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『しるこ』芥川龍之介 「かわいい一面が見れる」と、愛情深く

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『しるこ』芥川龍之介

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【芥川龍之介を語る上でのポイント】

①『芥川』と呼ぶ

②芥川賞と直木賞の違いを語る

③完璧な文章だと賞賛する

の3点です。

①に関して、どの分野でも通の人は名称を省略して呼びます。文学でもしかり。「芥川」と呼び捨てで語ることで、文学青年感1割り増しです。

②に関しては、芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学に贈られる賞です。それ以上はよくわかりません。

③に関しては、芥川はその性格上完璧を求めるが故に短編が多いです。僕個人短くて凝ってる文章が好きなので、まさに芥川の文章は僕の理想です。


○以下会話

■おしるこが好きな芥川龍之介

 「芥川龍之介のかわいい一面が垣間見れる文章か。そうだな、そしたら『しるこ』がおすすめかな。1000文字くらいで「最近の東京は、しるこ屋が減って寂しい」ってひたすら悲しむ短いエッセイで、芥川は相当おしるこが好きなんだなって分かるかわいらしい文章なんだよ。

『しるこ』は、当時お菓子の会社の明治の広告記事として書いたんだ。今考えると、芥川が広告文を書くって超贅沢だよね。

震災以来の東京は梅園や松村以外には「しるこ」屋らしい「しるこ」屋はあとを絶ってしまった。

という文章から『しるこ』は始まるんだ。この震災は1923年に起きた関東大震災のことね。しるこ屋の代わりにできたのはカツフエ(カフェ)で、どこもかしこもカフェになって、しるこ屋が無くなるのは東京の損失だって嘆いているんだよ。今で言ったら、昔ながらの喫茶店が潰れてタピオカ屋さんが増えてることに嘆くおじさんだね。

文章は、「おしるこは梅園が美味しい」と続くんだけど、ここで登場する「梅園」というおしるこ屋は、浅草で現在も営業しているんだよ。創業1854年で昔ながらの味を提供しているから、当時芥川が好んだ味を楽しめるんだ。ペリーの黒船が来た翌年に創業したお店だから、まさに激動の時代を経験してきた名店なんだよ。もしかしたらペリーも食べたかも。

そしておしるこへの愛は止まらず、「まだ西洋人はおしるこを味わってないが、もし一度味を知ったら、おしるこは世界を風靡する伸び代があるんだ」って言ってるんだ。だから帝国ホテルに勤める人は西洋人におしるこを勧めてみてってアドバイスもしている。そして最終的には、ニューヨークにいる男女がおしるこを啜りながら、チャーリーやチャップリンの話をしている光景が想像できるって言ってるんだ。かわいいよね。

そして最後は、

しかしあのたくましいムッソリーニも一椀の「しるこ」を啜りながら、天下の大勢を考えているのはとにかく想像するだけでも愉快であろう。

と言って終わり。この文を読んで、僕はおしるこを食べたくなったから、広告文としての役割は充分果たしているよね。

実は芥川はお酒が飲めないのもあって大の甘党で、おしるこだけじゃなくて甘いものはなんでも好きだったんだよ。『都会で』という小説でも「雪の降った公園の枯れ芝は何よりも砂糖漬にそっくりである」って書いてるくらいなんだ。甘いものが好きなんだね。

■文豪も人間

文豪って何となく気難しそうな近寄りがたいイメージがあるよね。彼らの残した難しい小説と少ない写真から想像するしかないから仕方がないんだけど、文豪たちもひとりの人間で、実はメンヘラだったりマッチョだったり甘党だったりと、色々人間らしい一面があるんだよね。

そして芸術的な小説だけじゃなくて、広告文という小銭稼ぎの俗っぽいことも書いていたって知るのも、違ったイメージを持てて面白いよね。

有名な作品だけではなくて、エッセイとか第三者が書いた紹介文から文豪たちのプライベートな情報を知っていくと、文豪自身を好きになれて彼らの作品をより楽しめると思うよ。」


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