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『女生徒』太宰治 「全女子におすすめ」と、確信して

このnoteは、まだ本を読んでいない人に対して、その本の内容をカッコよく語る設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『女生徒』太宰治

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【太宰治の作品を語る上でのポイント】

①「太宰」と呼ぶ

②自分のことを書いていると言う

③笑いのセンスを指摘する

の3点です。

①に関して、どの分野でも通の人は名称を省略して呼びます。文学でもしかり。「太宰」と呼び捨てで語ることで、文学青年感1割り増しです。

②に関しては、太宰治を好きな人が声を揃えて言う感想です。「俺は太宰治の生まれ変わりだ」とまで言っても良いです。

③に関しては、芸人で文筆家の又吉直樹さんが語る太宰治の像です。確かに太宰治の短編を読むとユーモアがあって素直に笑えます。


○以下会話

■乙女にオススメの小説

 「女の子が読むべき小説か。そうだな、太宰治の『女生徒』がオススメかな。太宰は『人間失格』が有名だから、暗くて怖いドロドロしたイメージがあるかもしれないけど、軽くて読みやすい小説もたくさん書いてるんだ。その中でも女の子が主人公の小説が多くて、その女の子の心情描写がめちゃくちゃ上手なんだよ。太宰は当時女性からモテモテで、結婚してたのに愛人が沢山いて、しまいには愛人と心中してるんだ。そのくらい女性の心が分かる人なんだ。だから、太宰は女の子を書くのが得意なんだよ。

■心が豊かな女の子の平凡な一日

そんな太宰が書く『女生徒』は、10代の一人の女の子の朝起きてから夜寝るまでの一日が書かれている短編小説なんだ。何の変哲も無い平凡な一日なんだけど、女の子の心の中はちょっとしたことで沈んでは浮いて右に行って左に行って、沢山の思いがめぐるんだ。だから、その女の子のフィルターを通した世界を見ると、こんなにも美しい世界が広がっていたんだ、って思えるんだよ。現代版徒然草だよね。心に浮かんでは消えていく他愛のないことを、とりとめもなく書いていってる。

だからこれといったストーリーの核はないんだ。女の子が朝起きて、猫を可愛がって、電車に乗って、友達と会って、それで家帰ってきて寝るだけ。でもこのただの日常の描写がめちゃくちゃ可愛いんだよ。例えば冒頭の、朝女の子が起きるシーンでは、目を覚ます時の気持ちを見事に書いてるんだよ。

朝は意地悪だ。隠れんぼで、真っ暗な押入れの中に隠れてたのに、ガラッと襖を開けられて見つけられて、眩しくて、気まずくて、胸がドキドキして、着物のまえを合わせたりして、でもなんかむかむかしてやりきれない、そんな感じ。パチッと目がさめるなんて嘘で、濁ったでん粉が下に沈んで、少しずつ上澄みが出来て、やっと眼がさめる。朝の私は一番見にくくて嫌だ。

すごいでしょ。「太宰治って女の子なの?」って思っちゃうよね。

■女の子のツイートのような小説

こんな感じで乙女な可愛い気持ちが書かれてるんだ。もし今この主人公がTwitterをやってたらめちゃくちゃバズると思う。「#女の子の気持ち」でツイートして。確実にフォロワー1万人は超えるね。

『女生徒』の主人公は10代の多感な時期だから、特に気持ちが色々巡ると思うんだ。だけど、何歳になっても、女でも男でも、日々色んな感情が浮いては沈みを繰り返してると思うんだよ。

僕も平凡な日々を過ごしているけど、朝起きて今日は頑張ろうって思って、家出るまでの時間がなくて焦って、電車に乗れて安心して、誰かにぶつかってイラってきて、でも瞬時に謝られて優しい気持ちになって、甘いもの食べて幸せを感じて、雨が降ってきて気持ちが沈んで、お酒を飲んでテンションが上がって、夜風が冷たくて嫌な気持ちになって、お風呂でリラックスして、動画見て笑って、寝る時寂しくなって、でも布団は気持ちよくて、みたいなね。

一日中同じテンションって中々保たれてなくて、一日の中に気持ちの起伏って絶対あるんだ。それを上手に描いてるのがこの『女生徒』なんだよ。

■世界は捉えよう

『女生徒』を読むとね、物事って捉え方次第だなって思うんだ。何かの出来事を、どのように捉えるかでその人の価値が出てくる。例えば、夜レストランに行ったら、その日が定休日で、「ついてないな」って落ち込むか、「今度来る楽しみが増えた」って思えるか、みたいな。陳腐な例だけど、結局人生ってそういうことなのかなって思うよね。

女の子っておそらく何歳になっても、10代に抱いていた乙女な気持ちを持ってると思うから、『女生徒』を読んだらきっと心がウキウキして一日幸せに過ごせるよ。

実は『女生徒』は、太宰治が好きな女の子が自分の日記を太宰に送って、太宰がその日記を題材にして書いた小説なんだ。これ知ると、その女の子が凄いんじゃんって思うよね。でも女の子の日記は、本当にただの日記で、それを一日の出来事にまとめて小説の体裁にパッケージングして、こんな傑作を作ったのは太宰なんだ。だからやっぱり太宰は凄いんだよ。」



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