見出し画像

「役者は一日にしてならず」近藤正臣編

春日太一さんの著書「役者は一日にしてならず」の読書感想文を書いています。

前出の林与一と、誕生日は一日違い。
かたや関西歌舞伎のお家柄で育ち、15歳から舞台を踏んで素晴らしい一流スターに芸を習って、着々と超有名大物女優の相方として、脇役の頂点を変わらずに走り続けている林与一に比べ、

近藤正臣はそういう下地は特になく、京都の小料理屋の息子。店を継ぐために大阪の有名店へ丁稚奉公するも、板前の修行は3ヶ月で辛抱の限界だった。そんなとき、文化祭で演劇をやった時の記憶が蘇って、演劇界隈をウロウロする。劇団を立ち上げたり、大部屋俳優になったり。お金もないし仕事も定まってないし、売れっ子になってないけど結婚もして子供もいる。
林与一のインタビューを読んだ、すぐあとということもあるだろうけれど、近藤正臣の青春時代が妙に不真面目に思えてしまう。しかし、いつでも、ものすごい俳優としてのセンスがあって、見る人が見れば放っておかなかったんだろうという気配を感じます。

切羽詰まっているけれど、
やりたくないものはやらないし、
どうにもこうにも仕事が長続きしない。
演劇で食べていけるならそうしたいと思っているけど、そろそろ30歳が近づいて.…。
そんな、27歳のときに事務所から推された仕事が「柔道一直線」。そこではアイドルだったと。でも、ご本人的には27歳でアイドルはカッコ悪いと思っていた。

そんな、プロの役者です、とは自分自身も言い切れなかった時代から、確固たる俳優になるための「川」を渡らせてくれたのは木下恵介監督だったと言います。
木下監督は、チョイ役で出た近藤正臣の演技を見て、悪い人間が、真人間になるプロセスを書きたくなった。

近藤正臣の演技には、観ている人がイマジネーションを広げたくなる面白味があるのではないでしょうか。
記事に書かれている様々な出演作を、非常に見てみたくなります。

超大物俳優になってからの、役作りの話も興味深かったですね。歴史上の人物を演じる場合に、既存のイメージに合わせるよりも自分なりにその人物を研究し、オリジナリティ溢れる表現方法で度肝を抜くのが楽しいんだなと思いました。

「俺は安心できる立場に一度も立ったことがないから、ギラギラしていたいんですな。」
「若い頃から十年近くエキストラばかりしてきたものですから、少しくらい売れたところで『役者は喰えない』というのが掟みたいになっていて。ちょっとやそっと騒がれたところで、『これで喰えるもんじゃねぇ』という意識はずっとあります。」

なんとなく、日常的に背水の陣…という雰囲気が漂っていて、だからこそ、自分の思うままに役をモノにしようと試行錯誤する。

出逢ってきた尊敬する俳優さん、女優さん、噺家さんとのエピソードも、近藤正臣さんだからこそ、掛けられた言葉だというのがわかります。
ご本人も、ご本人の演じる役柄も、強烈な個性を放っているんでしょうね。
異彩を放っていることに、納得せずにはいられなくなる不思議な強引さが、近藤正臣ならではの魅力で、それが癖になるんだなと思いました。

超個性的。
インタビュー記事も京言葉で書かれています。
役に対するストイックさ。
独特。凄いです。

Spotifyで、私の番組を探して聴きに来てください。

https://open.spotify.com/show/7sTmJ80ECcap2RTzn2IeTq?si=p-Lf6PQfS32nC7yTrSb44w


いつも応援してくださってありがとうございます♪