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財務諸表の指摘 会計検査院検査と公認会計士監査の関係

前回の記事では、独立行政法人の財務諸表に対する指摘をご紹介しました。

今回は、会計検査院の指摘と公認会計士(監査法人)監査の関係をご説明します。

前回の記事

独立行政法人の財務諸表監査

独立行政法人通則法第39条により、独立行政法人の財務諸表は、会計監査人の監査を受けなければならないとされています。そして、同法第41条によれば、会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならないとされています。

独立行政法人通則法

会計検査院の検査

会計検査院は、国の収入支出の決算、政府関係機関・独立行政法人等の会計、国が補助金等の財政援助を与えているものの会計などの検査を行う憲法上の独立した機関です。

"監査"と"検査"の相違点

会計監査人による監査は、財務諸表に全体として重要な虚偽表示がないという意味での適正性を保証するための活動です。

一方、会計検査院は、独法の会計経理全般(無駄遣いがないか)を検査しますが、その一環として財務諸表の検査を行っています。しかし、財務諸表の適正性を保証するわけではなく、検査の主眼はピンポイントで誤りを見つけ出すことにあります。

それぞれの活動を対比して、"保証型"vs"指摘型"と言われます。往々にして、保証型では粉飾の見落としは厳しく非難され、指摘型では重箱の隅つつきでも賞賛されます。これは、同じく指摘型の国税の調査にも当てはまります。そういう意味では、指摘型の公務員は気持ちが楽です。筆者は、これらの業務の全てに携わっていたので、プレッシャーの違いは肌感覚としてよく理解しています。なお、筆者は、国税、会計検査院、監査法人の全てに勤務した日本で唯一の人物かもしれません(笑)

監査済みの財務諸表に対する指摘

独法の財務諸表は、全て会計監査人による監査を受けていますので、会計検査院の指摘は、会計監査人が見落とした誤りを指摘しているものです。

監査上の重要性の基準値を下回ることにより、会計監査人としての責任を問われない場合が多いですが、中には監査済み財務諸表利用者である主務省の怒りを買って(?)、監査法人が事実上の行政処分を受けることもあります。

下記の会計検査院の指摘を受けて、2015年度まで当該独法の会計監査人を務めていた有限責任あずさ監査法人については、会計監査人候補者名簿から3年間除外することとされました(当時のプレスリリースが見当たりません‥)。2016年度以降は、PwCあらた有限責任監査法人が会計監査人を務めています。

https://report.jbaudit.go.jp/org/h28/2016-h28-0631-0.htm

会計検査院が監査もやったら良いのでは?という疑問があるかもしれませんが、法整備以前に会計検査院にはそこまでのスキルとマンパワーがありません。保証業務を提供することはかなりの専門性を要します。なので、過度に監査法人を責め立てても建設的ではないのです。

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