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『体験(コト)のデザインとは何か。』コードデジタルクリエーティブアカデミーVol.3に参加してきました。

先日、コードデジタルクリエーティブアカデミーVol.3に参加してきました。今回のテーマは『体験(コト)のデザインとは何か。デジタルマーケティングと結びつくときXDは一気に花開く。』
登壇者も豪華なうえに1時間半を越える充実した内容でした。個人的に面白かったところを感想も交えながら掻い摘んでいきます。

『第四次産業革命とデザインの役割』

田川さんより、経産省でのデザインとの関わり方について資料の紹介があった。
まず提示されたのが、ビジネス・クリエイティビティ・テクノロジーで構成される組織モデルBTCモデルだ。

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/sangyo_design/pdf/004_s01_00.pdf より引用

このモデルの中では、異なるデザインの立ち位置について話されている。(BTCモデルについての詳しい内容は引用元の資料を拝読してほしい)

・クラシカルデザイン
昔より職業として存在しているグラフィックデザインやプロダクトデザインといった、世間一般でデザインと聞いたら思い浮かべるようなデザイン
・デザインシンキング
サービスデザインやデザインリサーチといったビジネスの領域に踏み込んだデザイン
・デザインエンジニアリング
インタラクションデザインのようなテクノロジー所謂エンジニアリング領域とされていたところまで踏み込んでいくデザイン

なぜこのように異なる分類のデザインが生まれたのか。それは産業の発展とともに変容していったと田川さんは言う。

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/sangyo_design/pdf/004_s01_00.pdf より引用

第1次産業革命からコンピュータの時代まではクラシカルデザインが主流であった。しかし、インターネットの普及により、ハードウェアよりもソフトウェア、つまり見た目のデザインよりサービス・体験が社会的に求められ、デザイナーに対しても重きが置かれるようになっていった。そこに、元の流儀より外れたデザインシンキングやデザインエンジニアリングが必要とされていった。

ここで重要なのが、クラシカルデザインは不要な産物になったのか、という問である。答えは否だ。
近年Google Homeの誕生などにより、改めてハードウェアが求められている。加えて、サービスやデータ・AIといった様々なモノが繋がった時代、コネクテッドな時代が訪れているのである。

(正直なところ、私は工学の出身なので、あまりクラシカルなデザインが得意ではない。デッサンという基礎的なところから学び直す必要がある、と本講演を聞いて改めて感じた)

XI(エクスペリエンス・アイデンティティ)

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/sangyo_design/pdf/004_s01_00.pdf より引用

XI(エクスペリエンス・アイデンティティ)、これは田川さんが考えだした造語だというが、今まで言語化されていなかったものを具体的に言い示したものに過ぎないと私は思う。

XIとはCI・VIのエクスペリエンス版、体験のアイデンティティである。
例えば、ロゴがあるとする。じゃあ、それが店頭ではどう見えるのか、店員はそのロゴを通してユーザーとどう触れるのか…など。そういったユーザーのタッチポイントすべてのアイデンティティを統一しようというのがXIという概念である。

CXOはマーケッターと仲良くできるのか? 

事前に参加者から募った質問に登壇者が答えていくコーナー。深津さんから素晴らしい名言が飛び出していた。

深津さん)横断するならそれぞれの領域の言葉で話せないといけない。
ちゃんとマーケティング側の数値を語れたら「ボタンきもちいい」みたいな話になる。デザイナー視点だけで「横のピクセルの佇まいが…」といっても伝わらない。
「スピードとCVRの関連性があるので、ここにエンジニアのパワーを発揮してください」みたいなことを言えばエンジニアも案外やってくれる。

その国で一番エモいことを言え。

そこに司会者より、「マーケッターとエクスペリエンスは相性悪そうに思えるが、どうか?」と更なる質問が投げかけられた。

深津さん)会社のゴールになっているかによる。ミッションのためのマーケッターなのか、利益を上げるためにマーケッターなのか。
ミッションが先に来てる会社ならエクスペリエンスも優先度が高くできる。

周囲にUXへの理解があまり得られない場合はどのようなアプローチをするのがいいか?

深津さん)先ほどほとんど話してしまったが、相手の言語に合わせてモノを語る、いわゆる社内向けのUXをおこなう。

中村さん)職業名を変える、本質的な説得の方法を考える、コツは本質的に、本質的にと繰り返す(笑)
あとは、いままでと違うことをする。組織が悪いかもしれないので、同じことをやってもダメなので。やったことないことをやると打率高い。

田川さん)結果が大切。どちらが偉いか偉くないとかではない、効果が出ているものが偉いので。
結果を出している主たる理由をXDにしちゃえばいい。ユーザーインタビューをして改善したらクリックをあがった、とかね。
もしかしたら、周囲が理解できていないのは結果が出ていないのでは?結果が出ない人たちがいっても納得はしてもらえないだろうし、正しいUXデザインをしていかないと結果も得られない。
なぜ良い結果になったのか、原因を言って信頼を得てから次なるアプローチをする。

最近お気に入りのXDを教えてください。

田川さんが挙げたものを紹介。

田川さん)これは、東京駅の八重洲口を出たところのタクシー乗り場の看板。
これが、タクシー乗り場にジグザグに並んでいて全然進まない。せっかく、新幹線で快適に移動してきた後だから印象が悪かった。
少し話は逸れるけど、「最低最高最初最後」という人間が覚えられる体験の4軸がある。“終わりよければすべてよし”の体験なんだよね、終わりはしっかり抑えておいたほうがいい。新幹線を乗った後のタクシー乗り場の、移動における最後の体験がダメだと全体が台無しになっちゃう。

どうすればいいか?柵を取り払って2台乗車できるようにすればいい。そうツイートしたら、次に来たとき柵が消えていた。それを見たのかどうかは知らないけどね。
そしたら、やっぱり待ち列がなくなって、倍の速度で列が進んでいた。

こういう観察は非合理、不合理をフィルターを通していくといい。

総括

個人的には、デザイン役割の言語化と体験アイデンティティの定義が興味深く、見た目をデザインしていくだけでなく、より体験と絡ませたデザインが必要になってきていることを痛感した。

また、組織へのUX啓蒙活動についても三者三様のアドバイス(もちろん共通点も多い)が聞けたことも有意義であったと思った。

※加筆・修正等ございましたら、コメントください。

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