトには、総会当日のリポートが掲載されています。)議連の主な取り組みのひとつである認証制度についての意見表明もあり、欧米各国のヴィーガン基準・認証の例をまとめた資料も配布されました。

 ベジ・ヴィーガン認証については、GMO(遺伝子組み換え作物)やコンタミ(この場合は食品生産・製造過程における動物性物質の微量混入)がひとつの論点となっていますが、日本の消費者あるいは訪日外国人がベジ・ヴィーガン認証マークに何を求めているのかを見極めることが今後のガイドライン作りにあたって必要になってくるでしょう。

画像4

 ミートフリーマンデーオールジャパン事務局長の小城徳勇さん。内閣府職員の立場から内閣府職員食堂ヴィーガンメニュー導入を実現させるなど、様々な分野でベジ・ヴィーガン環境の向上をはたらきかけています。

 ミートフリーマンデーオールジャパンからの提言は、1.いわゆる「ベジ・インフラ」の整備(飲食メニューや食品等へのベジタリアン/ヴィーガン表示の明確化、適切なベジ対応に向けた啓発・指導、ガイドマップ作成等)、2.ベジタリアン/ヴィーガン対応にかかる公的助成制度の整備、3.関係省庁及び国会議員会館の構内食堂でのベジメニュー導入、4.環境行政にベジタリアン/ヴィーガンの視点を導入 の4点です。

 2の「公的助成」については、やはりインバウンドで注目されているハラルが農水省、観光庁、文京区、台東区で認証マーク取得費用などが助成されていることを挙げ、同様の制度をベジ・ヴィーガンに適用するよう求めました。内閣府食堂での取り組みを踏まえた3の「ベジ食堂」での「まず隗より始めよ」という意見には説得力がありました。内閣府食堂は基本職員しか利用できませんが、東京都庁や帯広市役所の食堂でミートフリーランチが週1で提供されています(私も何度か都庁のヴィーガンランチを食べたことがありますが、コスパも良く、とてもおいしいです!)。松原議員からも「構内食堂での取り組みについては実現させたい」とのコメントがありました。

 4では、ドイツの環境省が既に公式行事にベジメニューを取り入れていることを挙げつつ、食事と気候変動は密接に関係しており、キャンペーンの景品などに肉乳製品ではなくベジ・ヴィーガン食品を使用するよう求めました。当日の模様については、ミートフリーマンデーオールジャパンのFacebookページでもリポートされています。

画像5

 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンスタッフ(食と農業担当)の関根彩子さん。「気候危機を押し進めている森林破壊と食肉生産」と題した資料を配布し、ICPP(国連の気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書(国際連合日本センターによるプレスリリース和訳はこちら)をベースに、生物多様性も含めた地球環境問題の観点からベジタリアン・ヴィーガン推進を訴えました。資料には「肉・乳製品の生産および消費は、人為的な温室効果ガス排出量の増加や土地の劣化、森林破壊を引き起こしており、とりわけ所得の高い社会では食生活を直ちに変更する必要がある」とありますが、参考までに、特に欧米では環境問題を理由にベジタリアンやヴィーガンになる若い世代も増えています。

画像6

 グローバルメディア代表の利根川正則さん。「Delicious Japan(デリシャスジャパン)」というフリーマガジン(年2回日米で発行)で食とライフスタイルの情報発信を行う他、フーデックスジャパンや国際ホテルレストランショーなどの大規模な展示会でナチュラルフードやオーガニックフードのコーナー立ち上げに関わっています。国際ホテルレストランショーでは、グルテンフリーやベジ、ヴィーガンに着目したレシピコンテストも行われています。利根川さんの話の中では、「昨年3100万人に上った訪日外国人の内、ベジタリアン、ヴィーガンは5%弱」という数字も出てきました。

画像7

 東京ヴィーガンミートアップという約8000人のコミュニティー団体オーガナイザーのナディア・マケックニーさん。何千人というヴィーガンの声を聞いてきたというナディアさんは、「日本はヴィーガンにとってはバリアフリーではない」「世界の他の国と比べて日本のヴィーガン対応はとても遅れており、ヴィーガンの観光客は非常に困っている」という厳しい意見を述べました。たとえば、他の国では普通のレストランのメニューでもベジタリアンということがわかるマークがついていたり、普通のスーパーやコンビニでヴィーガンの商品がすぐみつかるのに、日本はできない、ということがあります。私の経験からも、普通にベジマークがあってレストランやスーパーなどで選べるというのは20年前のアメリカで既に普通のことでした。

 ナディアさんからの状況改善への解決策案は、1.日本の企業や店舗に向けて、日本人・外国人を問わず動物性の食品を食べない消費者がいることを周知する(周囲に隠している日本人ヴィーガンも少なくない印象がある)、2.消費者にヴィーガンの選択肢を与えるため、明確に表示するよう企業や店舗に求める、3.企業は店舗に、ヴィーガンが食べるものと食べないものを周知し、どのように既存メニューを変えて対応するか提示する、4.ヴィーガン製品の市場が今後急速に伸びることを日本の企業に周知する、5.動物性由来の素材を使わず、動物実験をしていないクルーエルティーフリー(=残虐性なし)の認証と需要が化粧品やトイレタリー用品、家庭用洗剤といった分野で求められ、増えていることを産業界に周知する、6.ゆくゆくは現在の食品表示方法を見直し、動物を原料に派生した原料が含まれるかどうかまで、消費者に分かりやすく表示する、というものです。「海外から来るヴィーガンの観光客も日本に住むヴィーガンも求めているのは同じことです。私達が望んでいることはけっして難しいことではありません。他の国ではあたりまえになっている、動物性食品が入っていないオプションがほしいのです」というナディアさんの意見に、議員の皆さんも真剣に耳を傾けていました。

