社会とつながる事の価値

我々にとって最もつらいことは
社会から拒否又は無視されることのようです。
今多くの場面で伝えられている「いじめ」も「無視」される恐怖が
根底にあるようです。
時にはとっぴな行動に出て周囲を驚かせたり、騒がせたりする背景に
「無視」への恐怖があるといわれています。
立派な社会人でも周囲からの無視や拒否・拒絶を回避するために様々な行動をとるものです。
雇用更新時や役職定年時の処遇の変化はそのことに似た環境変化をもたらすようです。
周囲から拒否されたり無視されたりしているわけではありませんが、
大きな環境変化に戸惑いや迷い、時には軋轢さえ生じ
周囲とうまく連携できにくくなることが多いようです。

その原因について考えてみます。
まず言える事は「権限」の大幅な変化です。
能力の問題ではなく「権限」の変化で今までできたことができなくなります。

改めて「権限」について考えてみましょう
○権限とは何か
権限とは目標達成のために与えられた経営資源を自分の意思・判断で活用する権利のことを言います。
一般には以下のように定義します。
  ヒト:業務の関係者(上司・同僚・部下)
    ・・・業務を円滑に運営し、成果に結びつけるために協力し合う  
       人々。雇用更新・定年延長で大きく変化します。
       「部下」がいなくなる、今までの部下又は後輩が同僚又は
       上司となる。→指示や命令ができない。
  カネ:仕事をするために必要とされる諸費用
    ・・・人件費、材料費、通信費、交通費等。
       今まで自分の判断で決済できた予算が他者(上司)の許可が
       必要となる。
       又は自分で決済できる範囲が狭まる。
  モノ:業務に活用する機材や資材
    ・・・パソコン、電話、各種機械、原材料等。
       今まで誰に遠慮なく使えた携帯やPC等が事前の許可を必要と
       する。
  時間:業務遂行に要する時間
    ・・・作業時間、勤務時間等、移動時間。
       今まで特に意識しなかった時間(特に自分の勤務時間の
       経過)に上司・同僚の許可または同意が必要となる。
  空間:業務遂行に要する場所・空間
    ・・・オフィス、会議室、工場、作業場等。
       今迄使っていたデスクやロッカー、自分の判断で使えた
       会議室やオープンスペースなど同意や許可が要。
  情報:業務上必要な知識・経験等
    ・・・経営情報、管理情報、業界情報等。
       今迄当然のことのように自分に集まってきた情報・報告が
       自分を素通りし、全体状況が掴めなくなる。
       更に上位情報へのアクセス権が無くなり、アクセスできなく
       なる。あまつさえ自分から見たら些細な事柄でも
       上司への報告・相談を求められる。
  信用:業務遂行に活用できる信頼や信用
    ・・・会社の知名度や歴史、個人としての信頼や交遊等。
       この権限だけはほぼ変わらず活用可能であり、企業側はこの
       活用(人脈等)を期待する。

という様な変化が生じてきます。
この一つ一つに驚きや戸惑い、時には怒りや悲哀、を感じてしまいますが
特に変化が大きく動揺や戸惑いが大きいのは「人・金・情報」のようです。
気持ちとしては「ハラスメント」と思いたくもなるのもやむを得ないかもしれません。
昨日まで指示できた部下に指示や命令は出来ず、依頼もしくは自分でやる事になります。
同時に今迄ほぼ自動的に入手できた各種情報が自分を素通りし、
同時に情報源にアクセスすることも妨げられるようになります。
人との交流が妨げられ情報が思い通り得られないと我々はかなりの疎外観を感じるようです。
その結果、ストレスがたまり、時には爆発してしまうこともあるようです。

環境の変化そのものは理解でき受け入れられても、
実際に起きてしまう軋轢や疎外感はどこから生れるのか? 
次回はその辺りを考察します。

海雲 龍人

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?