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まだまだ現役だったことに気がついたトムちゃんの話し



最近、家族が増えた。名前はトム。普通自動車のトムちゃん。
トムちゃんはもう結構なお年で、もともと所有されてた方が「廃車にする前に乗らない?」と、タダで譲ってくれたのだ。
トムちゃんのことを知っている人は、みんな口々に「ボロい車」と言う。たしかにタイヤのカバーはどっかいってるし、ドアに大きくボコって凹んだ箇所はあるし、かすり傷なんてもはや模様かな、くらいあるけど、車に無頓着な僕たちは「そんなにボロいかなぁ〜」「むしろきれいな方だよね〜」と言いながら、ありがたく乗らせてもらっている。

で、そんなトムちゃん。
まずは運転し始めてすぐに、ウィンカーが故障。運転中に突然ランプが点かなくなった。しかたなく、まさかまさかの手旗合図発動。「曲がりま〜す!」「右に行きま〜す!」窓を開けて手を振りかざしながら周りの車に声をかける。教習所で習った手旗合図、こんなんしてる人見たことないわ、とか思ってたけど、ここにいるよ。
事件は続く。
駐車場に停めていたら、Uターンで侵入してきた車にぶつけられて、前方が損傷。ただでさえ傷だらけなのに、さらに傷だらけに。報せを受けて駆けつけた警察署の人も、ぶつけた人も、あたしも、いったいどれが新しい傷なのかわからなくて困り果てる。傷だらけのローラならぬ傷だらけのトム。トぉムゥ〜。語呂が悪くてリズムにも乗せづらい。

と、いうわけで、譲ってもらって何回かしか乗らないうちに、トぉムゥ〜は修理屋さんに預けることに。
なんでこんなに立て続けに事件が起こるのか?
もしかして、僕たちのところが気に入らないんじゃないか?
あのまま廃車にした方がよかったのかしら…
そんな心配をよそに、1週間後、トムちゃんはきれいな姿で僕たちの元へ戻ってきた。修理屋さんがぶつけられた箇所のドア自体を取り替えてくれたから、前からそこにあった凹みや傷も一緒に無くなって、事故前より随分きれいになった。

「トムちゃん、ボロじゃないよね〜」
「トムちゃん、結構きれいだよね〜」
「トムちゃん、僕たちの元へ来てくれてありがとうね〜」

毎回乗るたびにそう声をかけていたから、トムちゃんも若い頃の自分を思い出したのかもしれない。突然エステやピラティスなんかに通い始めて、見違えるように美しくなった、みたいな。

そう、まだまだ現役よ、トムちゃん。
お洒落して、一緒にいろんなところにお出かけしようね。
僕たちの元へ来てくれてありがとう。


ちなみに、
「トムちゃん」の名前の由来は、譲り受けるときにトムちゃんが停まっていた駐車場が「トム◯◯病院」という名前の病院の裏だったので、試しに「トムちゃん、あんたトムちゃんて言うの?」と声をかけてみたら返事をしてくれたような気がしたので、そのままトムちゃんと呼んでいます。パートナーも気に入って一緒に呼んでくれています。


2021.6.9 晴れ

kai

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