【怪談】怪々珍聞①―創刊号!!

 はじめまして!暑い日が続いていますね…
 皆さんは怪談、お好きでしょうか??幽霊らしきものを見たことがある/ない、もしくは信じる/信じないとに関わらず、心霊番組や怪談を見たり聞いたりしたことが、皆さん一度はあるのではないでしょうか。こういった心霊番組や怪談に出会った時、私たちはそれを娯楽のひとつとして楽しみながら、どこか実際の暮らしと切り離せないリアリティを感じてしまう…そういった経験はありませんか(怖い夢を見たり、お風呂で後ろが気になったり、などなど)??

 このnoteでは、来る夏の風物詩ともいえる怪談にスポットライトを当てて、ただ「怖い」や「面白い」などの感想にとどまらず、怪談をより楽しめる(怖がれる?)ような分析を試みます。先に少しタネ明かしをすると、怪談には話の型が存在するものがあります。それを各回で紹介していきながら、怪談の怖さ・リアリティ、そこから来る味わい深さを一緒に探求していきましょう!!

 
 その前に、明治時代以降の怪談の歴史を簡単にたどってみます。一般に、怪談で登場するような幽霊や妖怪、怪異(日常では起こりえないような不思議なこと)の存在は長い歴史を持っています。このnoteで取り上げるのは主に明治時代以降の怪談になってしまいますが、日本宗教史が専門である小山聡子さんの書かれた『もののけの日本史―死霊、幽霊、妖怪の1000年』(中公新書)では、その長い歴史が描かれています。この本によれば、明治時代になると、迷信・俗信・怪談などは明治政府や知識人にとって時代にそぐわないもの、日本の近代化を妨げるものと認識されるようになりました(*1)。つまり、幽霊や妖怪といった怪談の主役たちは、前時代の迷信の象徴として排斥されてしまったわけです(*2)。
 それでも、怪異の存在や怪談への関心はついに消えませんでした。それを示してくれるかのように、『明治期怪異妖怪記事資料集成』という大型の本には、明治時代の新聞に掲載されたものすごい数の「怪異妖怪記事」が集められています。明治時代の各年における「怪異妖怪記事」数の分布をみると、初期はそもそも新聞の紙数自体が少ないため、「怪異妖怪記事」は年に一桁台の数の掲載に留まりますが、絵入新聞や地方紙が全国的に広がっていくなかで、その件数を増加させます。明治時代の「怪異妖怪記事」はその後も流行り廃りを繰り返しながら、特に明治の時代を30年以上経た20世紀においては、一年で614件(明治42年)・371件(明治43年)という盛況ぶりをみせる年もありました(*3)。
 
 このように、明治時代の中ごろを過ぎても、怪談の主役たちは「近代化」によって「前時代の迷信の象徴」として淘汰されてしまう存在でなく、常に日常の不思議なできごとや恐ろしい体験と結びつけられ、生き続けていたことがわかります。時計の針は大きく進みますが、昨今のコロナ禍でも、「アマビエ」のような怪異の存在が広く知られましたね。

 

 さて、それでは次回から、実際に現在でも知られるような怪談について、分析を試みましょう!!


<参考>
*1 小山聡子『もののけの日本史―死霊、幽霊、妖怪の1000年』(中央公論新   
  社、2021、p.199)
*2 一柳廣孝『怪異の表象空間―メディア・オカルト・サブカルチャー』(国  
  書刊行会、2020、p.21)
*3 湯本豪一編『明治期怪異妖怪記事資料集成』(国書刊行会、2009、
  p.VII~IX)

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