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1日で世界中のオンラインデザイン講義・スタジオに参加して見えた利点と課題

コロナの影響で、大学に物理的に通えない一方、世界中で様々な教授、デザイナーがオンラインで講義を開催してくれており、家にこもりながら世界中のアイデアを受け取ることができる環境が整ってきました。
先日、4月~5月に無料で公開されている、建築、都市計画、ランドスケープに関するオンライン講義・サービスを整理した記事を書きましたが、今日は1日に3カ国の空間デザインに関する講義に参加した印象について書いていこうと思います。

オンライン講義・サービスの一覧の記事はこちら

日本 建築オンラインラジオ

朝一は、東京理解大学 西田司研究室が主催しているコロナの時期の過ごし方を面白がる建築学生ラジオに参加。

過去の配信はYoutubeでも発信されているようです。

毎朝、非常に著名な建築家の方が登場し、西田教授との対談形式で20~30分ほど話をして下さっています。コロナにより、建築業界がどう変化していくか、自宅にいる間、学生、特に建築の学生は何をするべきか、等について話をされています。

参加者は基本的には、ビデオをオフ、音声をミュートにして、教授と建築家の対談をライブ中継のような形で参加、チャットに質問を書き込むと対談の後で教授が代表して読み上げて質問をしてくれます。


参加した感想として、まず著名な建築家の講義に無料で参加できるということが非常に嬉しい。作品は知っていたり、本を読んだことがあったり、ネットで写真は見たことあるという方が、実際に動いて話されている様子が見えたというのは少し感動しました。

これは芸能人と街中で会っちゃった感じに非常に近いです!
しかも、自宅から話されているためか講義みたいに固くなくてリラックスして話されているし、質問したら答えてくれるかもしれない、とかすごくワクワクしてしまいました!!


ミーハー感は置いておいて、真面目な話に戻すと、
大学では理論を中心とした講義が多いですが、様々な建築家の実務的な話や彼らのように活躍するためには今、どうしたら動いたら良いのかについてアドバイスが聞け、非常に参考になりました。学生から見ると気鋭の建築家と呼ばれる人たちは本当に遠い存在、自分はなれないような人という気がしてしまうのですが、彼らも写真の中の絵ではなく人であり、さらに先輩の方々から叱咤激励され努力をされてきたことを知れ、遠い距離感が少し縮まったような気がしました。

オーストラリア 大学講義・スタジオ

午後は留学先のメルボルン大学のランドスケープデザインスタジオの講義とスタジオ演習を連続で受けました。

最初の1時間半はオンライン講義。
こちらもプレゼンテーター以外はミュート・ビデオオフ。
アボリジニの建築家が、アボリジニの文化と歴史、そして、それをどう建築・ランドスケープデザインに落とし込むのかについて講義をして下さいました。オーストラリアにいてもアボリジニの方に会って話をする機会は非常に少ないので、非常に興味深い話が聞けた有意義な時間でした。
プレゼン後、質疑応答はミュートを解除して参加者が質問するスタイルでしたが、参加者が30人程度なのであまり問題なく進行したように思います。

その後、1時間半、ランドスケープスタジオ演習をオンラインで。
今回の授業では、教員が以前の課題の優秀作の紹介と、次回の課題についての話をされました。ここでも基本的には教員以外はミュート・ビデオオフ。

どこの大学でもデザインスタジオのオンライン運営のあり方を模索していると思いますが、今の私が参加しているメルボルン大学のスタジオは、残念ながら、もう少し改善できるように思ってしまいました。

今回の授業について言えば、
1つ1つ優秀作品について1時間かけて紹介する必要はあまりなく、クラウドで共有してみんなで見合えば充分良かったように思いました。(やっている課題は皆同じで、お互いのポスターを見ても重複する内容が多い。また、表現方法について参考にしたい部分は多々あるが、画面共有では見にくい。)
自分の作品について1対1でじっくり話をする時間が、今学期は圧倒的に少ないことの方が不満で、そっちに時間を使ってほしかったです

