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詩  散文

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#散文詩

命の迷路

命の迷路

幾度も増築された病院の
迷路の様な細い廊下を歩く
清潔で無駄ない空間は冷たい
向かう場所へ矢印は続き
溜息と不安が低い天井にこだまする
生や死はいつも隣にあること
遠い地の災害
隣家からのSOS
無力さを嘆きながらも
痛さを封印したこころは実は無感動
少しずつ溢れていく
いずれ何もなくなるから
消えそうで消えない命に
へらへらと笑う君と私は
双子のように育った
悲しくはないんだ
私では守りきれない

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12月 散文詩

12月 散文詩

広場の石畳みに
刻まれた記憶が
霧の中で息を吐く
遠い汽笛が蘇り
失くした靴は
旅路の果てに
朽ちた思い出と眠りついた 
やがて広がる漆黒に
誰が哀れみを乞うのだろう
月は隠れて
戸惑う牛は
馬車に揺られて
広場を横切る 

12月1日
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身を委ねた流れの
行き着く先の海原に 
静かに漂う
いずれ群青に沈み  
哀しみは溶けてゆく
そんな願い

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11月 散文詩 

11月 散文詩 

温もりに澄んでいく 
重ねた色に  
言の葉が散り
明日から
私の知らない冬が始まる

11月12日
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異国の船を見送りながら
秋の終わりを君と確かめ
白い季節に凍えぬように
優しい涙雲に隠して

11月14日
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石は丸く、流木は白く
波にもまれてここに流れ着いた
海を眺めている
気の遠くなる時間を波が懐抱する
風があらゆる隙間

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移ろう季節に

移ろう季節に

まもなく雨が降り
秋を流してしまう
季節の終わりを告げるような儀式
どうしても感傷的
朝焼けの空
ピアスを選びながら
ただ今日を大切に生きようと
大袈裟でなく思う
見えるもの、見えないもの
感じたい
透きとおる想いは
感傷と比例する
濁りない心を確認する朝は
言葉にならならい
何もいらないんだよ
きれいな波紋を作りたい
そして
可愛くいようと思う

温室

温室

昔から透きとおるものが好きでした
透きとおる色が好きでした

君の奏でるギターは透きとおった音でした。
眼をつぶると月夜の麦畑が広がりました。
揺れる穂のずっと向うで君がギターを奏でいました。
宮沢賢治の世界のようでした。

君は「温室」が好きだと教えてくれました。

私はいつも小さな透きとおるものたちを
外側から眺めていました。
大きな透きとおったものに抱かれるのはどんな感じでしょう。

透きと

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細い月

細い月

おかしいね。君をずっと前から知っていた気がする。見つけたばかりなのに。知らない街に旅したように不安は隠せないから、細い月を見上げて、おどけるしかないんだ。でも、君をずっと前から知っていた気がする。だからこれからも君をずっと見ているよ。穏やかにゆっくりと満ちる月に。 #散文詩

灯火

灯火

とっくに消えてる灯火に手をかげし、温もりもない手のひらの冷たい夢に身を委ねてる。

陽だまり

陽だまり

ぼくはもう
どっち側にもかたむけないんだなぁ
のほほんとした陽だまりで
どっちの側も眺めているよ
平らな道は長く続く
それでも僕はここがいい
人の賞賛も妬みも聞こえない
この陽だまりが
必要な枷と糧を教えてくれる
笑いながら、その陽だまりで
僕はどちらの側も眺めている
不思議なくらいに静かな足元だ

うんざりとした表情や
羨望の眼差しが
きらきらと砕けて
違う違うと頭を抱えた僕を慰めてくれる