見出し画像

授業検討会を問い直してみる〜「対話型授業検討会」の交流会を終えて〜

先日、教職大学院の授業「カリキュラムデザイン・授業研究」で対話型模擬授業検討会(通称、対話検)の交流企画を行いました。

以下に簡単に対話検の説明をしますが、先輩方が作成したこちらの動画をご覧いただくのが具体的でわかりやすいかと思います。

今回の企画は、「自分たちが取り組んできた対話型の検討会がどういうものかを体験や実演を交えて伝える」といった企画の大枠は共有されたものの、その具体的な方法に関しては、各グループの裁量に委ねられていました。

創意工夫を凝らしながら、自分たちなりの実演&紹介の方法を考えました。

また、コロナ禍の影響もあり、学外の人も招いてこのような企画を行ったのは4年ぶりだったそうです。

ありがたいことに、都内だけでなく、日本各地から、フルに授業をこなしてから新幹線で来てくださった方など、学内外から19名ものゲストに来ていただきました。

今回は、対話検の説明と交流企画の模様(裏話)をまとめていきたいと思います。

個別具体的な内容に偏ってしまうと思うので、「授業検討会」に関心があってご覧いただいている方は、「1.対話型授業検討会とは?」だけでもお読みいただけると嬉しいです。

1.対話型授業検討会とは?

皆さんがイメージする授業検討会は、授業者と参加者が評価する/されるのような構図になっていないでしょうか?

このようなやり取りを目にしたことはありませんか?

参観者「もっと〇〇した方が良かったと思います。」
授業者「私は〇〇した方が良かったと思っていて…」
(両者並行線…)

経験の浅い教師にとっては、指導助言者から教えを乞うといったイメージもあるのかもしれません。

せっかく「今ここ」で起きた貴重な事実(授業で実際に起きたこと)があるのに、それをベースに対話を深めていく授業検討会は少ないのではないでしょうか?

対話検では、「〇〇した方が良かったんじゃない?」といった改善策を出し合うようなアプローチは取りません。

まずは、「今ここ」で起きた出来事をもとに、教師と学習者の立場から行ったこと・感じたこと・考えたこと・望んでいたことを掘り下げていきます。

教師と学習者のDo/Think/Feel/Wantの視点で対話する

これらを通して、授業者の行為と想いに有機的なつながりや授業者と学習者のズレを見出していきます。

検討会の様子

※対話型検討会に関する資料は以下をご参照ください。

2.「なってみる」ことで見えてきたこと

ある意味、このプロジェクトは私たち学卒院生の1年間の学びの集大成とも言える機会だったのかもしれません。

個人的な話になってしまいますが、私自身、PBLとか、探究とか興味あると言いながらも、いざ自分が他者と協働しながら「つくる」経験をしたことで、新たな気づきを多く得ました。

まさに、「なってみる」ことで見えてきた気づきなのかもしれません…。

このプロジェクトを終えた一番の感想は、楽しかった、やれて良かったという気持ちです。

緊張感もありながらも、心の底から湧き上がる高揚感。
他者にフィードバックをもらいたいと思える課題。
どれだけ準備をしていても上手くいかないもどかしさ。
「なんとかなる」「なんとかする」といった謎の自負。
終わった時の仲間のやりきった感溢れる表情。

これらすべてが実際に「なってみる」ことを通して実感することのできた、プロジェクトのもつ力だったような気がします。

3.企画内容と方法を決めていくプロセス


グループのメンバーを決める際に、校種ごと、教科ごとという意見もありましたが、完全ランダムでグループを編成することになりました。

(「誰とでも対話検ができるであろう」といった自分たちの思いが隠れていたのかもしれない…?)

まずは、事前に昼休みで決めた、①対話検とは何かの紹介、②模擬授業+検討会の実演、③ディスカッションの大枠をもとに、その具体的な内容と方法を考えました。

付箋使う?ホワイトボード使う?参加者にも検討会に入ってもらう?質疑応答時間を設ける?など、様々な意見を交わしましたが、なかなか決まりませんでした…。

そこで、「自分たちってこの対話検を通して、どんなことを学んだんだっけ?どんなことを伝えたいんだっけ?」を考えてみることにしました。

そこで出てきたのが、「学習者視点になることの意味と意義」「対話検は実際にやってみないとわからないことが多い」「参加者が実際にやってみたいと思える会にしたい」といった意見。

そこで一度、自分たちなりの「対話検とは?」を振り返ってみることになりました。

そこでは、「従来の検討会のように授業者が喋りすぎないようにする」「ピュアな意見をフラットに出す」「教師は情熱やチャレンジ精神をもつ」「実際に授業を考える際にも学習者視点で考えるようになった」などの意見が出ました。

