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現役CFOが監査法人で学んでよかったと思うこと


はじめに

こんにちは、諸見里 卓(モロミザト スグル)です。

2024年10月現在、株式会社movでCFO兼コーポレート本部長を担当している、組織内会計士です。
Xでは、「公認会計士のキャリア」「コーポレートの実務」「CFOの実務」などについて発信をして言いますので、是非フォローをお願いします!

自己紹介/今までのキャリアについてnoteはこちらです。

なぜこの記事を書こうと思ったのか

私は新卒で有限責任監査法人トーマツに入社し、TS(トータルサービス)事業部に配属され、IPO支援や会計監査をメインに約3.5年間経験を積みました。
その後、Cygamesのコーポレート本部でマネジャーとして経営企画や経営管理の実務を積み、今movでCFOをしています。
今振り返ると、監査法人時代に学んだことや経験したことが、今の実務に生きている部分が多いなと感じています。

一方で、監査法人にいたころは、転職していく同期や、優秀な同期たちを横目で見て、「このまま監査法人にいていいんだっけ・・・」、「早く転職したほうがいいんじゃないか。。」などと焦っていた時期があったのをよく覚えています。

最近ありがたいことに、Xやnote経由で監査法人に在籍している会計士の方々から、上記のような焦りや、今後のキャリアについてのご相談を頂くことが多いのもあり、今回改めて過去を振り返りながら、監査法人で学んでよかったことをまとめてみようと思いました。

また、最近公認会計士でCFOになりたい(または、スタートアップに挑戦したい)と思う方が増えているように感じています。そんな方々に、監査法人でどんなことを学べば将来に活きるのかを伝えたいなと思いました。

主に「公認会計士試験を勉強中の方」「監査法人に在籍している監査法人の若手の方々」また、「会計士系のCFOを取るか迷っている経営者の方々」に、有益な情報になるようにしたいなと考えていますので、よろしくお願いします。

また、当該記事の前段としての「公認会計士資格を取ってよかったと思うこと」についても記事でまとめていますので、是非合わせてご覧ください。

(以下に、Cygamesにいたころのツイートを見つけたので、掲載しておきます。)

なぜトーマツに入ったのか

自己紹介にも記載していますが、元々大学在学中から、公認会計士を取得し、ファイナンスがわかる経営層を目指したいと思っていたこともあり、時間軸や適性から考えて、スタートアップCFOになりたいと考えていました。
スタートアップCFOを目指すにあたって、証券会社などの別のキャリアも考えられましたが、公認会計士にしかできないことを一度は経験してみたいと考え、ファーストキャリアとして監査法人を選択しました。

私が就職活動をしていた当時は、売り手市場だったこともあり、4大監査法人(トーマツ、あずさ、あらた、新日本)があの手この手を使って新人を囲い込もうと動いていたのを覚えています。笑

当時、スタートアップCFOを目指すにあたって、「IPO支援」や、「IPOを目指す企業の内部管理体制構築支援」などを経験することで近道ができると考え、IPO支援事業部に行きたいと考えるようになりました。
結果、面接などで出会ったり、先輩で優秀かつ向上心を持っている方が多かった、トーマツのIPO支援事業部である、TS事業部を選択したような流れです。
結果論ですが、TS出身者の先輩方でCFOとして活躍している方々は多く、選択は誤りではなかったなと感じています。


現役CFOが監査法人で学んでよかったと思うこと

今振り返ると感じる「監査法人で経験してよかったこと」を7つに分けて記載します。

①IPO支援業務から学んだ多くのこと

今振り返ると、IPO支援業務は面白かったのと、今の仕事に生きている部分は大きいなと感じます。具体的には、IPO課題調査、期首残、N-2~N期にかけての会計監査や、内部統制の構築の伴走支援などです。
IPO支援の場合、クライアントも当然上場をしたいと考えているので、クライアントと同じ方向を向いて(もちろん時には対立することはあるのですが)走るので、やりがいを感じることができます。感謝をされることも非常に多いです。
また、IPO支援は小規模な監査チームで行われることが多いので、若い年次からプロジェクトマネジメント経験を積むことができます。これは、大規模監査チームだとその立場に行くのに数年かかるので、とても貴重な経験だ思います。

IPO支援業務は、管理体制が整っていない企業の支援をすることが多いので、正直とても忙しいですし、つらいことも多いです。笑 ただ、そのカオスを監査法人という外部の立場にいながら経験できるのも、とても貴重な機会だと思います。

IPO実務という観点だと、本当にごく一部(その他、証券会社側の視点や、事業会社側の視点までを含めると)ではあるものの、一通り監査法人側から見たIPOのプロセスを体系的に学習することができるもの大きなメリットだと思います。

そのため、特に将来スタートアップに行きたいなと少しでも思っている方は、是非手を上げて、IPO支援業務に携わることをお勧めします!


