11月 散文詩
温もりに澄んでいく
重ねた色に
言の葉が散り
明日から
私の知らない冬が始まる
11月12日
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異国の船を見送りながら
秋の終わりを君と確かめ
白い季節に凍えぬように
優しい涙雲に隠して
11月14日
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石は丸く、流木は白く
波にもまれてここに流れ着いた
海を眺めている
気の遠くなる時間を波が懐抱する
風があらゆる隙間を過ぎていき
風の道筋を感じるから
このごろ「魂」みたいなことを
考える
11月19日
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小さな柿の木が
橙の実を
たわわに実らせ
重い重いと言う
誇らしげだ
11月20日
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ひだまりの匂いする猫になって
小さな水たまりをぴょんと
飛び越す無邪気な心で
時折訪れる濁りは感謝で
受け止めて
ほのかな灯火消さぬよう
優しい言葉を手にしたい
灰色が広がる冬空も
私は青空の中
風になる
泣きたい夜も
そんな日も
あっていい
もう安心して泣けるのだと
そんな風に思えた朝
11月22日
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時の流れが静かに過ぎる黄昏時に
見つけた月の寂しさよ
君に続く夜汽車に映り
あの記憶の中
溶けてしまいたい
11月23日
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言っても詮無いことと
思いながら
恋して
切なくて
そんな風に人を想える幸せを
微熱の枕に語りかけてる
11月24日
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ねぇ
着いて来れる?
ここから始まる物語
立ち尽くしたまま?
いいの?
鍵は君の手にある
何度、砂時計を逆さにするの?
後ろを向くの?
大丈夫。
一緒にいる。
ねぇ 帰ろう…
11月25日
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記憶は刻まれた石畳の小径
足跡の旋律が夕暮れに消えてゆく
愁の窓に咲く花の散りゆく先に
月の姿を追いかける微熱の夢
11月26日
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優しい時間が流れれば
あっという間に
元気になる
単純だね
単純がいい
優しい笑顔があれば
じゅうぶん
ありがとうがたくさんある
それに触れられること
気づけること
その時間が
朝に昼に夜に
感じられること
私の中に穏やかな風が吹く
後はしなやかに生きること
11月29日
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