天っ才物理学者と筋肉バカが創り上げた物語
最後の最後で、今までの物語が彼らのいた世界の実話に基づいた作り話なのか、正確に再現したものなのかわからなくなりました。あの二人が語り部となって創り上げた世界観であるかのような終わり方だったので、事実にかなり脚色が入った話だったのかもしれません。
仮面ライダー含めあらゆる特撮作品は、大人向け子ども向けによらず、社会に向けた何かしらの伝えたいことが散りばめられています。この作品もまた例外ではなく、桐生戦兎と葛城巧という二人で一人の物理学者の葛藤が、戦争という悲惨な過程を通して描かれた作品でした。
多くの科学者は好奇心や疑問を理論的に説明するために日々尽力しています。桐生戦兎もひたすらに科学を楽しんでいました。しかし、いかなる科学もいずれは軍事利用されてしまうのが、悲しいかな人間の運命のような気もします。戦兎の研究もやはり東都軍のために使われることとなり、ライダーシステムも最後の最後まで戦う手段でした。今までの世界の歴史的にも戦争には科学が用いられますし、その文明の進歩によってやはり多くの人間が苦しんできました。しかし、戦争があったからこそ、人間はその先の一歩を踏み出せたとも言えるはずです。戦争がなければ原子爆弾の悲惨さは、あそこまで鮮明にはわからなかったし、それがわかったからこそ、今こうして有意義な議論がなされようとしています(だからと言って肯定されるべきものではありませんが)。戦兎はそんな戦いを通じて、科学は愛と平和のためにあるべきだという想いをさらに強くしていきました。このような作品が世界に伝えたかったこととは何なのか。それは、今の世界に改めて警鐘を鳴らすことだと、ぼくは思います。日本の経済成長を支えてきた大きな企業、国民の生活基盤を整える政府、これらもまた、凄まじい発展の中で、癒着や自惚れなどにより、本来あるべき姿を見失ってきていると思います。大きな企業たちは次々と不祥事が明らかになったり、政治もこちらが恥ずかしくなるレベルの粗が見え、次の段階に進もうとしています。これらの原因の一つは、やはり高度経済成長期には世界の最先端を走っていたであろう日本の科学力がもたらした自惚れだと思います。自惚れは深まれば深まるほど、どこかで誰かが悪事を企てます。その悪事はやがて争いを生み、もしかすると、再び悲惨な戦争にまで発展するかもしれません。日本の周辺の国...ユーラシア大陸の日本寄りな国の中にも、そんな自惚れで爆発寸前にまで到達した国もありましたよね。今の日本がかつての科学力に自惚れて自分の首を締め切ってしまう前に、愛と平和のための、国民のための科学と政治がなされるべきではないかというメッセージを、ぼくはビルドから受け取りました。作中、東都の首相は、そんな国づくりを目指していたように思います。難波重工は、今の日本の粗とも言えそうな企業を表現していました。今の日本が抱える不安を子どもたちにも(どこまで理解されるかはわかりませんが)噛み砕いて説明したのがビルドだったのだと思います。
そしてもう一つ。この作品は天っ才な主人公である桐生戦兎と、自他共に認めるバカな万丈龍我の、対照的な二人を中心に描かれました。この二人の存在が世の中に伝えたかったことは、世界には頭脳的にも身体的にも、一人一人異なる特性を持った人間が生まれてくるし、それは人間だからこそ解決に導ける課題であるということだと思います。誰にでも自分の特性を生かした役割があるし、自力ではどうにも解決できない部分を他の人に補ってもらうことができます。戦兎と万丈は、自分の特性を最大限に発揮し、自分の持たない特性を互いに出しあって協力して困難を突破していきます。多種多様な人間の存在を認め、そうしているうちに敵対していた人たちまで味方につけてしまい、最高の仲間へと成長していく。今の世界中の人間が抱える、あらゆる差別問題も、人間だからこそ、解決していける、解決すべきだというメッセージ性を感じました。
さて、来週からはいよいよ仮面ライダージオウです。もう、楽しみでたまりませんね。ぼくの予想では、平成ライダーは全員本人が出そうな気がしています。先日発表されたCSMアークルもそのフラグを立てていますよね。最近のCSMは登場人物のセリフを収録するのが当たり前になってきているので、これはもう、五代雄介すなわちオダギリジョーさんの声を収録すること間違いなしだと思います(期待しすぎ)。一条刑事も入れくれそうですね。また、ジオウの作中で電王やディケイドとの関わりはより重要なものとなってくるでしょうし、そこでも本人出演となれば最高です。電王パートでは佐藤健さんや桜田通さんの出演を期待したいですし、そうなれば桜田さんはテレビ本編では初登場となりますね。期待しすぎると反動が大きいので、この辺りでやめておきます。
チャオ!