② プロジェクトマネジメント力の向上

監査法人での仕事は、若い年次から現場主任や主査を任せてもらえる可能性があることから、早い段階で、プロジェクトマネジメントの経験を積むことができます。また、複数プロジェクトが同時に走ることが多いため、複数のプロジェクトを同時にマネジメントする必要もあります。

これが、今振り返るととても貴重な機会だったように感じています。一般的に部下がつくようになるのはかなり運の部分が大きい(組織としてそもそも部下を持つ必要がある規模の部署になるのかといった外的要因も多いので)と思いますが、監査法人では、否応なしにプロジェクトマネジメントを求められることとなります。笑

Cygamesでのコーポレート実務や、movでのCFO業務においても、このプロマネ経験はとても活きました。特に事業会社のコーポレート部門において活躍するためには、まったく違う属性のプロジェクトが複数(経営企画、経理、財務、法務、知財、HR、情シス、広報など)走り、リソースも限られているので、プロマネ力は必須になってくると思います。


③ 意思決定が数字にどう反映されるのかの感覚値

会計監査に携わっていた当時はそのような視点はなかったのですが、事業会社に来て感じたのが、会計監査業務では、会社の意思決定が、どのように財務諸表の数字に反映されるかの感覚が研ぎ澄まされます
これは経営企画業務やCFO業務を行う上で、この上ない基礎知識になります。

例えば、CFOや経営企画においては、常に着地PLや資金繰り、KPIなどを追い、数字の見える化を常に行う必要があります。この見える化をするにあたって、監査法人で身に着けた「こういう意思決定を行ったら、数字のここにはねるよね」という感覚値はとても役に立っています。

なので、監査法人で業務に従事している方々は、是非上記視点を身に着けるという気持ちを持ち、会計監査業務に従事することをお勧めします。

④エクセル(スプレッドシート)の活用能力

監査法人で働く中で、エクセルを扱うのスキルは飛躍的に向上しました。エクセルのスキルを向上させないと、生き残れない世界だったと改めて感じます。笑
これは実は後々ものすごく重宝されるスキルになります。というよりマストの基礎スキルです。

事業会社で経営企画業務などに従事するにあたって、エクセルやスプシを用いたデータ分析や財務モデルの構築、経営レポート作成に至るまで、この監査法人で身に着けたエクセルの能力は活きてきます。
(正確にはスプシとエクセルはショートカットキーや仕様が異なるので、スプシへのアジャストは必要なのですが、エクセルが使えればすぐに慣れると思います。)

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なお余談ですが、私はトーマツ入社当初、信じられない話ですが、PCを両手の人差し指でタイピングしていました。笑 これはオンラインゲーム(メイプルストーリー、レッドストーンなど)で身に着けたタイピング手法だったのですが。。当時の恩師である大先輩の米安さんから、早々に一本打ち打法から卒業をした方がいいと強く言われ、ここでブラインドタッチを身に着けました。心から感謝しています。
レベルの低い話ではありますが、監査法人で、ブラインドタッチとエクセルをマスターした結果、後々のキャリアにいい影響を与えたことは間違いないと思っています。笑
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⑤外部コミュニケーション能力の向上

監査法人では、早期にクライアントとのコミュニケーションを行うことを求められます。お客様と日々密接にコミュニケーションをとることが求められるので、早期に外部とのコミュニケーション能力が向上します。
事業会社でのコーポレート実務においても、多くの外部ステークホルダーの方々とのコミュニケーションをとることが求められます(金融機関、株主、外部専門家など)が、この場面において、監査法人で身に着けたコミュニケーション能力はものすごく活きています

直近監査法人で働いている方々に聞いたのですが、コロナの影響で、オフラインでのクライアントとのコミュニケーションが減っているとのことでしたが、これはとてももったいないことだと思っています。
信頼関係を構築するためにも、もし可能なのであれば、オフラインのコミュニケーションをクライアントととった方がいいと思いますし、経験としてもそちらの方が身につくことが多いのではと感じています。


⑥財務アドバイザリーの経験

3年目で財務アドバイザリー業務に従事させていただく機会があり、そのタイミングで、バリュエーションや財務DDの経験をさせていただきました。これは現在の業務に非常に活きています。
MA、資金調達、事業計画の策定などの経営企画業務に従事するにあたって、財務DDの実務を理解しておくことや、バリュエーションのロジックと実務を身に着けておくことは、絶対にプラスになります。

また、昔よりも今のほうが、財務アドバイザリーの経験を積めるチャンスが増えていると、監査法人で働いている方々に聞きました。
もしチャンスがあるのであれば、異動なども含めて、是非財務アドバイザリーの経験を少しでも積むことをお勧めします。

⑦プロフェッショナル力など

「プロとしてサービスを提供するもの」としての姿勢や倫理観、結果のためには「いつまででも働く」といった、プロフェッショナル力は、監査法人で身につくとても大事な能力だと感じています。(社畜力と書くと炎上しそうなので、いい言葉でまとめました。笑)

メンタル面含めて、プロフェッショナル力を身に着けられる環境は少ないと思うので、是非とも監査法人で身に着けてください。

おわりに

上記以外にも、思いついたタイミングで、時々記事に追加してみようかなと思っています。
トーマツには約3.5年しかいなかったので経験できなかったですが、海外駐在なども、長くいるのであれば経験してみたかったなと思っています。

監査法人で働いている方々が、この記事を読んで、業務へのモチベーションを高めて頂けるととてもうれしいです。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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また、私が所属するmovでは、2024年5月に全既存株主のみから15億円の資金調達を行った後、2024年9月にシリーズBのセカンドクローズとして、Z Venture Capitalからの資金調達を行い、NTTドコモグループ、楽天グループ、KDDIグループ、ソフトバンクグループのLINEヤフーのCVCからの同時出資を実現いたしました。

現在、コーポレート含め、全職種で採用を強化していますので、少しでもご興味がある方は、是非ご連絡ください!!!

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Xアカウントは、2020年に匿名(しろ/組織内会計士)で始めまして、最近実名化しました!是非フォローをお願い致します。

■Note
諸見里卓 / 会計士CFO|note

■X
諸見里卓 / mov / 元 しろ(組織内会計士)(@kaikeishiro)さん / X (twitter.com)

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