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作家KAIオリジナル直感小説|story9「それぞれの想い」


これまでのあらすじ
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作家KAIオリジナル直感小説
をまとめた無料マガジン


本編
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凛とした強さをもって
堂々と笑顔で生きた彼女






弱さに
もがきながらも
前を向こうとする凛




" 変わろうとする命の時間 " を
知るよしもなく
まっすぐに受けとめていくsou


                      出逢う『縁』にふれて
                      ひとは『生きかた』を
                      磨かせてもらえる

『違う』からこそ
ひとり   ひとりに
気づきをもらい
感情が生まれ
自分を知ることが出来る





透きとおる白い雲が
輝きを放つ月を
ゆるやかに覆(おお)う




戸並 十三「さて、そろそろ…動きだしますか。」




咥えていた煙草を
口から離し
ゆっくりと灰皿に押しあてる





部屋に漂う
マッチの香りと
窓際に
形が仕上がっておかれた
ルービックキューブ



                 ルービックキューブのように
                        誰かが決めた正解に
                 整えていく人生なんてつまらない




一方で凛もまた
記憶を取り戻していた



凛はおもう___。



" 音 " が
聴こえない経験をして

改めて
日常すべてに
" あたりまえ "
がないことを知る





はじめから
知らなければ
喪失感もなかった



また
" 誰か や みんなにあるもの " が
自分にはない感覚からの焦りも
生まれなかっただろう




その中で
" あるもの " だけをみて
幸せを生みだしていく生きかたも
あるんだろうけど



" 失った " 悲しみから
葛藤を知り


" 変わらずあるもの " から
感謝を知った


                 経験や出逢う人を通して
                   『お陰』に感謝を
                   決して忘れない凛



だから
わたしは(凛)
今 前を向きたいと
おもえるんだ



souさんは
自分の知らないところで
誰かの意図によって
命が救われることを望むだろうか…。



条件のない
" 運が良かった "
とおもわれる 救われ方なら
きっと" ラッキーだな "
なんて笑って
受け入れるんだろうけど



一時的とはいえ
私が " 音 " と引きかえた
なんて言ったら
きっと怒るんだろうな



" 短い命 " と知っておきながら
" 救える方法 " があるなら
やっぱり
何としても助けたいとおもう…



自分の中にはない
" 正解 " や

" 相手が心から望むもの "
を考えようとして

答えのでない時間の中を
彷徨(さまよ)い続ける



考えながら
カフェまでの
道のりを歩いていると
カフェに辿り着いてしまった





ドアノブに手をかけるが
開くのを戸惑う




凛の姿に気づいた
RAYは
凛の視界に入るように
そっと声をかけ
丁寧にお辞儀をする



RAY「こんばんは、お待ちしておりました」




凛の不安そうな顔をみて
RAYはすぐに察する




柔らかな表情で
凛のきもちに
寄り添うかのように
ふわりと微笑む



持っていたホワイトボードに
ゆっくりと
綺麗な文字が並べられる




ボードには

「良かったら すこしお話しませんか?」


と書かれている




ふわりと緩く巻いたワンカールに
女性らしい振る舞い
しぐさや言葉選びにも
彼女の品の良さは現れる



さらにホワイトボードに書いて
凛にみせる


(RAY)「甘いもの
          お好きみたいでしたので
          先程作りたてのアップルパイでも
          御一緒しませんか?」




アップルパイ__。

急に満面の笑顔になる凛

わかりやすい凛に
可愛らしさを覚え
RAYはまたふわりと笑う


凛の表情が
少しゆるむことを確認して
さらに文字を並べる


(RAY)「すこしお待ちくださいね。
            用意して来ますので
           お好きな席でお待ちください。」




キッチンに入るRAYを見送ると
以前
souと座った席に座る




凛は
あの日窓から
みた花火を思いだす


                         儚いから美しい、、、か



RAYは
凛が考えを巡らしている姿を見て
席に行くまでに
すこし間をおいた




RAYはキッチンにある
普段はひらかない
引き出しの鍵を開ける


ガチャ____。


そこから
" あるもの " を取りだして
かるく呼吸を整えた




そのころ
2人の入口での様子を見かけた
戸並 十三は
カフェに入る時間をずらそうと
近くの公園へ向かった




つづく











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