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アートとビジネスを混同していた話

過去にバズった漫画が、1年の時を経てまたバズり出している。

〝アートとビジネスは分けて考えないといけない〟なんてことを、最近はよく考える。漫画をバズらせることに必死だった1年前の僕はつくづく、〝アートとビジネスを混同〟していた。

漫画で成功するためには、認知が必要で、認知を得るためには、フォロワー数が必要で、フォロワー数を得るためには、バズらせることが必要だ。

〈漫画で成功▶︎認知▶︎フォロワー数▶︎バズ〉

つまり、〝バズらせれば成功できる〟と、1年前の僕は本気で考えていた。

この仮説が正しかったとしても、「バズらせるなんてそうそうできるものじゃない」と思うかも知れない。けれど、当時の僕はそれが思いの外うまくいったのだ。

Twitterに投稿した漫画は、10,000RT、6,000RT、5,000RTと、立て続けにバズった。10,000RTの漫画はYahoo!ニュースにも掲載された。自分の体験をもとに、言いたいことを主張したエッセイ漫画だ。自分と同じような悩みを抱えている人に向けて、メッセージを主張する。作り方はどちらかというとビジネス的だ。需要のありそうなところに漫画を作って投げるイメージだから。フォロワー数はそれなりに増えたし、たくさんのメッセージをいただいた。

味をしめた僕は、「このまま続ければ成功できる」と本気で思い、同じシリーズの漫画を次々と投稿した。僕はいつのまにか、数字を追い求めるようになっていた。

表現者が数字を求めると苦しいものだ。数字が思うように取れないと、「なんで伸びなかったんだ?」と苦しむ一方で、「これがおれの描きたい漫画なのか?」と苦しむ。数字を取るためには感情は出さず、世のニーズに合わせないといけないのに、そこに「そんなものは描きたくない」と自分の感性を乗せるからさらに数字が伸びなくなる。

数字を追い求めるのはビジネスの考え方だ。数字を取るためには物事を論理立てて考え、仮説と検証をくりかえしていかなければならない。しかし僕の場合はそこにアート、つまり自分の主張が入ってくるから感情がややこしいことになる。

最終的に、同じシリーズの漫画を一気にまとめて本にしたのだが、本のタイトルで思いきりアートを主張してしまった。元々はビジネス的に組み立て作っていた漫画にもかかわらず、タイトルに『かいちの幸せの見つけ方』と、思い切り自分の名前を乗っけてしまったのだ。有名人ならそれをやっても構わない。毎日誰かがその名前を検索しているだろうから。しかし、無名の漫画家がそれをやっても誰にも見つけてもらえない。

そんなことを薄々感じていながらも、僕は「自分の体験をもとに描いた漫画だから、自分の本だとわかるようにしたい」なんて思って、自己主張の激しいタイトルにしてしまった。

結果、『かいちの幸せの見つけ方』は大して売れていない。

こんな結果になったのも、僕がアートとビジネスを混同して考えていたからだ。
当時の僕はアートとビジネスを区別できていなかった。数字を優先するのか、自分の表現を優先するのか、そこに線引きをせず〟漫画=好きなこと〟と、一括りにしていたから、表現をしては数字が取れないことに苦しみ、数字をとっては表現の仕方に苦しむ、なんて矛盾したことをしていたのだ。


アートとビジネス、両方を求めるから、感情が矛盾して苦しんでいたのだ。

ここを混同してはいけないな。数字を求めることと表現を求めることは分けて考えなければならないな。なんてことを、ここ数日は考えている。

ありがたいことに、経験というのは次に活かせる財産だ。今度はうまくやれるさ。なぁ、そうだろう。





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