違う日にはグループでまとめて作品を提示し、1人1人プレゼンしてフィードバックをもらうというやり方でスタジオを進めましたが、1人のための時間が5分程度しかなく、自分の言いたいことも上手く伝わっていない気がするし、フィードバックも上手く噛み合っていない気がして。
うまくプレゼンできず、見るに値しなかったというよりは、たくさん褒められましたが、「コロナの中頑張っているね」という言葉よりも成果物の改善点を教えて欲しい、と感じてしまいました。


これはスタジオの指導者に直接連絡をして相談してみるべきかな、という気がしてきました。
とはいえ、学生数も多く、この状況でなかなか改善が難しいことも理解できる。あるいは、学生同士でフィードバックしあえる環境を作る方が良いのかな、という気がしてきました。
一応、指導者に自分の気持ちも伝えつつ、自分でできることを動いてみようと思います。


イギリス ランドスケープライブ

夜は、イギリスのランドスケープアーキテクト、Ed Wall氏が開催しているThe Landscapists Seminarsに参加。

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こちらも朝の日本の建築ラジオとほぼ同じ形式でした。Edさんが毎日イギリスで活躍されているランドスケープアーキテクトを呼び、20~30分プレゼンをしてもらい、質疑応答という形式です。
非常にスムーズに進行していました。

こちらも同じく、プレゼンテーターとEdさん以外はビデオをオフ音声をミュートで、ライブ中継のような形で参加し、チャットに質問を書き込むという形式。

私が参加した会では登壇されたランドスケープアーキテクトの行ったプロジェクトの詳しい紹介が主なプレゼンの内容でした。ランドスケープ提案の中で土壌や植物の植え方、花のサイクルに力が注がれており、モダンな提案の中にもイギリスのガーデン文化を感じることができました。
質疑では、「コロナが大きく社会を変えていっている今、ランドスケープはどう対応していくのか」など、ランドスケープの大きな方向性に関する学生の質問で議論が非常に盛り上がり、短い時間でしたが充実感がありました。


オンライン講義・スタジオの運営の最善手

世界各国からの3~4つのオンライン講義を聞き、感じたことは、

・めちゃくちゃ素敵なサービスが無料で公開されている。
・双方向的なやり取りよりも、講義、対談形式の方が相性が良い。
・余計なノイズを消すため、プレゼンテーターと進行役以外はミュート、ビデオもオフが良い。
・大人数の場合、質問はチャットに書き込んで後で回収すると、進行が滞りなく進む。

また、大学のデザイン系のスタジオ講義について課題がありますが、学生視点からこうして欲しいという解決のアイデアについて思いついた書いてみました。

・普段の講義の内容を縮小した形で運営するのではなくオンラインだからこそできる授業をして欲しい(世界各国からゲストを呼んでオンライン講義を行うなど)
・ミーティングをしたいわけではなく作品に対するコメントが欲しい。(毎週、成果物をGoogle Driveにデータをあげて、そこにコメントをもらう方が、2~3分のプレゼンで何も伝えられずに1週間過ごすよりも良いと思う。)
・Zoomの画面共有では、生徒の作品の情報を全て伝えきることが難しい。(生徒は、毎週の成果物のデータを指導者に共有し、指導者は簡単なコメントをつけて返却、必要であればオンラインミーティングで細かな指導をしてフォローアップ、とした方がお互いにとって効率的ではないか。)
・クラウドで生徒の作品を共有し、コメントを残し合うなどをすれば、生徒同士の学びを助けるのではないか。

自分が通っている大学にはなかなか手厳しいことを書いてしまいましたが、世界中で非常に素晴らしいオンライン講義が展開されている中、こんな形で留まっていて欲しくない、頑張って欲しい、と思っています。
大学にも直接連絡しようと思いますが、日本の大学でオンラインで講義される方、スタジオ形式の授業をされる方、参加される方、学生が感じた一意見として参考にして頂けたら幸いです。

こちらのプロジェクトをサポートしていただけた方、書籍のSpecialThanksに名前を記載させて頂きます。