画像8

 ナディアさんからは「日本ヴィーガン表示&選択肢向上プロジェクトJapan Vegan Labeling & Options Project to 消費者庁」に賛同する5600人の署名が添えられた要望書が河村代表に手渡されました。

画像9

 ㈱フレンパシー/Vegewel代表の播太樹さん。「食のバリアフリー」を企業理念に2015年に設立された㈱フレンパシーでは、ベジ・ヴィーガン・グルテンフリーなど様々な食の制限に対応できるレストランの検索サイトVegewelを運営する他、飲食店や宿泊施設を対象としたヴィーガン対応のコンサルティング事業、自治体と協働してのベジタリアン対応推進などを行っています。フレンパシーのサイトにも設立総会リポートが掲載されています。ちなみに、Vegewelでは現在1400件のレストランがヒットするそうですが、日本のベジタリアン・ヴィーガンなら一度はVegewelの情報のお世話になったことがあるのではないでしょうか。

 播さんからの提案は、1.全国統計調査の実施(事業者と話をする中でベジタリアン対応を足踏みする理由は集客効果、費用対効果がわからないから)、2.オンライン学習コンテンツの整備(興味はあってもセミナーに来られない事業者や従業員も多いため)、3.幅をもたせた統一マークの選定(各事業者の実情に合わせて、たとえば予約をしてくれたら対応できるなど、ある程度の幅をもたせた統一マークを作る) の3点。現場の状況を良く知る播さんならではの提案ではないかと思います。

画像10

 NPO法人ヴィーガン認証協会代表理事でモデルの室谷真由美さん。10年以上ヴィーガンを実践する室谷さんは、自身で開拓した2180軒以上のヴィーガン対応店舗を紹介するサイトを構築中で、英語だけでなく訪日台湾人向けの情報提供を進めています。日本語がよくわからない訪日外国人にマークは必須という考えから、基準を満たした店舗に対しては商標登録を完了した認証マークを無償提供する予定です。室谷さんからは「訪日台湾人観光客のインバウンドにも対応した認定制度およびメニュー充実の必要性」と題した資料が配布され、「素食」と呼ばれる五葷を抜いた動物性食品を食べない訪日台湾人は年間64万人程度存在しているが、特に地方都市でふさわしい飲食店がみつけられずにコンビニのおにぎりで済ましているといった報告と共に、訪日台湾人ベジタリアンへの対応の必要性が訴えられました。議員から「五葷ってなんですか?」と質問が上がりましたが、五葷はネギ、ニラ、にんにく、らっきょう、たまねぎなどを指します。

 室谷さんと議連発起人のひとりである松原議員との対談も公開されています。

画像11

 2015年に設立された日本エシカルヴィーガン協会の共同創設者で副代表・東京支部長の山路ケンさん。タイトル画像は山路さんから当日配布された資料を撮影したものです。10団体の最後に登場ということで「皆さんが提案された内容に類似しますが」と前置きしつつ、「ヴィーガン・フレンドリー」が実現する新時代の〈食の多様性〉という提案書を元にした提案が行われました。1.ヴィーガン・フレンドリーな飲食店を増やすことで、〈食の多様性〉を確保(日本中の飲食店にヴィーガンオプション導入を目指す)、2.飲食店に、菜食者が様々な理由で実践していることを周知(健康理由とは限らない)、3.食事ガイドラインの改定(学校給食やアスリート食などに取り入れやすくなるよう、食事摂取基準に菜食情報が必要)、4.海外との連携(海外サイトや団体との連携)、という目標が示されました。特に3は他団体の提言にはなかった視点で、今後ベジ・ヴィーガンの裾野が広がっていく中では必要なことだと思います。実際、海外には「あえてヴィーガンを選ぶ」ヴィーガンのアスリートも多数存在し、好成績を上げています。

 多様性ということでは、精製過程で骨炭を使った白砂糖パーム油の問題についての言及もありました。パーム油自体は植物性ですが、生態系の破壊やオラウータンの生息環境を奪っているなどの問題から、パーム油を避けるヴィーガンも増えています。単に「植物性だからOK」とは言えない難しさがありますが、「なぜヴィーガンなのか」という点を理解することが、消費者が満足できるヴィーガン対応につながるのではないでしょうか。

 続けて、行政側からのコメントをまとめます。

ベジ議連設立総会リポートその1は、こちら

ベジ議連設立総会リポートその2は、こちら

ベジ議連設立総会リポートその4は、こちら

ベジ議連設立総会リポートその5は、こちら


読んでいただいて、ありがとうございます!