対話に対話を重ね、自分たちのグループでは、①対話検とは何かの紹介、②院生メンバーだけでの模擬授業+検討会の実演、③対話検を「対話検形式」で振り返るといった構成に決まりました。

4.自分たちの思いを形にしていくプロセス


自分たちのチームで一番こだわった(オリジナリティを出した)のは、キャッチコピーを作る部分。

その背景としては、自分たちが「対話検とはこういうものだ」をひたすら説明する会にはしたくなかったこと、(でも、)何か参加者の心には残ってほしいといった思いを持っていたこと。

アイディア出しでは、「ピュアになろう」「正解とは?」「たいわ?TAIWA?対話!」「白か黒ではなく無限の色が広がっている」「本質への気づきへの架け橋へと」など、ユニークな案がたくさん生まれました。

(文章だけでは意味がわからないものが多い…笑)

最終的な自分たちのグループのキャッチコピーは、「耐話?怠話?対話!〜白って200色あんねん〜」になりました。

参加者の皆さんには、最終的にその意味を理解していただいたようです(?)が、このキャッチコピーに自分たちなりの対話検に対する思いを詰めたつもりです。

まず、「耐話?怠話?対話!」の部分に関しては、従来の授業検討会のような、「もっと〇〇すべきだ」という価値観の押し付け合いに授業者が押しつぶされてしまったり、「研修だから」といった理由で参加している人たちがお偉い人の長話を耐えたりしているような検討会に対する違和感、課題意識を表しています。

そして、「白って100色あんねん」の部分に関しては、モデルのアンミカさんが某バラエティー番組で発し、SNS等で話題となっている言葉のオマージュで、ある特定の視点だけからの「こうすべきだ」ではなく、一人一人違う学習者のDo/Think/Feel/Wantにもっと目を向けよう、自分たちもこの方法が一番良い!とは言い切れないけれど、一つの選択肢としての対話検のあり方を一緒に考えてみませんか、といったメッセージを表しています。

5.対話検交流企画を終えて


交流企画を終え、そこに参加してくださった方々からは、「現場でも活用してみたいと思ったのですが、どうしたら上手くいくんですか?」といった趣旨の質問を多くいただきました。

まず、私たちの一つのミッションであった「対話検をやってみたい」と思っていただいたことに嬉しさと達成感を感じる一方で、「こうすれば上手くいく」といった方法論の話でもないような気もしました。

確かに、最初は学習者視点からの発散をたくさんした方が最終的な深まりに繋がりやすいなど、自分たちなりに見出してきた工夫点はたくさんありました。

ただし、対話検は「方法」だけではなく、「あり方」が大切だといった思いがありました。

対話検の一番の良さは、授業者もそれ以外の人も、経験が豊かな人もそうでない人もフラットに話せることだと思います。

だからこそ、どんな発言や行動をするか(Doing)よりも、その場にどういるか(Being)が問われているような感覚がありました。

ただし、きっと参加した人たちにとっては、「学習者視点になる」「フラットに対話する」ことへのハードルを感じていたのかもしれません。

そのハードルに対する解決案を一言で述べると、「積み重ね」しかないような気がしています。

前者に関しては、私たち自身、「本当の学習者視点にはなりきれないかもしれない。でも、なろうとする。」といった一見矛盾するような感覚を持ちながら、対話検を通して「学び手感覚」を養ってきたイメージがあります。

後者に関しては、私たち自身も最初は、「綺麗にまとまっていないと発言できない」「答えを求めないといけない」といった価値観から「対話へのハードル」を勝手に作り出していたことで、上手く対話することができなかったように思います。

即効的な解決案ではないかもしれませんが、対話検や対話研の振り返りを繰り返していったことで、徐々に自分たちなりの「より良い対話検像」を作り出していったように思います。

一方、現場で活用する際には、時間的制約や教師の研修に対するモチベーションに関する課題も考慮する必要があるようにも思います。

自分たちも試行錯誤の段階ですが、これからも実践と省察をしながら、自分(たち)なりの対話検のあり方を考えていきたいと思います。

ご参加してくださった皆さま、対話検を一歩引いた目で見る機会をいただき、ありがとうございました。

(追記)筆者の個人的な感情として、「対話検を色んな人に知ってもらいたい、やってみてほしい」といった思いと「自分たちが丁寧に紡いできたものを大切に届けたい」といった思いがぶつかっています。私たち自身も、対話検について「わかったつもり」になっているかもしれません。対話検は何らかの状況を劇的に変える即効薬でもありません。だからこそ、「対話検とはこういうものだ!皆さんもやってみてね!」と雑なアプローチは取りたくはないと思っております。一緒に授業検討会のあり方を模索していきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?