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読書の記憶

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2019年12月の記事一覧

『中国怪談集』中野美代子・武田雅哉編(河出文庫)

『中国怪談集』中野美代子・武田雅哉編(河出文庫)



『怪談』でこのラインナップおそれいる。縛りもなく枠もなく、まさしく怪しき談りばかり。
さて。カニバリズム趣味はないけれど、たぶん。それら文字列を目にすると手に取らずにおれない。『人肉を食う』。これが一本目にあることで購入決きめたんだわたしは。
電波系も時代を経ればファンタジー『台湾の言語について』『宇宙山海経』ゆかいゆかい。
『五人の娘と一本の縄』とソフィア・コッポラのヴァージン・スーサイズに

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『きのこのなぐさめ』ロン・リット・ウーン/枇谷玲子・中村冬美(みすず書房)

『きのこのなぐさめ』ロン・リット・ウーン/枇谷玲子・中村冬美(みすず書房)



夫の死、きのこの知識、ノルウェーの社会、きのこのなかま、マレーシアの社会、きのこの体験、などなど、などなど。。。
これらを縦糸横糸に織り上げられてゆくタピスリーのごとき一冊。
しかも、既に織り上がった一枚を観るのではなく、織り上げていく様を観ているような読書感覚。

本書で語られるエピソードは、ランダムに配置されているようにみえるし、時系列や期間についてもはっきりとはわからない。夫の死から始ま

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『アイデンティティが人を殺す』アミン・マアルーフ/小野正嗣(ちくま学芸文庫)

『アイデンティティが人を殺す』アミン・マアルーフ/小野正嗣(ちくま学芸文庫)



この手のは結局難しくて「文字だけ追いました」になってしまうことも多いのだけれど。驚くべき読みやすさであった。もっと観念的な内容を予測していたものの、実際には平易な文章で具体的かつ例証的に論がすすめられるので、しっかり理解しながら読めたと思う。
同意できるところ多数。膝をぽんぽん打つ。
著者の余裕と誇りから生み出された文章であることも痛感する。ページの隅々にまで充満するそれに、煙たさを感じたのも

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『ガン入院オロオロ日記』東海林さだお(文春文庫)

『ガン入院オロオロ日記』東海林さだお(文春文庫)



どれ読んでも同じといえば同じなんだけど、見かけるとつい手に取ってしまう。
あらぬ方向へ行くのがこの人の味ではあるけど、始まりと終わりの乖離がすぎるのではというものもちらほら。しかも尻切れ蜻蛉すぎない?と。

昔みたいにゲラゲラ笑えなくなったのは、わたしも擦れたからか?

それでもすごいよなー。
年齢でいったら自分のじじばばとさほど変わらないのに。肉フェスいったり、蕎麦食い倒れてみたり、ガングロ

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『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン/上遠恵子(新潮社)

『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン/上遠恵子(新潮社)



耳を澄ますこと、目を凝らすこと、においを嗅ぐこと、手で触れてみること。それらを恐れなく実行できること。

ちょっと落ち込んだ気持ちで本屋に入る。不思議とはまる本が置いてある。
スッと手に取る。

海鳴りというのか、潮騒というのか。聞きたい。
川の音でもいい。
雨の音は飽きたなあ。

(2019.11.30)

『魔女の薬草箱』西村祐子(山と渓谷社)

『魔女の薬草箱』西村祐子(山と渓谷社)



魔女になりたい。と常々言っているのだが、じゃあ具体的に魔女ってなんなの?と聞かれるとちょっと困っていた。のだが、本書に繰り返し出てくる『賢い女』という表現はとてもしっくりきた。
そうだ。わたしは、賢い女=魔女になりたい。

さて、本書。適度に専門書くさく、しかし踏み込もうとすると曖昧なことしかつかめない。まさしく魔術的。
魔女の姿が描かれた図版多数で愉快。ただし、その姿は忌むべきものとしての姿

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