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詩  散文

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2023年7月の記事一覧

絡まる

絡まる

遠くで携帯の通知音が鳴る
私は手にしたタオルをゆっくりたたみ
少し息を整え、携帯をとる
彼からの返信はいつも優しい
私はそれが欲しくて甘える
見えない糸で繋がれていると
少女のように信じ、想いを綴る
信じる?
配慮された優しさ…
突然、暗雲が立ち込め
携帯からこちらを恨む目が見える
それは写鏡なのだろう
私は、張り巡らされた蜘蛛の糸にかかった蝶なのかもしれない
それならば、それもいい…
この夢心地

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ガラスの分銅

ガラスの分銅

いつだって
微妙なバランス
どっち揺れても
不正解?
答えないまま
とるバランスに
意味を下さい

振れ幅は
風のバランスや
雲のバランス
星のバランス
月のバランスだって影響するだろう。
星が泣く夜は雲が隠してくれる
風が沈む日は星の仄かな光が風を包む
そんな風にして
バランスをとりながら
世界はまわる

中心点に行き着くことが
できるのだろうか
バランス取ることに
疲れてしまわないだろうか

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夜の海

夜の海

君の星

私の風

ひとりなのに
ふっと君を感じていたから
寂寥がいつでも漂う夜の海
怖くなかった

触れた指先の夢…

涙が流れる
泣いている
嘆きでもなく
喪失でもなく
澄んだ涙は君がくれた優しさ
こんなに静かに哀しみを
こんなに静かに受けとめる

夜の海
ひとりとて
身をまかせ
漂える…

それぞれの痛みや哀しみ
叶わぬ想いも
ともに星に流して
ゆらりと
揺蕩う夢をみた

ひとりとて
揺蕩う

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天の川

天の川

澄んだ哀しみ抱えて
七夕の日に
君だけを思う
ただ君だけを思う

波の音に消されてしまっても

星の瞬きのむこう
君だけを思う

言えない言葉は秘すればいい…
秘めた重さは知っているから

天の川
ただ君だけを思う。

街灯の詩集

街灯の詩集

ある夢の中
街灯に出会った
ぽつりと淡く
深夜にふさわしい街灯だった
街灯は一冊の詩集を差し出した
街灯と同じように
淡くそっと灯る詩集だった
私は大切に受け取り
今は寝室を灯してくれている
急いる気持ちを抑え
毎夜1ページをあじわう
その詩集は星物語
感傷を帯びた文字が 
優しい眠りに誘う
この詩集の最後のページを閉じたなら
私はどこで目醒めるのだろう
夢に誘う君がいるといい

過去の街

過去の街

その泉の
清らかな
冷たい
視線
その尖塔の
響き渡る
鐘の溜息
空の蒼?
遠くの稜線の
指でなぞる
快楽
山羊はいつまでも草を喰む
花の咲き乱れる哀しさ
罪にむかう夢追い人
誰の為に泣こう
祈りは街の朝露に潜む
人気のない駅舎の
その
標となる
続く線路の
隠れ人
愛が見えない
カウベルの嘆きに
飽きたから
つらつらと登る
白い坂道の
連なるオレンジの橙に
裏切りを授けた

振り向いた静かな風景

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透明になるために

透明になるために

草原が青い炎に揺らめいている
覚悟でなく衝動だった 
ごめん
ごめん…

もう動かない風車   
大好きな楠木
暖かい洞
ごめん
ごめんね

僕はずっと
透き通る世界に抱かれていたのだ

この痛みは
通過儀式だけど
僕は呆然とした朝に
衝動の炎を焚べてしまった

それが正しい行いであると
いつか納得するのだろう

覚悟に逃げたのは僕だ

僕はもう僕でしかなく
五月の頃
若葉が芽吹く
この草原に

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